第26話 どうもー、横っ面ぶっ叩きにきました( *˙ω˙*)و グッ!
ラテマに寄ったのは、表向きの旅程でねじ込んだからだ。
というのも、食べ損ねていた【刺身定食】を食べたかったかのだ。
「万が一にも大ボスを倒し損ねたら、二度と食べられないと思いまして」
「いや、たぶん大丈夫だと思うよ。
君なら絶対出来るって確信があったから、フェルナンド殿下は君を選んだんだし」
ノア殿下がそんなことを言う横で、
「生のお魚って食べて大丈夫なんですか??
決戦前に魚に殺されちゃったら元も子もないですよ??」
フリージアさんが別方向で心配している。
彼女の言葉を受けて、ノア殿下が、
「あ、いっそのことそれでお腹壊したら本当にシナリオが狂うんじゃ……」
と何故か楽しそうに言ってきた。
以前来た時は、リヴァイアサン騒動で入り損ねた店での会話だ。
あの時の店員さんが、接客してくれた。
「あー、あの時の神官さんだー。
久しぶりだねぇ。
今日はお仕事??」
「はい。
この方の護衛です」
事前に決めておいた設定だ。
俺とフリージアさんは護衛の冒険者で、ノア殿下が護衛対象のとある商家の道楽息子ということになっている。
「そっかー」
と言いつつ、何故かじーっと見られてしまう。
「あの、なにか?」
「あー、いや、リヴァイアサン災害のあと噂になってたんだけどね」
「はぁ」
「ほら、あの時は、お忍びで来てたどこかの国の聖女様が対処したってことなんだけど。
実は、神官さんが対処したんじゃないかって噂も出たんだよね」
「はい??」
「ほら、神官さんアーヴィス国の【代理神官】さんに似てたから。
実は代理神官さんが、旅の途中にたまたまここに立ち寄って、リヴァイアサン退治をしてくれたんじゃないかって」
噂って怖い。
だいたい合ってるから、怖い。
横では、ノア殿下が笑いをこらえてプルプル震えている。
フリージアさんはニマニマしていた。
しかし、口を挟んでは来ない。
「でも、こうしてお仕事してるってことは他人の空似だったかぁ。
もし本物だったら、【代理神官様の立ち寄った店】ってことで宣伝できたんだけどなぁ」
「あははは」
たくましい限りである。
そうして食事を済ませ、店を出たあと。
知った顔に出会った。
「あれ?
あの時の治癒魔法使いさんだ」
国外追放されたあと、色々あってお礼にとローブを買ってくれた回復役の人だ。
「久しぶりだねぇ」
と、先程の店員さんのようにノア殿下とフリージアさんを見る。
「お仕事?
護衛ってところかな?」
「まぁ、そんなところです。
貴方もですか?」
「そうそう、緊急招集されちゃってね」
「そうなんですか?
スタンピードでも起きましたか?」
「あれ?知らない??
魔王討伐で一定ランク以上の冒険者がかき集められてるんだよ」
「……は?」
「聖王国のことは知ってるでしょ?
乱心王子が実は乱心じゃなくて、魔王に取り憑かれたって話。
裏取りも出来たから、ラテマから冒険者を派遣する事が決まったんだ。
すでに先発隊は出たんだ。
自分たちは後発隊になる。
ラテマの軍は、自分たちが全滅したあとに出るんだって。
酷い話だよねぇ」
と、カラカラ笑いながら言った。
「ま、治癒魔法使いさんは、これから大忙しになると思うから。
その時はよろしくね」
そう言って、回復役の人は去っていった。
ノア殿下が呟くように言ってくる。
「ラテマは他の国と結託して、聖王国を救うっていう大義名分ができた。
でも、悪戯に軍を消費したくないから、まず冒険者を派遣させて魔王を弱らせてから突入させるってところかな。
うまくいけばいいけど」
口調からはうまくいくはずがない、と滲んでいた。
「ところで、ノア殿下」
俺はずっと気になっていることを聞いてみた。
もちろん、周囲に人がいるので声量はかなり小さくして、聞いてみた。
「そろそろ教えてください。
どうやって、魔王を倒すのか?」
フリージアさんも、うんうんと頷いている。
「あぁ、それ?
まず、弱らせる。
弱らせて殴る、それだけだよ」
「いや、だから」
その方法が知りたいのだ。
方法を知っているのはノア殿下だ。
だから着いてきた。
でも、魔王を弱らせる方法を俺に教えてくれれば、わざわざ着いてくる必要など無かったのだ。
「魔王を弱らせるのに一番効果があるのは……」
ノア殿下が疑問に答えようとした時だ、街中がまた違ったざわめきに包まれた。
住人たちが、街の出入り口へと駆け出していく。
「なんでしょう?」
フリージアさんがそちらを向く。
漏れ聞こえてくる住人や冒険者達の会話からわかったのは、冒険者ギルドが聖王国へ派遣した先発隊が壊滅したこと。
別の国から派遣された軍もやはり壊滅したという内容だった。
俺たちは先を急ぐことにした。
そして、どうにかこうにか聖王国へたどり着き、潜入することが出来たのだった。
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