第2話 過去の不幸な記憶(1)

「只今帰りました」


 あの日の僕は何故か、お得意先回りが妙に早く終わり会社へと帰還……。部署の部屋の扉を開け──入室しながら何も考えずいつも通りに部屋にいる上司を含めたみんなへと声をかけた。


「お帰り」

「お疲れ」

「お疲れさま」


 まあ、あの日も僕が部屋へと入るといつもと変わらない労いの言葉が返ってきたよ。


 でも一つだけいつもと違う言葉が、上司が僕へと告げてくる。


「あれ? 今日は相沢君外回りの営業の方が早く終わったんだね?」と。


 だから僕は上司へと微笑みながら。


「はい。課長。今日は商談の方がいつもの予定時間よりも早く終わり。取引先の店舗さん周りの方も信号のリレーにかかり停止することなくスムーズに車を走らせることが可能で、何もかもが上手くいき早く終わり、会社へと早く帰ってこれたのですよ。あっ、はははははは」


 僕はあの日課長へと本当に今日は運のよい日……。こんな日は滅多にないことだと笑いながら告げた記憶がある。


「ふぅ~ん、そうか。じゃ相沢君御苦労様。今日はもう会社の方は上がっても良いよ。じゃ、お疲れ様。また明日も頑張ってね」


 まあ、あの日の課長も僕が予定していた時間よりも早く何でもが片付いたから帰宅をしてもよいと告げてくれた。


 だから僕は更に満身の笑みを浮かべたかな?


 まあ、僕は課長へと微笑みながら。


「はい! 課長! ありがとうございます! 明日も頑張りますね」と告げ、お礼を言った気もする?


 まあ、そんな僕だから、自分の手荷物……。


 僕が勤める会社の商品サンプルが入った手提げの紙袋を置くために僕は業務一課にある自分の机へと足早に向かい始めると。


 僕は自分の机へと向かう最中にね、ついついと余所見をしてしまう……。僕達業務一課の隣にある業務二課の方へとね……。


 そして僕はを見詰めながら。


 あれ僕の沙也加彼女さまはもう帰宅をしたんだ? と脳裏で呟き、首を傾げる。


 だって僕はあの日彼女から外回りの営業の仕事があると聞いてはいなかった。


 だからこの時間に僕の年上の彼女は会社にいないといけないはずだった。


 なのに? 僕の年上の彼女……。二課の係長をしている沙也加は会社にいない。


 だから僕は沙也加は体調不良で会社を早退でもしたのかな? と思うのと。


 僕のスマートフォンには沙也加が体調不良で病院へといくので早退をするとは聞いてはいない。


 だから可笑しいな?


 僕に電話で一言やL○NEでメールが出来ないほどの体調不良……。本当に大丈夫なのだろうか?


 あの時の僕は自分の顔色が蒼白して悪いことばかりを思案してしまうほど。


 僕は年上の彼女の身の上が心配で仕方がなかったと思う?


 しかし僕の勤めていた会社はね、一応は社内恋愛が厳禁……。禁止な会社でね……。


 それでも僕と沙也加は会社に内緒でお付き合いをしていたけれど。


 僕と沙也加はちゃんとお互いの両親へも挨拶を済ませ婚約をしている状態だった。


 だから本当は会社に僕たち二人の深い仲がばれても厳重注意ぐらいで済むのでは? と僕は安易に思っていたけれど。


 僕の年上の彼女さまだった沙也加の方は大変に慎重でね……。一課に配属になったばかりの僕の出世の方が危うくなると将来的にも不安になるから。


 僕達の結婚の日時がちゃんと決まり上司達へと報告と結婚式の案内状を送れる状態になるまでは社内の人達には内緒にしておこうよ、と。


 僕の年上の美しい彼女だった沙也加が告げてきたから。


 僕はその時に時に『うん』と頷いで同意をしたからね。僕と沙也加はちゃんとした結婚の式の日時が報告ができるまではお互いが素知らぬ振りを続け。


 僕と沙也加は会社内の課こそ違うが、上司と部下と言った関係を続けていた。


 そう、あの頃の僕は美しい年上の元カノの尻に敷かれた状態でね。何でも元カノの言ってくる要求を了承していた情けない年下の彼氏だったよ……。


 僕の出世など、どうでもいいことだと思いって、せめて休憩時間の合間でも、沙也加は僕の物で妻になる女性だと主張しておけばよかったと後々後悔をすることにもなるのにさ。


 しかしあの時の僕はね。自分の年上の元カノに対して強気で出ることもできない、御人形さんみたいな年下の彼氏だった。




(お願い)


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