第31話 その後のこと

やることはやったので、さっさと聖王国からトンズラした。

その際、ノア殿下が魔王はどうにかなったことを吹聴して回った。


あっという間に、その話は拡散していった。


噂は風より早いと聞いた事があるが、その通りで。


「さて、弟よ、どういうことか説明してもらおうか?」


俺たちが聖王国に戻るやいなや、俺たちはノア殿下の兄上に呼び出された。

俺は初対面である。

ノア殿下が報告した。


「休暇で旅行に行ってきました!!

その際、道を間違って聖王国にたどり着いちゃいました!!

なんか色々あって、聖女代理が魔王を倒しちゃいました!!

俺はそのお手伝いをしました!!

楽しかったです!!」


子供か??

魔王を脅した時の人と同一人物とは思えない。

というかノア殿下、こんなこと言う人だったんだ。


「聖女代理を危険な目に合わせておいてどの口がほざいてるのかなぁ??」


にこやかではあるが、アーノルド殿下がそれはもう怒り心頭なのは、俺でもわかった。


「代理殿、怪我は無かったか??」


あっても別に、自分で何とかできるので大丈夫なのだが。


「はぁ、大丈夫です」


「こいつはこういう奴なんだ。

すまんな。

この国に愛想を尽かしてしまっただろう?」


そんなことはない。

俺が首を横に振ると、アーノルド殿下は安心したようだった。

アーノルド殿下はノア殿下へさらに言葉を続ける。


「まったく、お前はいつまでも木登り競走してている子供じゃあるまいし。

少しは落ち着きというものを覚えたらどうだ」


この人、子供の頃はそんなことしてたのか。


「えー、人生には驚きとか刺激が必要じゃないですか、兄上」


セレス様とフェルナンド王子とは違うタイプの兄弟だというのはわかった。

お小言というか説教のあと、アーノルド殿下は俺たちを労ってくれた。


「事態が悪化する前に対処できたことには感謝しています。

よくやってくれました、代理殿」


最後はノア殿下とアン様の手柄なのだが。

それを言おうとしたら、他ならないノア殿下にとめられてしまう。


「そうそう、兄上、朗報がひとつ」


代わりに、とばかりにノア殿下が報告する。

俺の職業についてだ。

公表してもいい、とノア殿下に伝えたのである。

表向きには、今回の旅の途中でたまたま腕のいい鑑定士に出会って、鑑定してもらったということにしてある。

それを聞いたアーノルド殿下は、


「ほら、やっぱり俺が言ったとおりだったろう!」


と宣った。

再検査を提案したの、この人だったのか。


俺の職業については、このあとすぐに公表された。

何故かお祭り騒ぎになったのには驚いた。



聖王国に関しては、フェルナンド王子が責任を取って王族から除籍され、国から追放されたと聞いた。

どこでどうしているのかは、わからない。

ほどなくして、ルリも姿を消したらしい。

身重の体でどこにいったのか。

もしかしたら、二人はどこかで落ち合って、人生の再出発でもするのかもしれない。


どうであれ俺にはもう、関係の無いことだ。

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