第10話 N―時空ヶ沼―THORN



〈今日は5年に一度の一ヶ月が起こる年だ。赤い満月の夜が楽しみだ〉


【N―時空ヶ沼―THORN】

地質学・生物学・古代史を指す。


登場人物紹介


PN・夕闇(男3X才)

俺だ。●●●●●県に住む。ピクシブで「夕闇」という名で数々の小説とゲームブックを投稿している。ファッションが個性的と言われる(黒のカーゴパンツに浴衣の帯をベルト代わりに使用。赤いポロシャツに黒の3角タイ(金色のアクセサリーで留めている)を着用。羽織着物をジャケットのように着ている。灰色のキャスケット帽を愛用している。長い黒髪をポニーテールにしている。俺自信も蒐集癖があり、ネット通販で様々なサイコロを集めたり、老舗ブランドのフィギュアを集めたりしている。口調はクレバーで丁寧語。

一人称はどんな時も「俺」

しばしば女子校生に間違われる。


PN・朝霧(女17才)

女子高生。何にでも興味を持つ好奇心と行動力、ずば抜けたスタイルの良さと女子力を持つ。子供っぽさと大人の落ち着いたクールさを併せ持つ。スケートボードで移動する事もある。アルビノで毛は白く目は赤い。青色のキュロット、黒色のシャツ、緑色の羽織、赤色の帽子を着ている。


PN・裏垢次郎(男、19才)

釣り好きの大学生で、生物学を専攻している。日焼けしていてマリンスポーツイケメンに見えるが、寡黙で落ち着いた性格。一人称は「俺」。


プロローグ

俺、夕闇が語る。 アナタは5年に1度の自然の怪奇現象を御存知だろうか?自然はまだまだ解明されていない部分が数多くあります。未確認生物とかが良い例ですね。さて、今回はそういう話です。


ストーリー

土曜日の午後、俺と朝霧は山の大きな池のある公園の遊歩道を歩いていた。紅葉の落ち葉が風に舞い実に良い行楽日和だ。

「近くの公園も紅葉になると良い散歩コースになるな。本を持ってきて読書も良さそうだな。(夕闇)」

「でも、年々秋短くなってるよね………。(朝霧)」

「ソレ、言うなよ………。(夕闇)」

喋りながら秋の景色を見ながら散策しているとあずま屋に近づいていた。

「なぁ朝霧、ココで休憩しようゼ?(夕闇)」

「そうだね♪(朝霧)」

俺と朝霧はあずま屋に入る。小さいテーブルに椅子がある。そして、先客がいた。先客は俺を見るなり

「夕闇さん。こんにちは。」

挨拶をしてきた。日焼けをしている若い男性だ。ビーチでビキニのお姉さんをナンパしてそうな印象の見た目だが、俺は彼がそんな人間では無い事を知っている。

「お♪裏垢次郎クン。こんにちは♪(夕闇)」

「こ、こんにちは。(朝霧)」

朝霧が挨拶をすると俺の後に隠れる。あぁ、見た目の印象って大切だな〜。裏垢次郎クンも複雑な表情をしている。

「夕闇さん、そちらの方は………?(裏垢次郎)」

「あぁ、この娘は………ってコラ朝霧?ちゃんと自己紹介しなきゃだろ?大丈夫だから♪彼、見た目とは裏腹に僧みたいな人だから♪ナンパとか絶対しないよ♪(夕闇)」

あぁ、裏腹次郎クンの表情が暗くなる。ごめんヨ?

「あ、朝霧です。(朝霧)」

「はじめまして。俺は艦湖大学3年のPN・裏垢次郎です。よろしく。(裏垢次郎)」

「艦娘大学?(朝霧)」

「あぁ。艦湖大学は海や湖、水に関する事に特化した大学で、彼は世界中の海や淡水の水産物のエキスパートなんだ。確か、前はアメリカザリガニの幼体を集めて泥抜きさせて〈甘辛煮〉を作る研究をしているっていってたケド………(夕闇)」

「〈艦隊これくしょん〉じゃないんですね。ソレにしても裏垢次郎さんって自分でも外来生物を使った新作料理の研究や開発もしてるんですね♪凄いなぁ。(朝霧)」

「………まぁ、俺からしたら〈アメリカザリガニの幼体の甘辛煮〉は食べれたモノじゃなかったケドね。仕方無くバス釣りの餌にしてもバスも鯉も雷魚も避けるし♪ちなみに俺も良くプレイしてるね。〈艦隊これくしょん〉。そういえば俺通学中たまに君を見かけるケド、君も学生さんかな?(裏垢次郎)」

「はい。聖アバズレ女学院の高校2年生です♪(朝霧)」

「え?君あの3大女学院の1つって言われてるアバズレの娘なの!?凄いなぁ!!才能の塊じゃないか!?(裏垢次郎)」

「え?そうなの?コイツ恐竜好きって言ってよく恐竜のフィギュアとか玩具をドサ買いするケド、その中に普通にゴジラ怪獣とかウルトラ怪獣混ざってるゼ?(夕闇)」

「え…?恐竜と怪獣一緒にしてるの?(裏垢次郎)」

「駄目なんですか!!?(朝霧)」

子供っぽく怒る朝霧に俺と裏垢次郎クンは笑った。


朝霧はあずま屋のテーブルに缶コーヒーを3本と板チョコレートを3枚を出す。

「裏垢次郎さんもどうぞ♪(朝霧)」

「ありがとう。(裏垢次郎)」

俺達はそれぞれ缶コーヒーと板チョコレートを口にする。

「実は今日、夕闇さん家に行こうと思ってたんです。(裏垢次郎)」

「ほぉ?進路相談カナ♪(夕闇)」

裏垢次郎クンが少し笑いながら

「違いますよ♪実は最近この山の竹林でとんでもないモノを見つけたんです。(裏垢次郎)」

「とんでもないモノ?(夕闇)」

「3日前の夜の事です。少し気分転換でこの山に来たんです。その日は快晴で雲一つ無い夜でしたが赤い満月の夜でした。俺はなんとなく赤い満月を見ながら山を散策してました。すると竹林から何かが泳ぐ音がしたんです。気になって音のする方へ行ったんです。すると竹林の奥には湖沼が出来ていたんです。水はとても澄んでいました。ですが、それ以上に驚く事があったんです。(裏垢次郎)」

「何があったんですか?(朝霧)」

俺はもしやと思い素早くスマホの写真フォルダを開きある写真をピックアップする。

「古代魚がいたんです。(裏垢次郎)」

「古代魚って、アロワナとかポリプテルスとかですか?(朝霧)」

「多分、いや…間違い無くもっと古い古代魚だったよ。あの魚達は図鑑や化石でしか見た事がない。あの魚達はどう見ても古代デボン期の魚でした。(裏垢次郎)」

「古代デボン期の魚!?そんな魚が今の魚と泳いでたんですか?(朝霧)」

「いや、その湖沼には逆に現世の魚はいなかった。(裏垢次郎)」

「裏垢次郎クン。その古代デボン期の魚って、こんなのだった?(夕闇)」

俺はあらかじめピックアップしておいたスマホの写真フォルダを見せる。俺がピックアップした写真。ソレは財団Kが製作した古代魚のフィギュア〈ボスリオレピス〉〈プテラスピス〉〈ヘミキクラスピス〉の3枚だ。

「夕闇クン………。こんな時にフィギュアの写真………(朝霧)」

裏垢次郎クンは目を見開き

「こういう魚達がいたんですよ!!図鑑や化石でしか見られないこういう古代魚達が!普通に泳いでたんです!!(裏垢次郎)」

「えぇー!!?(朝霧)」

「あのさ、今晩この山のその竹林に皆で行こっか♪(夕闇)」

「え?(朝霧・裏垢次郎)」

「良いじゃ〜ん♪い〜こ〜お〜よ〜♪ソレに〜♡(夕闇)」

「ソレに?(裏垢次郎)」

「まだ見れるかもヨ?確か裏垢次郎クン、釣り好きだよネ?ちょっとした釣りのセット用意して行こうヨ♪(夕闇)」

「わかりました。夕闇さんがそう言うのでしたら。(裏垢次郎)」

「やったー♪ソレじゃ早速ちょっと釣具屋行こう!タモ用意しなきゃ♪(夕闇)」

「タモなら俺持ってますよ。夕闇さんと朝霧さんにもお貸し出来ます。(裏垢次郎)」

「ありがとう♪ソレじゃ夜になるまで裏垢次郎クンの家にお邪魔しても良いかい?(夕闇)」

「はい。どうぞ、いらして下さい。(裏垢次郎)」

「裏垢次郎さん、いきなりすいません。(朝霧)」

「あぁ、良いよ。ソレに夕闇さんがああ言うんだ。楽しみだよ。(裏垢次郎)」


俺達は裏垢次郎クンの家で時間を過ごす事にした。

裏垢次郎クンがタモ網をいくつか持ってくる。

「コレとコレで良いんですか?ソレも3本づつ。ソレフック棒も3本。(裏垢次郎)」

「とりあえずコレで準備は大丈夫かな♪(夕闇)」

「でも、何で海…しかも船釣り用のタモなの?(朝霧)」

「船釣りって事は勢いの良い魚を対象にしているからね。ブリとかカツオを狙う人達もいる。だから船釣り用のタモ網は強いんだヨ♪(夕闇)」

「でも私と裏垢次郎さんとで調べたけど、その湖沼にいるっていう古代デボン期の魚ってどれも鯉と同じか少し大きい位だよ?(朝霧)」

「でもカドがあるからな〜。ゴツゴツしてタモ網の負担もあるだろうし。(夕闇)」

「なるほど。ちなみに何で釣り竿は駄目なんです?(裏垢次郎)」

「意味無いから♪(夕闇)」

「意味が無い?(朝霧・裏垢次郎)」

「そ♪意味が無いの♡さっき2人で調べたんだよネ?古代デボン期の魚について。(夕闇)」

「え…えぇ。(裏垢次郎)」

「古代デボン期の魚って3種類いるんだケド、まずは軟骨魚類。鮫と言っても比較的小さいからタモ網で大丈夫。問題は後の2種類。無顎類。口開けっ放しの連中だ。あまり釣り針は掛かりにくい。次に板皮類。アイツ等の口の構造はフグやカワハギと対して変わらない。普通に糸や針を噛みちぎる可能性が高い。逆に丈夫なタモ網だと3種類全てに対応出来るだろうから♪お?もう行こっか♪(夕闇)」

俺達は網を持って裏垢次郎クンの家を出る。

そして裏垢次郎クンの車に網を乗せて車に乗り込む。

「そういえば、なんでまだ見られる可能性がまだあるの?(朝霧)」

「最近、月が真っ赤だった日があったろ?この現象は5年に1度赤い満月の夜に発生して1ヶ月あり続ける。実は俺5年前にも同じ場所で同じ現象を見て、同じ湖沼を見て、同じ古代魚達を見たんだヨ♪(夕闇)」

「夕闇クンは知ってたの?(朝霧)」

「まぁネ♪だから裏垢次郎クンの話を聞いてもしやと思ったんだ。(夕闇)」


裏垢次郎クンが運転する車はあの公園がある山の少し奥にある竹林の近くで停まる。

「この竹林です。(裏垢次郎)」

「やっぱりネ。よし、みんな気をつけて行こう♪(夕闇)」


俺達は竹林を懐中電灯で照らしながら進む。しばらくすると先の方の地面が懐中電灯の光を反射する。来た。浅く広い5年に1度だけ現れる湖沼だ。

「ココです!俺が見たのはこの湖沼ですよ!(裏垢次郎)」

朝霧が湖沼を覗き込む。

「うわぁ、本当に綺麗な水!ねぇ夕闇クン。この湖沼って夜しか現れないの?(朝霧)」

「湖沼自体はある!!(夕闇)」

「?(朝霧・裏垢次郎)」

パシャパシャパシャ

何かが泳ぐ音がする。俺達は懐中電灯で照らした。ソコには古代デボン期の古代魚達が泳いでいた。

「そうです!あの日もこんな魚達が泳いでたんです!(裏垢次郎)」

「うわぁ♪本当に図鑑や化石でしか見た事のない古代魚達だ〜♪(朝霧)」

「ソレじゃ少し捕まえて見るか♪(夕闇)」

「はい!(裏垢次郎)」

「お〜〜♪(朝霧)」

俺達はタモ網を使い3匹の魚を捕まえる。

「割と簡単に捕まえれたね?(朝霧)」

「調べたからわかると思うケド、コイツ等堅い装甲のおかげで体が重くてあまり上手く泳げないんだよ。だから底を這うようにしか泳げないんだよ。しかも浅いから更に泳ぎにくいときた。(夕闇)」

「な…なるほど。(裏垢次郎)」

俺達は捕まえた魚達を並べる。


釣果?

夕闇→ヘミキクラスピス・ボスリオレピス

朝霧→サカバンバスピス・ドレパナピス

裏垢次郎→フルカカウダ・プテラスピス


「本当にデボン期の魚達だ〜♡連れて帰って良い?(朝霧)」

「ダメ。ソレにどう飼育するんだヨ?(夕闇)」

「あ………。そうだよね………。(朝霧)」

「ソレじゃどうするんです?(裏垢次郎)」

俺は自分が捕まえた(魚達をスマホで撮影しながら

「とりあえず観察と撮影。ソレから後はリリースだ。(夕闇)」

朝霧と裏垢次郎クンは自分が捕まえた古代魚を撮影する。そしてしばらく観察する。

「よし。コイツ等まだ元気だな♪ソレじゃ帰してやるぞ~♪(夕闇)」

俺達は捕まえた古代魚達を湖沼に帰した。古代魚達は這うように泳いでいく。

「ねぇ夕闇クン。あのコ達は夜でなくてもいるかな?(朝霧)」

「ソレなんだが、アイツ等夜にしか現れないんだ。明るい時間に調べても悪天候の昼に調べてもいなかった。(夕闇)」

「そうなんだ〜〜〜。(朝霧)」

「だけど湖沼はある。と?(裏垢次郎)」

「ソユコト♪(夕闇)」

朝霧が突如ハッとした顔になって

「ねぇ?夕闇クン?もしかして〈あのコ〉もいるの?あのデボン期最大最強の〈あのコ〉!いたら大変なんじゃ………(朝霧)」

「デボン期最大最強の〈あのコ〉?(裏垢次郎)」

俺はスマホで該当する古代魚のフィギュアの写真を見せて

「ダンクルオステウス?(夕闇)」

「そのコーーーーー!!!(朝霧)」

朝霧が悲鳴をあげ、裏垢次郎クンが懐中電灯で周囲を照らす。

「ハァ。落ち着いて?とりあえず落ち着いて耳を澄ましてごらんヨ?(夕闇)」

朝霧と裏垢次郎クンが耳を澄ませる。暗くて静かな夜の竹林だ。たまにパシャパシャ水の音がする。

「静かなモンでしょ?〈イルカが浅瀬で暴れてるような音〉する?(夕闇)」

「て…事は?(裏垢次郎)」

「いないんだヨ。そもそもこの湖沼にいるのは1m未満の小さい古代魚しかいないんだヨ。(夕闇)」

朝霧と裏垢次郎クンが落ち着いて懐中電灯で湖沼を照らし観察する。

「そういえば………(裏垢次郎)」

「何で?(朝霧)」

「わからん。(夕闇)」

「えぇ〜〜〜………。(朝霧・裏垢次郎)」

俺達はしばらく静かに湖沼を観察する。

「帰ろっか♪(夕闇)」

「うん♪(朝霧)」

「そうですね。(裏垢次郎)」

俺達は湖沼を後にした。


5年に1度だけ現世の生物になれる古代魚達に軽くサヨナラの挨拶をして。


エピローグ

自宅にて、俺と朝霧は夕食を食べ、入浴を終え、くつろいでいた。俺はテーブルにデボン紀の古代魚「ボスリオレピス」、「ヘミキクラスピス」、「プテラスピス」のフィギュアを並べて、鑑賞する。

「凄かったね。でも、なんであのコ達は夜にしか現れないんだろう?(朝霧)」

「時空の歪みにしちゃ規則正しいモンなぁ。(夕闇)」

「見て良い?(朝霧)」

「良いヨ。(夕闇)」

朝霧はテーブルに並べた古代魚のフィギュアの1つを手に乗せ

「可愛かったね。あのコ達。(朝霧)」

「確かに♪(夕闇)」


世の中にはわからない事が山のようにある。あの竹林の幻の湖沼もきっとその1つなのだろう。

自然は不思議がいっぱいだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る