ヤマトの巻

こんにちは、都知事です。



先日、4匹のうち2匹目のムサシを見送った我が家でしたが、ムサシが居なくなった影響もあったのか、今度は最年長のヤマト君が危うくなって来ました。



ヤマトは最初に旅立ったタケルの実の兄猫で、仲良しだったタケルが居なくなってからは日々を寂しそうに過ごしていました。



人目を避け、人間のいない部屋で1人で過ごすという時間が長く続いていました。



タケちゃんが居なくなってから、気持ちよく眠っている姿は見た事がない。



珍しく人里へ降りて来たかと思ったら、目がうつろでなにもない場所をぼんやりとみつめていたり、かと言えば突然うろうろし始めたり、アルツハイマーのような兆候が出ていました。




住む場所や食事には困らないものの、心の支えのタケルを失ってからの3年間は彼にとって本当に辛く、長い時間だったと思います。


人間ですら3年というのは長い時間なのに、猫からすればもっと長く感じる事でしょう。

生き甲斐を失った上での事なら、なおさら。



遊ぶこともなく、食事もそれなり。ただ残された寿命を寂しく一人ぼっちで過ごしている。それがタケルが居なくなってからのヤマトでした。



そんな中、ついに食事も出来なくなり、水も飲めなくなったヤマト。唯一心を許していた妹が来ても目もくれず、家の中をよろよろと歩き回り、寂しく鳴いていました。




その様子を妹は「きっとタケルを探して呼んでいるんだろう」と言っていました。



猫は死期が近づいた時、急に活動的になるといいます。これは、ある本によるとアルツハイマーの一種で、幻覚を見たりするうちに自分が若返った(子猫の頃に戻った)と勘違いするからだそうです。




最後まで探し、歩き、探し疲れて宿に選んだ母のベッドの下。ここはタケちゃんが息を引き取った場所でもありました。




私はベッドの下で動かないヤマトに声をかけましたが、反応はありません。


「もう、そっとしておいてあげよう」


妹の意見に同意し、夜通し家族でヤマトやタケルの昔話をしながら過ごしました。




「タケちゃん、見てるか…」

「ヤマトを迎えに来てやってくれ」






翌日、ヤマトが旅立ちました。



兄弟揃って眠っていた猫たちが、最期も同じ場所で眠りにつきました。



老いた身体、痛みが伴う身体を脱ぎ捨て、最愛の弟が待つ場所へ旅立つヤマト。


長い修行が、ついに終わりました。




全ての苦しみから救われ、自らの足で境地へ辿り着きました。最後まで頑張りました。最後までうちの子であり続けてくれました。



南無阿弥陀仏。


南無阿弥陀仏。



どうか虹の橋でタケちゃんと再会し、互いに大喜びしながら身体を舐め合っていますように。



暖かな雲の布団に2匹寄り添い、幸せな眠りにつきますように。その穏やかな日々が、未来永劫続きますように。



南無阿弥陀仏。

南無阿弥陀仏。


神様、仏様、他の子に続き、どうかヤマトの事もよろしくお願いします。


ずっと頑張ってきました。ずっと耐えてきました。しばらくタケちゃんと2人だけにしてやって下さい。


寝ても覚めても会いたかった最愛の弟、心の友にようやく会えたのです。


丸3年分の再会をさせてやってください。





耐えに耐え


永き修行の果ての果て


得りし涅槃で友の元





人間は死の事をネガティブなものだと本能的に感じますが、先に旅立った人達や猫達にまた会える場所だと考えると、歳をとるのも寿命が尽きるのも悪くないと思えます。



3匹の猫が教えてくれた命のこと、日々の暮らし方のこと。これからも大事にして暮らしていきます。



ヤマト君、お疲れさま。うちの子になってくれてありがとう。



またね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

実家の猫が死にました @tochiji39

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画