金の紗をまとった風景

陽麻

金の紗をまとった風景

 いまも、脳裏に焼き付いている


 仕事の帰り、家のちかくまできたら

 近所を散歩している姪と父の姿をみた


 姪は三輪車に乗って、後ろからついてくる祖父を心配気にかえりみている

 夕方の陽の光が、金色こんじきの紗をまとった大気をつくり

 二人を包んでいて、その姿が輝いてみえた


 ああ、なんて尊い光景なんだろうと、私は目を細めて泣きたくなった


「ねーねー!」


 姪が私に、大きな声で手をふってくる

 それに気がついたわたしの父も、手をふってきた

 だから、私も手を振る


「ただいまー」

「おかえりー」


 大きな声でやり取りしている間に、しゃこしゃこと動いていた三輪車はとまっていた。

 わたしを待っているのだろう

 この瞬間の二人の笑顔を見ることが出来るのは、今だけ

 幼子はあっという間に成長するんだから

 二度と見ることはできない風景だと思って、頭の中で写真を撮った

 そして、二人に走り寄った


 尊い記憶

 私の頭の中にしかないネガで、何度も好きな時にその光景を再現できる

 金色の紗をまとった風景と、大好きな二人の笑顔を



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金の紗をまとった風景 陽麻 @rupinasu-rarara

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