第11話 まだ、待つ

「凄かったな……」

「うん……」


男が立ち去った後も、二人はしばらく動けずにいた。

自分たちも「何となく違うな」とは思っていた部分を、分かりやすく言語化してくれたのだ。


「確かに俺、海吏に比べたら筋力ないもんな……」

「いやいや、俺だってフワッとした違和感しかなかったもん」


陸叶は何かを実感するように、両手でグーパーを繰り返す。


「俺のスクールだけかもしれないけどさ、こう、よっぽど間違ってる時じゃないとあんまり指摘されないんだよね」

「あ! 俺んとこも!」

「だから、みんなある程度までは上手くなるんだけど、それ以上上手くなりたい場合は自分で気付いて直していくしかなくてさ」


海吏は大きく何度も頷いた。


「それに、人数も多いからいちいち一人ずつ指摘なんてできないだろうし」


陸叶の言葉はもっともだった。


「もっと上手くなりたかったら、自分から動かないといけないんだよね……」


海吏の脳内で、男の言葉が何度も反芻する。

つられて、胸が熱くなっていくのを感じた。


「絶対また来てくれる……なんとなくだけど、そんな気がする」


それからというもの、海吏は練習日になるとソワソワして過ごしていた。

海吏ほど態度には出さないが、陸叶も帰る頃になると残念そうな顔を見せている。

あれから2週間――謎の男が公園に顔を出すことは無かった。

休憩中、ベンチで水分補給しながらも、二人の視線は足元を彷徨ってしまう。


「そろそろ諦めなきゃいけないのかなー……」


海吏が珍しく気弱になっていると、視界にあのチェックのズボンが飛び込んできた。

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