第10話 思わぬ出会い

「リズムトレーニングしてから、適当に曲かけて踊ろうぜ」

「OK」


その日もチームメンバー加入のアイディアは出ないまま、いつも通り練習を続けていた。

リズムトレーニングを一通り終えると、不意に背後から声をかけられた。


「ねぇ」

「わっ! ビックリした」


驚き過ぎて転びかけた海吏の腕を、ナイスタイミングで陸叶が掴む。

声の主は、いつの間にか背後に立っていた。

――見知らぬ男子高校生だった。

公園の近所にある、地元で一番の進学校として知られる公立高校の制服だ。

自由な校風が売りの学校で、耳元にはピアスが光っていた。


「アンタさ……」


男は海吏を指さした。


「いつも音を最後まで聞けてない。『振付』じゃなくて『ダンス』を踊りたいなら、音を最後まで聞いたほうがいい。それからアンタ――」


今度は陸叶に向き直る。


「止めが甘くて流れてる。筋力が足りてないから、もっと筋トレした方がいい」


ぽかんとする二人を尻目に、男は「それじゃ」と言って背を向ける。

海吏はハッとして、慌てて男の腕を掴んだ。


「待って!」

「何?」

「ダンスやってんの?」


男は離された腕をポケットに突っ込むと、若干面倒くさそうに答えた。


「まぁ、一応」

「ちょっとやってみせてくんない!?」


海吏の圧に、男が一瞬たじろいだ。

陸叶がそれを制止しようと海吏の肩に手を置くと同時に、男は自分のバッグを海吏に押し付けた。


「アンタの場合、例えばフォーカウントでこの動きがあったときに、『4』ですぐ次の動作に入ろうとしてる」


男は、先ほど二人がやっていたステップをサラリと踊って見せる。


「でも、実際の4カウント目は、ファイブが来る直前まであるから、もっと余韻を持たせないと勿体ない」


比較すると分かる――。

確かに男の言う通りやったほうが、動きがキレイに見えた。


「で、そっちのアンタは音は聞けてるけど動きが流れがち」


先ほどとは違うステップで、今度は陸叶の踊り方の真似をしてみせる。


「もう少し筋力つけて、こことか止めてみせるともっと良くなると思う」


男は、指摘した部分をもう一度踊って見せた。

やはりこちらも、男の踊り方の方が洗練されている。


「って感じ」


男は海吏からバッグを受け取ると、今度こそ立ち去ろうとする。

海吏は意を決して声を上げた。


「なぁ! 俺たち月・水・金ここで練習してんだけど、また来てくれない?」


男は顔だけ振り向くと、「気が向いたら」とだけ残して公園を後にした。

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