第5話 デートのお誘いかな

5月29日。自室のカレンダーをじっと見る。

この日はあの美少女のお誕生日だ。

こういうの覚えちゃうタイプの私は頭を悩ませている。


お誕生日まであと一週間。あの子は何が欲しいんだろう。


去年は推しの、りんちゃんがCMに出演していたリップをプレゼントした。

リップは心花ちゃんいっぱい持ってそうだったけれど、何が欲しいのか分からなかったから無難に。

決してりんちゃんが、とかではないよ?よ?


「今年はどうしようかなぁ」


コスメがいいのかな。でも、肌質とかブランドとかあるもんなぁ。

どうせなら好きなものをあげたい。


「よしっ本人に聞いてみるか」


私はスマホを手に取ってメッセージアプリを開く。

昨日の夜のおやすみ、が履歴に残っていてなんとなく恥ずかしい。


『心花ちゃん、なにか欲しいものはある?』


そう送ると、すぐに既読がつく。さすが心花ちゃん。


『欲しいもの?』

『そろそろお誕生日でしょ?だからプレゼント、何がいいのかなと思って。心花ちゃんが何欲しいのか分からなくて……』

『欲しいものかぁ。ねぇ、電話にしてもいい?』

『いいよ』


数秒後、心花ちゃんから電話がかかってくる。

いつもの声に私は少し安心した。


『欲しいものはやっぱり燕ちゃんかな!』

「……切っていい?」


言うと思った。


『ええ〜なんだろうパッとは思いつかないなぁ』

「そっか……」

『燕ちゃんがくれるものならなんでも嬉しいよ?私』

「いやいやちゃんとしたもの渡したいから。思いつかないなら一緒に買いに行かない?」


ショッピングモールに行けば、気に入るもの見つかるかもしれないし。

それをプレゼントできるなら私も嬉しい。


『燕ちゃんそれって!』

「ん?いい考えでしょ」

『うんっ!デートのお誘い!』

「なんだって?」


いつ私がデートに誘ったというのか。

……いや待て2人きりで出かけるのはデート、なのかも?


『楽しみ!私のお誕生日の日でいい?駅集合?何時にする!?』


テンション爆上がりの心花ちゃんのおかげで、予定がどんどん決まっていく。

電話越しでもわくわくしている表情が伝わってきて、私の胸は不覚にも高鳴る。


お、お、おさまれ私の鼓動っ!こんなところでドキドキしていては当日保たないぞ!!


『私すっごく可愛くしていくからねっ!』

「ほどほどにお願いします……」


美少女が可愛くしてきたらもうあれだ、宇宙(?)


『あれぇ燕ちゃん、なんかドキドキしてる?』

「してないよっ」

『嘘だぁ。だあいすき燕ちゃん』

「うっ」


直で心花ちゃんの言葉が耳に響く。

電話越しでも、いいや電話越しだからこその破壊力!!


「ご、ごめんもう切るね!?」


私の中の赤いランプが点滅している!


『燕ちゃんってば耳弱いの?今度試してみよっと』

「やめてくださいほんともう」

『うふふ。またね燕ちゃん。電話してくれてありがと!来週楽しみにしてるね』

「ちょっ今度試すってなに……!」


ブツッ


切りやがった。


「まぁいいか……心花ちゃんとプレゼント選びに行く約束できたし」


私はベッドの上に転がってスマホをぎゅっと抱く。


来週……喜んでくれるといいなぁ。

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