第6話
また何かあればいらっしゃってくださいとウエイターに見送られ、フラフラなまま帰路につく。
関わりたくない。関わりたくない。できれば関わりたくないのに。このままじゃいけないということだけはわかる。
自宅につき、ボーッとしたまま手近な椅子に座る。テレビをつけるとお笑いをやっていたが、特に笑う気にもなれず、右から左に言葉が流れて行くだけだった。
最初から警察に言いに行こうと決心するのはなかなか難しく、まずは弁護士さんに相談に行くことにした。
証拠も何も無い話しをまともに聞いてくれるだろうか。
できれば関わりたくないのに、普通に考えたら有り得ない出来事なのに、そんな事をまともに考えて行動するなんて。
色んな考えが巡り、グルグル渦を巻く。
考えても考えても答えがでないが、なんとなくこのままだとダメだということは直感的に感じる。
もう、いいや行動してしまえ!と思い切った時には弁護士事務所に電話していた。
そしてアポイントメントをとり、気がついたら約束の日がやってきて、弁護士事務所の前に立っていた。
ビルの一角にある弁護士事務所の入口をノックし、どうぞと言われ、恐る恐る扉を開ける。
「ご予約はされていますか?」
20代くらいの受付の女性から声をかけられる。
「はい。」
窓口で受付を済ませ、相談室に案内される。
影元と名乗った弁護士に自己紹介をする。
頭がおかしい人だと思われたら嫌なため、喫茶店での出来事は伏せ、女子高生殺害事件の事と、ストラップの話しを行う。
ひとしきり話しを聞いてくれた影元弁護士に、警察に言いに行った方がいいですかね?と相談すると、気にしなくていいと思いますよと言われた。
ベッドに倒れ込み、今日の出来事を反芻する。
半分ちょっとくらい、それは警察に言った方がいいと思いますねと言われるかと思っていたが、言われなかった。
あんなにも覚悟して言ったのに、拍子抜けだった。
私だってできれば関わりたくないのだ。
気にしなくていいなら気にしたくない。
関わりがある人とすら思われたくない。
今日の弁護士相談料5500円だけで済むなら別に良い。
働いてるから問題は無い。
気持ちはスッキリできた…はず。
もう関わりたくない。
そう思い眠りについた。
次の日会社から帰ると、再びポストに郵便物が入っていた。
差出人は不明だ。
これはどうしたら良いんだと思いながら、とりあえず中身の確認だけしようと持って上がる。
袋を破いて中身を確認すると、血の着いたハンカチだった。
「一体誰が何の目的で送ってくるの!本当にもうやめて欲しい!」
思わず叫びそうになるが、アパートの壁は薄いため、ボリュームを落とす。
自分がこれを持っていたら、犯人だと怪しまれるかもしれない。
とりあえず捨てよう。
そう思い、血液を再び綺麗に洗い流し、細かく刻んで外に捨てることにした。
近くのスーパーまで車を走らせ、他のゴミと一緒に燃えるゴミに捨てる。
スーパーを出ると、目をギラつかせた人が私を一瞥し、スーパーの中に入っていった。
視線に射抜かれ心臓が音を立てて鳴り響く。
やっぱり、まずいものだったんじゃないか?
スーパーで捨てない方が良かったんじゃないか?でも家のゴミとして捨てるのも嫌だし。
そんな考えがグルグルと頭を巡る。
どうしたら良いんだ、どうしたら…。
もう精神がおかしくなりそうだった。
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