第3話 ダンスの第一歩

「じゃ、まず曲に合わせてやる前に、何度か出てくる基本的なステップだけ教えていい?」

『お願いします』


全員が頷いたので、海吏は皆の前に立った。


「足を肩幅ぐらいに開いて……うん、もうちょい開いてもいいかな」


一人一人の動きをチェックしながら、細かく説明していく。

脚の動き、腕の動かし方、それらを両方合わせたときのタイミング等、全くダンスをやったことない人でも分かるように丁寧に。


「カウントでやってみよっか。俺が手を叩きながらカウント取るから、『ワン』で沈む『エン』で上がるのタイミングね」


ヒップホップというジャンルにおいては基本中の基本の動きだが、初めて習う人にとってはこれが意外に難しい。

手足のタイミングがズレると、自転車の空気入れみたいになってしまうのだ。


「いくよー! ファイブシックスセブンエイトワンエンツーエンスリーエンフォー……」


案の定、空気入れになってしまったり、カウントの取り方が逆になってしまった人もいたが、海吏が丁寧に教えた結果全員ができるようになった。


「オッケー! これが『ダウン』ね」


海吏は次々とステップの説明を始めた。


「……で、こう四角形を描くから『ボックスステップ』っていうステップなんだ」

「へー」

「あ、ほんとだ」


女子たちは「あ、できたできた!」「なるほどねー」と、はしゃぎながら練習を繰り返している。

その横で、男子生徒が一人無言で頭を抱えていた。


「だー! わっかんねぇ! 無理だわ!」


その叫びに、海吏の肩がビクリと跳ねる。


「わ、悪い。早すぎた?」


胸が――生ぬるい風に撫でられたように、ざわついた。

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