第11話 ノック祭り

俺はオープン戦の役目を終え、横浜の選手寮に帰ってきた。1年間2軍暮らしは確定したが、このオープン戦で残したホームランのインパクトは強いことであろう。そして課された自分自身の最大の苦手、守備の課題だが、俺は学生時代からフライが8割くらいしか取ることが出来ない。だから毎試合センターめがけて打球が飛んできてしまうんだ。

セ・リーグにも今年からDH制が導入されたのだが、DHには膝に爆弾を持っている打撃の天才、伊東さんが入ることが決定している。だから1軍に上がるには守備を鍛えるしかないのだ。

今日は西井道場に守備指導のために行くことにした。

「お邪魔しまーす!」

「フォッフォッフォッ!来たかね。中村くん。」

「はい。今日は守備の極意を教えていただきたいと思いまして…。」

「嫌だ。」

「は、はい?」

「そらそうだろう。お前の場合、基本のきの段階にもいっていない。だいたいお前は人に頼りすぎなんじゃ。ガミガミガミ……」

そもそも最初に無理やりここに連れてきたのは誰だよ‥。と思いながらも説教を聞いているといきなり、

「お前、外来い。」

「はひっ!」

いったい何をされると言うのだろう。

「千本ノック行くぞ!」

「えぇぇ!?ちょちょちょ待って!」

「はい一本めー!」

「うわぁぁぁ!」ズサァァァ…ポロリ

「今のは取れただろうが!10本ノック追加!」

「ぐぁぁぁぁ!、鬼だぁぁぁ!」

そしてなんだかんだで500本ノックが終わった。

「くそっ、この爺さんの何処にそんな力があるんだよ。」

「まだ残り500本あるから明日朝2時に道場に来いよ!」

「ひぃぃ!勘弁してくれー!」

「いいや、ならん。本気で強くなりたいんだろ?」

「はい。」

「そうだろう。なら200本追加も行けるよな。」

「は、はい!」

なんだろう、俺はこの爺さんのことを舐めていた。でもまさかこんなに体力があるとは。

俺はオープン戦の後1か月、毎日爺さんに千本ノックを打ってもらった。

絶対に支配下契約になる!

ー続くー

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プロ野球のどん底から這い上がれ!育成8位の逆襲物語 栗モン @A12846

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