第13話 一緒に踊りたい

それは何度目かの練習の後だった。


「峻、俺たちと一緒にチーム組まない?」


海吏の提案に、汗を拭いていた峻は即座に返答する。


「え、やだよ」

「何でぇっ!?」


海吏は涙目で詰め寄った。

それだけ峻が加入してくれる自信があったし、それは横の陸叶も同じだったようだ。

大きな体を微動だにせず、ただ呆然としている。


「俺、お前らの事なんも知らねーもん」

「浅見海吏、桜川高校1年A組、8月10日生まれ、獅子座のO型。好きな食べ物はカレーライスで、嫌いな食べ物はセロリ。好きなアーティストはIgNINEte! 趣味は――」

「ちょっと黙れ」


キャンキャンと騒ぎ立てる海吏の口は、峻の手で塞がれた。


「お、俺の番?」


焦る陸叶に、峻は首を横に振る。


「そうじゃない」


峻は頭を抱え、ベンチに腰を下ろした。

二人は峻を覗き込むように、目の前にしゃがみ込む。


「海吏……お前、小さい頃『知らない人についてっちゃいけません』って良く言われたろ?」

「何でわかんの!?」

「分かるわ! 数回しか会ったことねぇ俺を、考えなしにチームに入れようとしてるくらいだからな!」


すると、海吏の顔が急に真剣味を帯びた。


「考えなしじゃないよ。毎日毎晩、すっげー考えた上で、峻と一緒に踊りたいって思ったんだ」


海吏の真剣な顔に、峻もこれが冗談ではないと悟ったらしい。


「即答できる話じゃねーから、一旦持ち帰らせて貰うわ」

「あ、うん……」


峻が帰り支度を始めた途端、海吏の胸には急に不安が押し寄せてきた。

優しさにつけ込んだ図々しいお願いだっただろうか――。

面倒見良く指導してきてくれたが、峻にとっては迷惑だったのかもしれない――。

そう思うと、帰る峻の背中に投げかけずにはいられなかった。


「あのさっ! 嫌だったら……全然……その、断ってくれてもいいから」


峻は振り返らず、右手を軽く上げてその場を去っていった。


「良かったの? 最後あんなこと言って……」


事前に色々話し合っていたので、陸叶は海吏の熱量を知っている。

どれだけ海吏が峻と一緒に踊りたがっていたか――。

陸叶は心配そうに海吏を見つめていた。


「うん……押し付けるの、よくねーかなって」

「そっか……」


そんな陸叶の視線に気付き、海吏は誤魔化すように笑う。


「ま、ダメ元だからって思っとこう」


その笑顔に力が無いことを、本人は気付いていなかった――。

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