第22話 放課後の約束

「浅見海吏って、自分?」


峻にメッセージを送ろうとしたとき、不意に背後から声をかけられた。

驚いて勢いよく振り向く。

そこには、銀河が笑顔で立っていた。


「そう……だけど……」

「おー、良かった! さっき他のヤツに聞いてん」


銀河が握手を求めてきたので、海吏も手を差し出した。

小柄で親しみやすい見た目からは想像つかないほど、ゴツゴツしていて硬い手だ。

手を握り返すと同時に、勢い良く上下に振られた。


「自分、ダンスやってんねやろ?」

「あぁ。誰かから聞いた?」

「みーんな言うとったで。自分がこの学校で一番ダンス上手いって。めっちゃすごいやん!」

「一番……かどうかは分からないけど、ありがとう」

「放課後少し時間貰えへん?」


銀河から声をかけて貰えるとは思っていなかった。

まさに渡りに船だ。


「あ、うん。いいよ」

「ありがとうな」


銀河はお礼を言って立ち去った。

話とは何なのか――考えても答えは出なかった。

だが、こちらも話してみないことには何も始まらない。

海吏は陸叶と視線を合わせ、静かに頷く。

――そして昼休み、峻から返信があった。


『ブレイクのみじゃなけりゃいいな』


峻としても、他ジャンルが踊れるブレイカーは大歓迎なのだろう。


『放課後聞いてくる』


海吏が再度メッセージを送ると、『了解』と書かれた犬のスタンプがポンと押された。

峻はどうやら犬が好きらしい。

使うスタンプはほとんどが犬のキャラクターだ。

だんだんと峻のことを理解してきている気がして、ほんのり嬉しくなった。


「俺もついて行こうか?」


昼練の時間に、陸叶も心配そうに聞いてくれた。

気持ちはとてもありがたかったが、海吏は首を横に振る。


「まだ何の話か分かんねーからなぁ……」


『一緒にダンスをしたい!』という話であれば、陸叶にもいてもらいたいところだ。

しかし、用件が分からない以上は、呼ばれた本人だけで行ったほうがいいだろう。


「それもそうだね」


二人は、大きなガラス扉に全身を映しながら、前回峻に指摘された部分を修正していく。

身長差もあるしダンススタイルも違う二人だが、峻のアドバイスでバチッと揃うようになった。


「やっぱ峻ってスゲーな」


海吏の言葉に、陸叶も汗を拭きながら頷いた。

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