第18話 S―骰子平原―FEOH



〈そもそもココにあるのは何なのかってハナシ〉


【S―骰子平原―FEOH】

異常性物質・心霊及び超常現象を指す。


登場人物紹介


PN・夕闇(男3X才)

俺だ。●●●●●県に住む。ピクシブで「夕闇」という名で数々の小説とゲームブックを投稿している。ファッションが個性的と言われる(黒のカーゴパンツに浴衣の帯をベルト代わりに使用。赤いポロシャツに黒の3角タイ(金色のアクセサリーで留めている)を着用。羽織着物をジャケットのように着ている。灰色のキャスケット帽を愛用している。長い黒髪をポニーテールにしている。俺自信も蒐集癖があり、ネット通販で様々なサイコロを集めたり、老舗ブランドのフィギュアを集めたりしている。口調はクレバーで丁寧語。

一人称はどんな時も「俺」

しばしば女子校生に間違われる。


PN・朝霧(女17才)

女子高生。何にでも興味を持つ好奇心と行動力、ずば抜けたスタイルの良さと女子力を持つ。子供っぽさと大人の落ち着いたクールさを併せ持つ。スケートボードで移動する事もある。アルビノで毛は白く目は赤い。青色のキュロット、黒色のシャツ、緑色の羽織、赤色の帽子を着ている。


PN・マクロベータ(男3X才)

俺と仲の良い派出所勤務の警察官。

熱く優しい真面目な警察官。


PN・ゆい(女、17才)

穏やかな女子校生。眼鏡をかけ、髪は三つ編み。今回も自然の中で不思議なモノを見つけた様子。


プロローグ

俺、夕闇が語る。何処かの山の頂上にある広大な平原には色もサイズも様々な6面体のサイコロが無数に散らばっているという。そして天気の良い日の夜には全てのサイコロが淡く光りるそうだ。


ストーリー

土曜日の13時、俺達は派出所の多目的室でテーブルを囲んで座っていた。

「えぇ!?あの〈命の骸〉から〈憧れは理解から最も遠い感情〉っていう怪異が現れて悲しい人々を救ったんですか!?(ゆい)」

「あんな優しい怪異、私はじめて見たよ。(朝霧)」

「水さすようで悪いが、優しさだけなら良いんだケド、〈憧れは理解から最も遠い感情〉の主食が人の〈自殺願望〉だからなー。(夕闇)」

「おい。(マクロベータ)」

「でも、その〈自殺願望〉を食べるだけじゃなく心のケアまでしていったんですよね?きっと優しい怪異なんですよ!(ゆい)」

「そうだよね。きっとそうだよ♪夕闇クン♪(朝霧)」

「そう信じよっか♪(夕闇)」

「おい!(マクロベータ)」

「ソレでゆいちゃん、今回はどんな体験をしたの?(朝霧)」

「***山の頂上で不思議な平原を見つけたんです♪(ゆい)」

「不思議な平原?詳しく聞きたいねぇ?(夕闇)」

「おい!!(マクロベータ)」

「なんだヨーー?さっきから、おいおい、おいおい、おいおい何怒ってんのさーー?(夕闇)」

「マクロベータさん、あんまり怒ってばかりいると血圧高くなりすぎて寿命が縮んでしまいますよ?(朝霧)」

マクロベータさんは拳を握りしめ

「オマエ等があげてるんだよ!オマエ等が!俺の!血圧を!(マクロベータ)」

すると朝霧はマクロベータさんの口にそっと何かを突っ込む。

「な……なんだ……?チョコレート?(マクロベータ)」

朝霧は穏やかな笑顔で

「あんまりカッカッ怒ってると血圧上がっちゃいますよ〜〜〜?だから、甘いモノでも食べて落ち着いて〜?ね?(朝霧)」

マクロベータさんは口に突っ込まれたチョコレートを咀嚼し、食べ終えると

「はぁ~。まったく……。本当に君は夕闇に似てきたな………。(マクロベータ)」

朝霧が顔を真っ青にして立ち尽くす。

「ソレで…ゆいクン。今度も何を見つけたから連れてって欲しいのかね?(マクロベータ)」

「は…はい。先週、自然観察の為に***山を散策してたんです。(ゆい)」

「〈命の骸〉の時といい、君はいわゆるアレなのかい?〈森ガール〉とかいう………?(マクロベータ)」

「ちょっと違うけど、ゆいちゃん昔から動物とか虫とか植物とか自然の風景が好きでよく自然観察をしに行ってるんだよね。(朝霧)」

「ほぉ、今どき珍しいな?その年で自然に感心を持つ若者は。(マクロベータ)」

「ソレで、***山で何があったんだい?(夕闇)」

「はい、***山の頂上に広大な平原があったんです。とても山の頂上とは思えない程、広大な平原でした。岩や木も余りありませんでした。でも何より不思議だったのが………………(ゆい)」

「何かあったのか?(マクロベータ)」

「至る所に沢山、サイコロが散らばっていたんです。サイズも色も様々でした。(ゆい)」

「サイコロが散らばってたー!?(マクロベータ)」

「ソレは………気になるネェ………。(夕闇)」

「あぁ~〜!わかるぅ~〜!夕闇クン、サイコロ好きだもんネーー♪(朝霧)」

「ソレもそうだけど、山頂に広大な平原があって、至る所に沢山サイコロが散らばってるなんて、気になるじゃないか。(夕闇)」

「確かに。ねぇ、ゆいちゃん?もう少しその平原について教えて?(朝霧)」

「ん~~。そういわれても………………。(ゆい)」

「もしかして、その散らばってたサイコロってのはサイコロに見えただけで、実際は黄鉄鉱っ事は………無いな。(マクロベータ)」

「おうてっこー?(朝霧)」

「鉱物の1つで自然と6面体の四角形で形成されるんだ。そして金色だから別名〈愚者の金〉っていわれてる。英名は〈パイライト〉(夕闇)」

「ほぅ、良く知ってるな。(マクロベータ)」

「そういえば夕闇クン、部屋に沢山化石や鉱物を整理して保管してあるコレクションいっぱい持ってるもんねぇ。(朝霧)」

「あ、でもわかります。私も化石や鉱物、生物や絶滅生物のフィギュアとか集めてますから♪(ゆい)」

「ありがとう♪ゆいちゃん♪そう、そして黄鉄鉱は金色。だけどゆいちゃんがその平原で見つけたサイコロ達の色は?(夕闇)」

俺の問にゆいちゃんをはじめ、朝霧とマクロベータさんもハッとした顔をする。

「金色だけじゃなくて、赤とか青とか、とにかく色とりどりでした。中には銀色や銅色みたいなメタリックカラーやクリアカラーのサイコロも沢山ありました。(ゆい)」

俺はスマホを操作して写真フォルダからいくつかのサイコロの写真をゆいちゃんに見せる。

「ちなみにゆいちゃん。そのサイコロはこの写真に写っているサイコロのどのタイプかな?(夕闇)」

ゆいちゃんは迷わず6面体のサイコロの写真を指指す。

「この8面体のサイコロはあった?(夕闇)」

「そういえば、ありませんでした。良くみるこの〈6面体のサイコロ〉ばかりでした。あと、サイズもバラバラで小さいモノだと小さな虫程のサイズから、大きいモノだと1m以上の大きさまでありました。(ゆい)」

俺は朝霧とマクロベータさんに8面体のサイコロの写真を見せる。

「この8面体のサイコロだったらソレこそ真相は地表に現れた鉱物って説が有力だったんだヨ。(夕闇)」

「あ、私ミネラルマルシェで化石を買いに行く時に鉱物のお店とかもよく見るケド、この8面体のサイコロみたいな鉱物はいろいろあった!(朝霧)」

「確かに。この8面体だったら、ソレこそ色も形も鉱物説が有力だったな。(マクロベータ)」

俺はしばし考え込む。

そして

「そうだ!今からその山頂の平原に行こうヨ♪確か***山は山頂まで道がちゃんと舗装されてたハズだから車で行けると思う。ゆいちゃん、その山頂までの道も舗装されてたよね?(夕闇)」

「はい、舗装されてました。あと右車線左車線両方ありました。(ゆい)」

「流石、ゆいちゃん♪見事な情報提供♪(朝霧)」

俺と朝霧は見合わせてから、マクロベータさんを見て

「だから、マクロベータさん!パトカーお願い♪(夕闇・朝霧)」

マクロベータさんは黙って俺と朝霧の頭を掴み

ガツンッ

とぶつけ合わせる。俺も朝霧も目を回して座り込む。

「痛〜〜〜い………………(朝霧・泣)」

「ナニすんだヨ〜〜〜(夕闇・泣)」

そんな俺達の声を無視してマクロベータさんは溜め息をついて

「オマエ等………パトカーは、タクシーじゃねぇんだぞ。(マクロベータ)」

「わかってますよ〜〜(朝霧)」

「乗せてってくれても良いじゃんかーーー!(夕闇)」

「あの、マクロベータさん?私からもお願いします。どうか連れてって下さい。(ゆい)」

「正義の警察官が日が沈んで暗くなりつつある山道を未成年が行くのを見逃すのかヨーーー?(夕闇)」

マクロベータさんは面倒くさそうに溜め息をつき、頭をボリボリとかく。

「はぁ~。わかった、わかった。乗せてくよ。ソレで良いんだろ?(マクロベータ)」

「おぉ~♪流石マクロベータさん♪ありがとう♪(夕闇)」

「ありがとうございます♪マクロベータさん♪(朝霧)」

「ありがとうございます。ソレではよろしくお願いします。(ゆい)」

マクロベータさんはやにわに俺と朝霧の頭を掴んで

ガツンッ

とぶつけ合わせる。

俺と朝霧は頭を抱えてへたり込む。

「用意すっから、待っとれ。(マクロベータ)」

「はい。(ゆい)」

「な………なんで………?(夕闇)」

「ひ………酷い………(朝霧・泣)」

「夕闇さん、朝ちゃん、大丈夫?(ゆい)」

ゆいちゃんが心配してくれた。優しいなぁ。ゆいちゃん………。

「おーい、また晩飯の用意がいるなら途中でコンビニ行くから安心しろよー(マクロベータ)」


マクロベータさんがパトカーの準備をしてくれ、俺達は乗る事にした。運転席はもちろんマクロベータさん。助手席は俺。そして後部座席は朝霧とゆいちゃん。途中コンビニで晩御飯等の準備をする。

「おいおい、***山も確か近くにある山だったろ?まだ明るいし、夕方には山頂に着くだろうから晩飯なんかいらんだろ?なんでまたご丁寧に晩飯の準備までするんだ?(マクロベータ)」

「夜にしか見れない光景があるとしたら?(夕闇)」

「は?(マクロベータ)」

「え?どういう事です?夜にしか見れない光景って?(ゆい)」

「あ!まさか夕闇クン、知ってたの?サイコロだらけの平原の事!?(朝霧)」

「実はそうなんだよネ。で、せっかくだし皆で見に行こうカナって。まだ明るい時間の平原と夜の平原。2つを観てみようっと思ってさ♪今日天気も良いから見る事出来ると思うヨ?(夕闇)」

「か〜〜〜!ホントにオマエは!タヌキだな!(マクロベータ)」

俺は両手を狐の形にして

「コーンコン♪(夕闇)」

と、おちゃらける。朝霧が溜め息をついて

「夕闇クン………ソレ、狐………。(朝霧)」

「でも、夕闇さんがそう言うって事は、きっと良い光景なんでしょうね。楽しみです。(ゆい)」

「やっぱり、ゆいちゃん素直で良い娘だナーーー♪期待して良いヨ?(夕闇)」


国道から住宅街に入り、そして***山へ入る。パトカーは***山の山道をなんなく進み、瞬くうちに山頂に辿り着く。時間は夕方16時40分か。俺達はパトカーから降りて目の前に広がる平原へ向かう。

何処までも広大な平原にサイズも色も様々なサイコロが無数に散りばめられた不思議な平原。

「うわぁ!凄い!本当にサイコロだ!?サイコロが沢山散らかってる!!(朝霧)」

「うむ、1つ1つ、それぞれの面に出目に色がついてるな。まさかこのサイコロ全て不法投棄された物か?(マクロベータ)」

「でも、あのサイコロは?もともと昔からあった感じですよ?(朝霧)」

朝霧が指指す方へマクロベータさんが見るとソコには1m程の大きさのサイコロがあった。そのサイコロは地面に少し埋まっていて、表面は少し苔生していた。

「なんだぁ?コレは?(マクロベータ)」

「私、あの時ココまでジックリ見てなかったから今気付いた。(ゆい)」

一方俺は大きなサイコロを見つける。大きさは2m程のサイコロとその周辺に同じ色の小さなサイコロが散らばっている。

「みんなーーー!来て来てーーー!(夕闇)」

俺は朝霧とマクロベータさん、ゆいちゃんを呼ぶ。

「どうかしたんですか?(ゆい)」

俺は2m程のサイコロのある部分を指差す。

「ホラ、このサイコロのココ見てよ?なんか不細工になってるでしょ?(夕闇)」

「あ、本当だ。なんか大きくダメージ受けてから再生したような、いびつな感じになってる。それになんかこの部分触り心地がガサガサしてるし………(朝霧)」

今度は足元を指差す。

「ソレじゃ、この辺の小さなサイコロ達は?(夕闇)」

「確かに、この2m程の大きさのサイコロと同じ色の小さなサイコロが沢山散らばってますね。なんか飛沫みたいに散らばってる?(ゆい)」

「なんだ?コレはいったい?(マクロベータ)」

俺は足元にある大きな石を拾い

「多分だけど、答えは………………(夕闇)」

俺は2m程の大きさのサイコロに先程拾い上げた石を思いっきり叩き付ける。

ガシャンッ!!

2m程の大きさのサイコロの角が砕け散った。

「やっぱりネ。ホラ、打ち付けたトコロ。いくつも四角形に切り取られたような感じになってる。(夕闇)」

「あぁ~。って事はさっきの変なトコロって、こんな風に傷付いたから再生してるんだね?(朝霧)」

「多分ネ。ソレに足元もう1度見てみてヨ?(夕闇)」

足元を見ると先程まで無かった小さなサイコロが沢山散らばっている。よく見ると小さなサイコロも全ての出目に色がついている。

「小さなサイコロが増えてる?(ゆい)」

「まさか、劈開か!?(マクロベータ)」

「そう。劈開。蛍石や黄鉄鉱みたいに割れると元の形と同じ形の小さな破片が出来たり、雲母みたいに剥がれたりする鉱物によく見られる現象。まぁ、ココのサイコロは元の形と同じ形の小さな破片になるどころか全ての出目にも同じ色がついてるケドね。その辺はわからないな。ホント。(夕闇)」

マクロベータさんは腕を組んで

「生物のように再生して、鉱物のように劈開するサイコロか。ワケがわからん。夕闇、ココのサイコロはいったいなんなんだ?(マクロベータ)」

「ゴメン………俺にもどうしてもわからないナ。(夕闇)」

俺はなんとか愛想笑いをする。

「でも夕闇クン、サイコロ好きだから前来た時持って帰ったりして?(朝霧)」

朝霧がイタズラした子供のような笑顔できく。俺はその問に

「あぁ~。持って帰ったヨ?ケド、次の日の朝には消えて無くなったんだヨ。(夕闇)」

「無くしたのか。(マクロベータ)」

「違うヨ。本当に目の前で消えて無くなったんだヨ。幽霊みたいにネ。(夕闇)」

「ますますなんなんだ?ココのサイコロは!?(マクロベータ)」

「そもそもココにあるサイコロは何なのかってハナシ。(夕闇)」

「本当によくわからないんですね。ココのサイコロ。(ゆい)」

俺はドヤ顔で

「でも、ココで遊んだり撮影したりする事は出来るヨ?ソレに、夜になると良い思い出になると思う。だから晩御飯の準備をしてきたんだから。さ♪夜になるまで、車で過ごそっか♪(夕闇)」

俺は皆を連れてパトカーに乗り込み、晩御飯を食べて過ごした。その間にも時は経ち夜になっていた。


満天の星空と月が寒気の澄んだ空気でより綺麗に見える。そして、平原でも澄んだ空気でより綺麗に見える光景が現れる。

「え!?サイコロが光ってるの!?(朝霧)」

「しかもなんか………脈動してるみたいな光り方しているな。おい夕闇アレはいったいなんなんだ?(マクロベータ)」

「この広大な平原に散らばる謎のサイコロは天気の良い日だと夜に発光するんだ。しかもただ発光するんじゃない。脈動するように光る。神秘的なモンでしょ?(夕闇)」

「凄く、幻想的で綺麗です。(ゆい)」


俺達はしばらくこの平原の不思議な光景を観ていた。空には満天の星空、平原には脈動するように光る無数のサイコロ。まるで星空の中にいるかのような感覚さえ感じる。

「オマエの言った通り、この光景は良い思い出になるな。(マクロベータ)」

「でしょ?(夕闇)」


夜20時、俺達はパトカーに乗り下山した。そしてそれぞれ家に帰った。


エピローグ

居間で俺と朝霧はホットココアを飲んでくつろいでいた。

「ねぇ夕闇クン?結局あのサイコロはなんだったんだろうね?生物のように再生して脈動するように光って、鉱物の特徴もありながら破片もちゃんと出目に色がついてて、平原から持ち去られると朝には消えて無くなる。本当に不思議だよね?(朝霧)」

「もしかしたら、あのサイコロもだけど、あの場所も不思議なんだよナ〜〜〜。(夕闇)」

「なんで?(朝霧)」

「だって、天気の良い日の夜にアレだけの数のサイコロが脈動するように光ってたら、夜間飛んでいる飛行機とかから目撃されてたちまち話題になるだろ?なのにあの平原は未だに知る人ぞ知るって場所だし。(夕闇)」

「あ………。言われてみれば………………!?(朝霧)」

「本当になんなんだろうナ?あの散らばっているサイコロも、あの平原も。(夕闇)」


***山の山頂の平原に散らばるサイコロは今も天気の良い日の夜になると光る。



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