第6話 達成感の中で
それからも何度か、体育のダンスは続いた。
海吏は、あの日のことなど無かったかのように振る舞っていたが、何かを言いたそうな陸叶の視線を感じることは、何度かあった。
「オッケー! みんなめっちゃ上手くなったじゃん!」
「浅見くんの教え方がいいからだよ!」
「いやいや、みんなの努力の結果だっ――うわっ!」
背後からドンと、肩に腕を回される。
当初軽口を叩いていた男子生徒も、気付けばちゃんと海吏の実力を認めていた。
「なんかさ、海吏のおかげで、すげーダンス上手くなった気ぃするんだけど」
「分かるー! 確かにそう!」
「絶対ウチらのグループ一番上手いよね!」
気付けば仲間意識も生まれ、いよいよ最後の発表となった。
相変わらず視線は感じるが、陸叶が何も言わないのであればこれ以上は何も聞かないでおこうと心に決めている。
くじ引きで発表順が最後となった。
「っし! Aグループみんなでかましてこうぜ!」
『おー!』
あらかじめ決めていた掛け声もちゃんと揃った。
滑り出しは上々だ。
――結果は当然、最高評価だった。
(終わったなー……)
海吏は、達成感と喪失感の中にいた。
来週からはもう別の競技に入ってしまう。
そう考えると寂しさを感じずにはいられない。
今通っているダンススクールは、1ヶ月単位で振付だけ習うシステムである。
一曲を構成つきで踊り切ることがない。
海吏は、久しぶりの高揚感に手が震えていた。
(楽しかったなー……)
すぐに家に帰るのが勿体なくて、教室でぼんやり外を眺めていた。
野球部のバットの音、吹奏楽部のパート練習、ランニングの掛け声。
時間は常に動き続けている。
自分だけ立ち止まっているわけにはいかないが、もう少しだけこの余韻に浸っていたかった。
「用のないやつはそろそろ帰れよー」
見回りの先生の声に、海吏は慌てて立ち上がる。
聞こえてくるトランペットのメロディーに、歩く足取りも自然とステップを踏んでしまう。
帰ったら何をしようかと考えながら階段を降りると、下駄箱に人影が見えた。
「東……?」
「あ、浅見……」
「何してんの? 誰か待ち?」
靴を履き替えながら尋ねると、陸叶の影が近付いてきた。
「浅見を待ってたんだ……」
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