Out of history.

「私達が学んだ歴史は、偽物?」

女性の声は震えている。

「あぁ。偽物だ。でも、これから話す。本物の歴史を。」


ある日の昼下がり。

少し汚れた茶色のマントを纏った男が路地裏に入っていく。

入った先には骨のように細くなった少女が一人、座っていた。

少女は自身の前に現れた男を見る。


「貴方は誰。」


「そっちこそ」


「お前、こんなとこで何してる。」


信じられない物を見たように、少女は目を見張る。


「私を始末しに来たんじゃないの、?」


「お前を殺してなんになるんだ。」


男は単純な疑問だった。


「…名前は?」


「……十氷じゅうひょう。」


「そうか…俺は海雲かいうん。よろしくな。」


「?…【よろしく】?」


「おう。お前、このままだと餓死しちまうし…うちにこればいい、と思ったんだがな。」


「いいの?ついてって。」


「勿論。じゃなきゃ誘わねぇ。」


「…流鬼りゅうき。」


「あ”?」


男は目を見張る。


「…私の苗字。」


「マジか…」


少女の、十氷の苗字の『流鬼』。其れは、全吸血鬼一族の本家とも言える吸血鬼の貴族・王家の家系なのだ。


「そーんなにいい家系なのに、此処にいるってことは…」


「予想道理。捨てられたのよ。」


「なんで。」


「さぁ。」


「そういえば、貴方の苗字は?」


少しの沈黙の間、海雲は悩んだ様子だった。


「あー……俺は、苗字が無いんだ。」


「物心ついたときから一人でに居た。今では森の生物を狩って生活してるよ。」


「へぇ…」


少し、気まずい空気が流れる。初めて会ったばかりなのだから仕方が無い。


「…んじゃあ、うち、来るか?」


「勿論。」


「じゃあ此方だ此方!」


「あ、ちょッ!?速いってばッッ!」


もうすでに、少し仲良くなったようだ。

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異世界じゃない理由。 milk tea @mirk-tea_0o0

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