第29話 どうもー、横っ面ぶっ叩きにきました( *˙ω˙*)و グッ!4

どこに目的の人物がいるのかはすぐにわかった、。

城は何も変わっていない。

けれど、闇のように濃い瘴気に覆われていた。

だから、より闇が深い場所へ、瘴気がより濃い場所に向かっていけば良かった。


やがてその場所にたどり着いた。

玉座の間である。


この国の王が在るはずの場所に、魔王の魂を宿らせたフェルナンド王子がいた。

待っていたのだろう。


「排除した、と聞いていたんだがな」


魔王は、俺を見るなりそう口を開いた。


「お前のことを排除した、とこの小僧から聞いていたというのに。

まさか謀られていたとは」


魔王は魔王で、フェルナンド王子に思うところがあるようだ。


「…………」


フェルナンド王子の顔を見たら、蹴るか殴るかすると思っていた。

けれど、不思議と感情はなにもわかなかった。

怒りもなにもない。

顔を見た瞬間に、ガチで拳か蹴りを叩き込むだろうと思っていた。

でも、違った。

たぶん、俺の中で本当にどうでもよくなったんだろう。


ただ禊というか、とりあえずケジメとして殴るくらいはしておこう。


魔王は言い終えると、指をパチンと鳴らした。

様々な魔物が現れる。

全ての魔物が闇のように見える濃い瘴気を纏っていた。

魔物達が一斉に襲いかかってくる。

それを、


「ていっ!」


と、可愛らしい声とともにフリージアさんが一掃していく。

今更だが、彼女はとても強い。

ちなみに、ここにはいないがゴードンさんも強い。

敵にまわしたくない人達である。

フリージアさんは、いまは拳や足を使って殴る蹴るをしているが、武器も使う。

一通りの武器が使えるらしい。

なかでもよく使うのが、暗器である。

メイド服のあちこちに仕込んでいるとか。


あ、暗器を使い始めた。

棒のようなものや、噂に聞く手裏剣なるものをつかって魔物の頭へなげ、それがちゃんと刺さる。


「それじゃ、君は本命を殴ってきなさい。

俺は、頃合を見て魔王を弱らせるから」


この人から離れて大丈夫なんだろうか、と思ったが。

ここまでの旅路で、この人もなんだかんだ魔物と戦えることを知ったから、その言葉を信じることにする。


魔法で身体強化をする。

そして、フェルナンド王子の顔をした魔王をぶん殴るために、駆け出した。

一気に距離をつめ、拳を叩き込もうとする。


瞬間、魔王の顔があの人の表情になった。

苦笑していたように見えた。


俺は拳を止めなかった。

そのまま、魔王の顔面へ叩きこむ。

魔王の顔が驚きが広がる。

気にせず首根っこを引っ掴み、もう一回、今度は勢いをつけて膝を顔面へ叩き込んだ。

鼻の骨が折れる音が聞こえた。


魔王の動きはおそかった。

いや、上手く体を操れていないようだ。

困惑しているようにも見えたが、気にしない。

とにかく、この人の顔の形を俺はボコボコにすると決めていたのだ。


「調子に乗るなよ、小僧が!」


しかし、そう都合よくボコボコにさせてくれなかった。

ちっ、あと一発殴りたかったのに。


魔王は距離をとると、手を掲げた。

すると、闇色の弓矢がいくつも出現した。

それが一斉に俺へとむかってくる。

俺はそれを避けつつ、


「【聖なる矢ホーリーアロー】!!」


魔物には効果抜群な、攻撃魔法を放つ。

魔王は今度は手を軽く振る動作をした。

すると、俺の放った【聖なる矢ホーリーアロー】は見えない壁にでぶつかって、消失してしまった。


やっぱり殴るしかないか。

でも、あんだけ殴って蹴ったのに、もう骨折治ってるし。

さて、どうするか。

殴るにしても近づかなきゃいけないし。


と、考えていたら何時のまにかノア殿下が俺の横に立っていた。

そして、もう動くなとばかりに手で制してくる。

かと思ったら、


「魔王陛下におかれましては、ご機嫌うるわしゅうございます。

ところで、こんな場面でなんですが昔語りでもいかがでしょう」


フェルナンド王子の、いや魔王の顔が怪訝なものに変わる。

こんな場面で何を言い出すんだ、この人。

というか、これが魔王を弱らせる方法??


「その昔、死を恐れた神様がおりました。

そう、ゴスイ……テンニンゴスイ、その果てにある終焉を恐れたのです」


魔王の表情が変わった。

焦りと、困惑。

同時に、出現していた魔物たちが消え始めた。


「え?え?」


フリージアさんも困惑している。

その場の全員の視線が、ノア殿下へ集まる。

ノア殿下はさらに言葉を続けた。


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