第三話
そんな控えめであったわたくしの淡い気持ちは、あの日、変わったのでございます。
わたくしは、
清之助さまと云うのが、わたくしの心に在った、あの方のお名前でございます。
しかしわたくしに関しては、視力が大変よく、夜でも不都合がないほどであったので、時折こっそりと抜け出して、街を見に行ったのでございます。
そんな時、あの方が神社の方へ向かう姿を見つけたのでした。
そこで、懸命に何かを祈っておられました。
それからというもの、わたくしは何度も街に降りて、あの方のことを探りました。
そうして分かったことは‥‥‥。
あの方には、いずれ夫婦となると決めた、千代という女子がいること。
千代は病で臥せっていること。
病状は芳しくなく、もう長くはないと医者に云われたということ。
それを知って、わたくしの心に、一つの考えが浮かぶのは、自然なことであったと思います。
あの年頃の恋というものは、得てして、必ずしも美しいというだけのものではございません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます