第6話 謎の人物との出会い
「はぁ、今日は打てなかったな…。ちょっとギョーザでも食べにいくか‥。」
カツカツカツ……
「ねえ、君?ブルースターズの中村選手だよね?」
「はい、そうですが、何か?」
「いや、久しぶりに会ったなーと思って」
「はあ…?」
相手は60代後半くらいの爺さんだった。
(誰だ?俺が相手を忘れているだけか?)
「あの、すみません、お名前をお聞きしてもいいですか?」
『断る!!!』
「はいぃ?!」
「君を高校生時代から見てきたが、君は体の使い方がとても下手だ。わしが指導してやろう。」
「いえ、結構です。さようなら。」
「ほう、いいのかね?」
「はい、家に帰ります。」
「そうはさせんぞい!」
グワシ!ドガッ!ボコっ!
「ぐあああああぁぁ!!分かりました!行きますから!命だけはぁぁ!!」
「ふむ、よろしい。この会話は全て録音しておるからな。では行くぞ!」
「ぐああああぁぁぁぁ!」
俺はその瞬間視界が真っ白になった。
そしてしばらく後……
「はっ!?ここは!?」
「目が覚めたかね?ココはワシの道場、西井道場だ。」
「何なんですか!?あんた!もういい、警察を呼ぶ、警察だ!」
「ざぁーんねん!ココは電波の入らない山奥にある道場だ。携帯もこちらの金庫で預かっている。」
「何!?」
「まあいいから、私の話を聞きなさい。」
「…はい。」
いったい何をされるのだろう………
「いきなりだが、君にはこの装置をつけてもらう。じっとしておれ。」
「ぐっ!」
俺につけられた機械は俺の身長くらいある手作り感満載の着ぐるみみたいな物だった。
一体何をされるかわからない。あの時無理矢理でも逃げておけばよかった…。心の底から後悔した。
ガチャガチャ…
「よし!セット完了だ。ワシは日本中を巡り歩き、野球の才能がある奴を見つけ次第このワシ自作のマシンでフォームの指導をしている西井だ。今から君には1000本素振りをしてもらう。そのデータをこのワシ自作の『NISHIIスーツ』に組み込み、お前のスイングをそのスーツが直すというわけだ。」
スーツの名前ださっ!というかこの着ぐるみスーツだったのかよ!いろいろ言いたいことはあるが、とにかく安全に帰れたらそれでいいと思っている。
「とにかく、危ないことはしないでくださいね。」
「ああ、分かっているとも。」
嘘つけ。ボコボコにされかけたからココまできたのに。と言いかけたが、何されるかわかんないんで黙って1000本素振りをすることにした。
「998‥…999………1000!!」
「よく頑張った!」
「で、これでどうなるんですか?」
「まあまあ、そう焦らずに待っておれ。……ほーれ、スーツが起動するぞ!」
は?起動?何言ってんだコイツと思っていると突然、
「ナカムラ ヒロシ スイングフォーム カクニン コレヨリ フォームヲシュウセイスル」
「え!?何これ何これ何これ!?!?!?」
「慌てるな。お前のスイングを修正してスーツがお前の体を自動で動かしてくれる。」
ガガガガッ…
「ちょっと待って!!!!」
「ええい、いけーーー!!!」
ブオォォォン!!!!!
「!?」
今までの俺のスイングと全くと言っていいほど違う。でもこのスイングフォームで振るとスイングスピードが段違いで早くなっている。
「すげぇぇ!!」
「じゃろ。」
連れて行き方はヤバい爺さんそのものだったが、実力は本物。そう確信した瞬間だった。
「このスーツはお前の身長、体重、筋肉のつき方なども含め、全てのデータを解読し、お前のための最善のフォームを見つけ出してくれる。」
「ほぇぇえ!すげえぇぇぇえ!」
「まあ、お試しはココまでだ。」
「はい?」
「ここからはしっかり金をいただくぞい♪」
「えぇぇえ!?」
「そらそうじゃろう。こんな高度な他の場所にない技術だ。金を取らぬわけにはいかんぞよ。」
「分かりましたよ、いくらですか?」
「月10万。」
「月1万ねー、はいはい、、、えええええーーーーー!?10万!?」
俺の年俸は年400万円。契約金で貰ったお金は800万円だったので、なかなかにこの出費は痛い。
「くそっ…分かりました。契約します。」
「おぉーっ!そりゃ話が早いな!じゃ、早速10万払って。」
「はい…。」
「確かに。」
このただの不審者みたいな奴がこれからの野球人生を変えることになるとは、まだ誰も思っていなかった……。
ー続くー
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