第12話 待ち人来る

「よぉ」


二人は勢いよく顔を上げる。

すると、待ち焦がれていた人物が目の前に立っていた。


『あぁーーーーーー!!!』


二人の叫び声に、男は顔をしかめて耳を塞いだ。


「うるせーな」

「だって! なぁ!?」

「そ、そう! ずっと待ってたから……」

「ほんとだよ! ずっと待ってたんだって!!!」


矢継ぎ早に二人が同じ事を話しかけるので、男は面倒くさそうに若干聞き流す。


「そーかそーか」

「何で来なかったの? つーか、何で今日来てくれたの!?」


海吏の言葉に、男は前回かけていなかった眼鏡を外してケースにしまった。


「何で……って、中間だったから」

『ちゅうかん……』


ピンと来てない二人とは対照的に、男は察した様子で言った。


「お前らの学校、一学期は中間ねーんだ」


続けて、「期末、範囲多くて大変だな」と笑いながら、男はバッグからジャージを取り出す。


「着替えてくるから、荷物よろしく」

「あ、うん」


海吏は思考が追いつかず、しばし呆然としていた。


「――これってさ、俺たちを見に来てくれたってことで……いいんだよね?」

「だと……思うけど……」


陸叶の問いかけに海吏が半信半疑で答えると、すぐにジャージに着替えた男が戻ってきた。


「やるか」

『お願いします!』


指導は一時間にも及んだが、体感はあっという間だった。

だが体は確実に疲れていて、全員汗だくで息切れをしている。


「……こんなもんか」

「あざっ……す……」

「あり……と……ざいます……」


密度の濃い一時間だったに違いない。

海吏は、胸のモヤが一気に晴れたような気がしていた。


「じゃ、帰るわ」

「ま、待って!」

「ん?」

「俺、海吏。こっちは陸叶。名前聞いてもいい?」


男は少しだけ思案したのち、ぶっきらぼうに答えた。


しゅん

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