第7話 オープン戦②

結局あの「NISHIIスーツ」とやらのおかげでスイングがだいぶ良くなった気がする。

翌日試合前練習でバッティング練習をしてみると、今まではほとんど出ていなかった柵越えがバンバン出るようになった。

ザワザワ……

「あんなフォームのやついた?背番号133!?育成選手じゃん!しかも一年目だって!期待の新星じゃん!」

ピクッ……

「あいつはいいスイングしてるなぁ。将来が楽しみー!」

ピクピクッ……

「あいつは下手したら石川よりいいスイングしてるかもなー!」

ピクピクピクッ……

「いやぁーーね!そぉれほどでもぉーないですよーー!」

「うわなんだあいつ、こっち向いた。」

「いちいち反応してくんなや!集中しろや!」

パタッ………

……よし、聞かなかった事にしよう。

調子に乗りすぎてちょっとどつかれたが、まあいいだろう。

なんせ今日の俺は前までの俺とは全く違うんだから!

今日の対戦相手はパ・リーグに所属しているウインドマリンズだ。

昨年日本一に輝いた強豪球団だ。

オープン戦とはいえかなりの強いメンバーが揃っている。

そして、俺の2度目のチャンスがやってきた。

    1 2 3 4 5 6 7 8 9

ーーーーーーーーーーーー

 W 1 4 0 0 0 0 0 1

 B 2 0 0 0 0 1 1

8回裏、0アウト2塁。一本出れば同点の場面だ。

(よし、昨日みたいにならないように落ち着いて勝負しなければ。)

そして投じられた初球、外角低め155km/hのストレートがズバッと決まりストライク。

(ココは甘く入ったら打ちに行こう。)

2球目、先ほどと同じようなコースにフォーク。

(クッ!)

ハーフスイングはボール。危うくバットが出てしまう所だった。

そして3球目、インコースにグッと食い込んでくるスライダーに空振り。2ストライクだ。

(追い込まれたぞ…。しっかり落ち着いてボールを見よう。)

投じられた4球目は俺の体の方向めがけて一直線に飛んできた。

(やばい!当たるぅ!)

俺は恐怖のあまり目を閉じて体を前傾させ必死に避けた。

ヒラリっ…

「ふう、あぶねえなんとか避けれた。」

「ストライク!バッターアウト!」

「さあ、2ー2だ!落ち着いていくぞー!」

「あのー、すみません。」

「はい?」

「三振ですので、お引き取り願います。」

「え?」

こうして2打席目も三振。

「くそうっ!今日こそはいけると思ったのに…。」

結局この日の試合は惜敗。これで残されたチャンスは残り3回になった。

試合後今日対戦したピッチャーが俺に声をかけにきた。

「おい、中村。」

「はい、立石さん、どうしましたか?」

「お前が果たしてどんなトレーニングしたのか知らねーけど、一軍の世界舐めんな。」

「はい。」

「もっと練習して支配下取って俺と再戦しような。」

「はい!がんばります!」

「うむ。返事『だけは』いいな。せいぜい頑張れよ。」

残り3打席で3打点。かなり絶望的な状況だが、俺は諦めない。

ー続くー

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