第5.5話 試してみよう


朝。私たちは今日も空き教室に来ている。


「ふふふ、逃げられないよ燕ちゃん!」

「いやああああっ力強い!心花ちゃん強い!」

「好きな子を捕まえるんだもん。逃がさないようにしなくちゃ」


目、目が本気だ!


捕らわれたJK燕。プレゼント選びの電話をした時のことを心花ちゃんは覚えていたらしく、私は耳が弱いかの実験をさせられるらしい。


耐えられるわけがない。でも逃げられもしない。


壁に追い込まれて私は身動きが取れなくなった。手首は心花ちゃんに掴まれて壁に押し込まれている。


「なんて言って欲しい?」

「……何も言わないで……」


どんどん近づいてくる長いまつ毛に心臓が追いつかない。


ああどうしよう泣きそう。


「泣かないで燕ちゃん。大好きだよ」


熱を測るみたいに、心花ちゃんはおでこを私のおでこにくっつけて囁いた。


「心花ちゃんこれ以上は……っだめ」

「うん?これ以上のことされるって思ってたんだ」


どんどんどんどん、彼女は私に近づいてくる。


「……燕ちゃんって、実は変態さん?」




***




「!」

「あ、燕ちゃん起きた?」

「今何時!?ホームルーム……っ」

「真面目だなぁ。大丈夫。少ししか経ってないよ」


セーター姿の心花ちゃん。

朝はブレザー着てたはず……。


と思ったら私の枕になっているではありませんか!!


「心花ちゃんだめだよこんなことしちゃ!かわいい女の子の制服も可愛いんだから大事にしなきゃ!汚れちゃうよ……」


パタパタ汚れを落としながら言う。

この空き教室を勝手に使わせてもらっている以上、定期的に掃除はしているけど、枕になんてしたらダメだよ!


「理屈はちょっと分からないけど……。平気だよ。ほんとは膝枕してあげたかったんだけど、そしたら燕ちゃん、起きたときまた気を失っちゃうでしょ?」


首が取れそうなくらい頷いておく。


「でも床にそのまま寝かせておくなんてできなかったの。なんだっけ、制服も可愛い?から大事にしなきゃって燕ちゃんは言うけど、私にとって燕ちゃんはとっても可愛いの。だから大事にしたいだけだよ」


私からブレザーを受け取りながら心花ちゃんは言う。

そんなこと言われたら何も言い返せないじゃないか。

心花ちゃんはずるい。


「ありがと……」

「わかってくれたならよかった!それとね」


扉に手をかけて心花ちゃんは笑う。


ん?今日は手を繋いでいかないのかな。


「燕ちゃん、やっぱり耳弱いと思うよ。あのあとも試してみたの。耳、ぴくぴくってしてた」

「なっ」


いつの間に!!


問いただす前に心花ちゃんは扉を開けて走って行ってしまう。

私はその場から少しの間動けずにいた。



あの美少女は気絶している私に何をしたのか。ひとりで教室に戻った後も、とっても耳が熱かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2025年12月28日 20:50

学校1の美少女は、恋人いない歴=年齢の私のことが好きらしい 十坂すい @10s_akaSui

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画