第10話 オープン戦④
舞台を大阪に移し、残り2打席の戦いが行われる。
ここを逃したらもうチャンスはない。そういう気持ちで望んでいる。
もうプライドを捨てて西井の言うことを聞く!何でもするから絶対に打たせてくれ!と、ただ祈るような気持ちで試合前練習をしていた。
いまだに1打点はマークしたものの、ヒットは0本。
そんな中、監督からある提案をされた。
「今日スタメンで出て、2打席中長打を1本打てれば、お前をフロントに推薦してやる」と。これ以上のチャンスはないというところでそのチャレンジを受けた。
「本日のスターティングメンバーをご紹介致します。………2番センター中村」
本当にスタメンだ!何度でもこのスターティングメンバーで名前が呼ばれると緊張するんだよな。そんなことを考えながら1回表、打席が回ってきた。相手ピッチャーは昨年パ・リーグ最優秀防御率の宇野投手だ。
ネクストバッターズサークルで素振りをしながら様子を見ていたが、緩急がものすごく効いていて、変化球のキレもすごい。速球もまるで鉄球を投げられているかのように重いと聞いたことがある。そんな選手と対戦出来るなんて、光栄なことだ。
そして投じられた初球。うなりを上げた剛球はインコース膝元にズバッと決まりストライク。どうしたらこんな球が人間から投げることが出来るのか不思議になるくらいの球だ。
2球目の球はインコースに同じような球を投げられてストライク。
そして投じられた3球目。
「甘い!!!」
ズガーン!!!
「いけーーーーーーー!!!」
真芯で宇野投手の直球を捉えた。角度も完璧だ。
ゴン!!
「入ったーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
「よ……………よっしゃ?」
俺はいまいち状況を掴むことが出来ないままダイヤモンドを一周した。
「よくやった!俺からの試験「には」合格だ。」
「はい!ありがとうございます♪って、「には」ですか?
「ああ、そうだ。お前はバッティングの才能は素晴らしいものがある。しかし、お前の場合ゲームで言ったらこんな能力になるだろうな。」
ミートD
パワーC
走力G
守備力G
肩力G
捕球F
「えっ!?」
「そらそうだろう。春季キャンプのこと覚えてないのかよ?」
ー春季キャンプー
「はい、今から春季キャンプ名物!監督からの地獄の千本ノックいきまーす!おらセンター!!」
「オーライ!オーライ!」
ポロリ……
「何してんだお前よー!もう一球!」
カキーン!
「オーライ!」
ずがーん!(ボールが頭の上でバウンドする)
「イッテェ!!」
ー現在ー
「ああ、そういえばそんなこともありましたね。」
「だろ?お前はバッティングだけでいけば支配下圏内に十分いるんだよ。ただあまりにも守備が下手くそだったから育成指名だったんだ。」
「そうなんですね。」
「そこで、俺からの宿題は1年間で2軍の守備率9割7分だ。」
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説明しよう!
守備率とは、選手が守備に関わったプレーのうち、エラーをしなかった率を表している!
この守備率は高ければ高いほど良い。平均的な守備率は9割8分後半くらいとされていて、監督が課した9割7分でも低い方なのである。
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「つまり1年間2軍暮らし確定ってこと!?」
「そう言うことになるな。もしクリアできたら、来季は支配下登録してやろう。」
支配下への道のりはまだまだ遠い。
ー続くー
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