第16話 待つ時間

今日は練習の日だ。

この二日、海吏は何をしても落ち着かなかった。


(きっと来てくれる!)

(もう来てくれなかったらどうしよう……)

が、波のように交互に押し寄せてくる。


「そんなに動いてて疲れない?」


陸叶に言われてようやく、自分がいつもの倍以上ウロウロしていることに気が付いた。

手が痛いのは、爪が食い込むほど拳を握りしめていたからだろう。


「はぁ……ダメだな。気にしちゃいけないのは分かってんだけどさ……」

「気にするなって方が無理だよ。それだけ真剣に考えてるって事じゃん」


陸叶が海吏の肩に手を置いた。


「同じように、峻もきっと真剣に考えてくれてるから、即答しなかったんだよ」

「そうかな……?」

「そうだよ。俺たちだって、峻を誘おうって話になったとき、たくさん話し合ったじゃん」


同じ事をしていても、待つ方が圧倒的に時間が長く感じるものだ。

食事もいつもより喉を通らないし、寝付くまでにも少しだけ時間がかかる。

絶不調なわけではないが、全体的にほんのり具合が悪い。

海吏は、このループする思考の沼から早く抜け出したかった。

「海吏……なんかダンスふにゃふにゃしてる」

「へ?」


言われればそうだ。

頭の中は大部分が峻のことで占められており、『ダンス』ではなく、耳から入る音に体が惰性で動いていた。


「そういう陸叶も、ずっと楽しくなさそうな動きになってる」

「あ……」


感情がダンスに出やすい陸叶は、ポップな曲に乗り切れず、動きが重くなっていた。

二人とも、切り替えなければならないと理解はしているのだが、『分かっている』のと、『できる』のは、また違う問題だ。


『ハァ……』


目を見合わせて、同時にため息をついた。

息の合い方は、それだけ二人で踊ってきた証拠でもある。

そこに「新たに入れたい」と同時に思ったメンバーに、加入を断られるかもしれないという現実が、足取りを重くさせていた。


「折角練習しに来たんだから、もう少し集中しねーとな……」


海吏が自分に言い聞かせるように口にしたとき、公園の入り口で立ち止まる人影から、声をかけられた。


「何してんの」

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