第2話
喫茶店を出て、店を振り返る。
こんな所入るんじゃなかった。
OPENからCLOSEまでの時間が書かれた看板を恨めしく眺めた後、気にしないようにし、足早に近所の公園へと向かう。
植物を見ると心が癒される。自然からパワーを貰えるようで、公園が好きだった。
公園へ向かう途中、ふとビルとビルの隙間に何かが落ちているのを見かけた。
思わず足を止めると、それは血が付着した携帯電話だった。
「ひっ…!」
思わず小さく声が出てしまったが、見て見ぬふりをして、急いで足早に通り過ぎる。
今日はついてない日かもしれない。
暫く歩くと道が開け、公園が見えてくる。
中に入りベンチに座り一息つく。
そよ風に波打つ葉の音色が心を落ち着かせる。
それにしてもさっきのは何だったんだろう。
彼の罪を被り犯人になるって一体どういう事だろう。
そもそも彼って誰?思い浮かぶのは1人しか居ないけど…。
かつて恋人だった男を思い出す。
でも今はもうどうしてるかわからないんだけどな。
過去とても好きになって、結婚の約束までした彼。
しかし次から次へと聞いていた内容が嘘だとわかり、何が本当なのかわからなくなってしまった。自分本位にしか考えられず、全てを周りの人のせいにする相手に嫌気が差し、別れをつげてしまった。最後の方は貯めていたお金を使い込まれたり、手を挙げられたりもしていた。暴言もありどうしようもない人だった。
「何で好きになっちゃったかなぁ…」
ボソリと呟く声は風にかき消された。
突然キーンとした耳鳴りと共に、頭痛が襲ってくる。
ダメだ、今日はもう帰ろう。体調が悪い。
足早に家に帰ることにした。
住んでいるアパートに着いたら、ポストに郵便物が入っていた。
最近は通販で荷物を頼んだ覚えはないが、宛先にしっかりと自分の名前が書いていた。誕生日が近いため、誰かからのプレゼントかもしれない。
アパートに持って入る。外側の袋には送り主の名前はないが、中に書いてあるかもしれない。
包みを破り中を見ると、思わず小さく叫んでしまった。
「なにこれ…!」
そこには血がついた可愛らしい携帯用のストラップが入っていた。
どうしよう。
予想外の物に、思わず心臓がドクドクと脈打つ。
頭の中でこれは危険だという警告の鐘が鳴り響く。
どうしよう、どうしよう…。
持っていてはいけないであろう物を持ってしまっていることで、頭がいっぱいになる。
どうしよう。とりあえず、捨ててなかったことにしよう。
そのまま捨てるのも気持ちが悪いため、血を洗い流そうと洗面台に向かい、ストラップを念入りに洗う。
綺麗に乾かしたストラップをゴミ箱に放り込む。
これで大丈夫…たぶん。
不安な気持ちを抱えながら、現実逃避のため眠りにつく事にした。
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