第9話 オープン戦③

今日はいつになく緊張していた。なぜかって?今日打てなかったらほぼ支配下なしが確定してしまうからだ。今日は元のスタイルを貫いて打席に立つ!そう決めていた。

今日は広島戦。そしてこのチームには中学の時俺と同級生だった篠原がいる。一緒によく一打席勝負をしてきたが、まさかプロの世界ですることになるとは。

試合前、篠原が俺に会いにきた。

「よお博!久々だな!」

「久しぶり!お前もドラフトで指名されてたの知ってびっくりしたよ!」

「ああ、まあ博と違うところと言えば、背番号が2桁なこと位かな。」

「ぐぬぬ・・・。」

「対戦して白黒つけよう。」

「望むところだ。」

打席が回ってきたのは9回表。

     1 2 3 4 5 6 7 8 9

ーーーーーーーーーーーーー

  B  0 0 0 0 0 3 2 0

  H 0 0 0 0 0 0 1 0

1アウト1、3塁。相手は篠原。今日はやけに心音が聞こえる。

ドクン・・・ドクン・・・

「さあ、プロで決着つけようや!」

「望むところだ!!」

そして投じられた一球目。篠原が投じた球はうなりを上げながらストライクゾーンど真ん中に飛んできた。

がすっ!

「ファール!」

(クソッ!捉えきれないか。)

2球目は一球外され1-1。

そして迎えた3球目。1球目とはうってかわってスローカーブを投じてきた。俺は体の重心が前に突っ込んでいたが、外角低めの球をチョンと当てて打球は三遊間に飛んでいった。

(頼む、抜けていてくれ!)

その一心で一塁まで全速力で走った。

ふと横を見るとショートが忍者のような守備範囲でキャッチし、2塁に送球してアウトにしていた。俺は一塁ベースまであと5、6歩と言ったところであろうか。

(間に合えーー!!!)

俺は無我夢中でヘッドスライディングした。

ズサァァッッ!

「セーフ!!!」

「よっしゃー!!!」

「何喜んでんだバカヤロウ!アウトだよ!」

「あっ、すみません。そうでした!」

なんとか望みを繋ぐことができた。

しかし篠原との勝負に負けてしまったのは悔しいが。

「入学試験」合格まで二打席中二打点。

試合後、篠原が話しかけてきた。

「今日は打点は取られてしまったけど、打席内容からしたら俺の勝ちだからな。」

「支配下になって今度はお前に勝つからな。」

「やれるもんならやってみろ!」

「またな。」

「おう!」

ー続くー

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