第9話 N―眠れる大地―KEN
〈誰もが歴史ある地層の上に住んでいると思ってた〉
【N―眠れる大地―KEN】
地質学・生物学・古代史・地域・風習文化・未知の生物の存在を指す。
登場人物紹介
PN・夕闇(男3X才)
俺だ。●●●●●県に住む。ピクシブで「夕闇」という名で数々の小説とゲームブックを投稿している。ファッションが個性的と言われる(黒のカーゴパンツに浴衣の帯をベルト代わりに使用。赤いポロシャツに黒の3角タイ(金色のアクセサリーで留めている)を着用。羽織着物をジャケットのように着ている。灰色のキャスケット帽を愛用している。長い黒髪をポニーテールにしている。俺自信も蒐集癖があり、ネット通販で様々なサイコロを集めたり、老舗ブランドのフィギュアを集めたりしている。口調はクレバーで丁寧語。
一人称はどんな時も「俺」
しばしば女子校生に間違われる。
PN・朝霧(女17才)
女子高生。何にでも興味を持つ好奇心と行動力、ずば抜けたスタイルの良さと女子力を持つ。子供っぽさと大人の落ち着いたクールさを併せ持つ。スケートボードで移動する事もある。アルビノで毛は白く目は赤い。青色のキュロット、黒色のシャツ、緑色の羽織、赤色の帽子を着ている。
PN・大ゴブリン(男74才)
地質調査員にして、温泉掘りを生業としている大地のエキスパート。豪快な性格。その見た目から大いなるゴブリン〈大ゴブリン〉と呼ばれるうちに自分のPNにしてしまう程、懐が深い。一人称は俺。夕闇の事を〈小僧〉と呼ぶ。
プロローグ
俺、夕闇が語る。アナタの周りにはどんな土地がありますか?農業に適した土地、建築に適した土地、地下水脈がある土地、様々ありますね。では「あまり地質調査が出来ない土地」があるとしたらどんな土地を思い浮かべますか?
ストーリー
平日の午後、俺と朝霧はカラオケ喫茶店〈破滅の詩〉でくつろいでいた。俺は漫画を読みながら紅茶を飲み、朝霧は恐竜の本(児童書)を飲みながら紅茶を飲み、皿のスコーンの熾烈な取り合いをしながらくつろいでいた。
ペチッペチッペチッペチッペチッペチッ
互いの手を叩き合う音が鳴り響く。
「夕闇クン?少し食べ過ぎだよ?少しは私にもちょうだい?(朝霧)」
「おかしいな?朝霧が良く食ってる気がしたケド?俺にも食べさせてくれよ?(夕闇)」
お互い笑顔で見つめ合う。
ペチッペチッペチッペチッペチッペチッ
互いの手を叩き合う音が鳴り響く。
しかし、唐突にスコーンの争奪戦に終止符が打たれる。
バッチーンッ!!
「ギィヤァーーーーーーー!!?(夕闇)」
いきなり背中を叩かれ前に倒れ込む。朝霧は素早くスコーンが盛られた皿を自分の方へ引き寄せ
「ゆ!!夕闇クン!?大丈夫!?(朝霧)」
と声をかけてくれる。口をモグモグしながら。
あまりの痛みに悶えていると。聞き覚えのある大きな笑い声が響く。俺は痛みに震えながら振り返ると、そこには巨人のように大きなゴブリン風の大男が豪快に笑っていた。
「おぅ!小僧!元気か!?(大男)」
「だ…大ゴブリンさん………。久しぶりですね………。相変わらず凄いパワー………。(夕闇)」
「おぅ!山の男はコレぐらい力がないとな!!(大ゴブリン)」
ただ絵面を考えた方が良い。はたから見たら大男が女性の背中をぶっ叩いて大笑いしているヤバい光景に見えかねない。
「えっと、夕闇クンの知り合いですか?わ…私、夕闇クンと一緒に暮らしている朝霧といいます。(朝霧)」
大ゴブリンさんは目を見開いて
「おお!!嬢ちゃん朝霧っていうのかい!!俺はPN・大ゴブリンっていうんだ!よろしくな!って、さっき嬢ちゃん、小僧と一緒に暮らしてるって言ってたな?(大ゴブリン)」
ズイッと大ゴブリンさんが朝霧に詰め寄る。特徴的なゴーヤのような大きい鼻の先が朝霧の眉間にあたる。
「は…はい。よろしくお願いします。(朝霧)」
大ゴブリンさんはグローブのような大きい手で自分の顔を覆う。え…、泣いてネ?
「そうか………。小僧も遂に女性と同棲するようになったか………。小僧が嬢ちゃんみたいなナリしてるから、心配してたんだよ…。俺は………。そうか…。そうか。(大ゴブリン)」
「大ゴブリンさん…?確かに俺と朝霧は同居してるケド、大ゴブリンさんが思ってるような関係じゃないヨ?(夕闇)」
「そ…そうですそうです。えぇっと、なんていうか、その、カレーに福神漬けみたいな感じです?(朝霧)」
「ソレじゃ御飯は!?(夕闇)」
「なんだヨ!オマエ等そういう関係じゃないのかよ!だったらそういう関係にさっさとなっとけ!ガハハハハハハッ!!(大ゴブリン)」
相変わらず豪快な人だな、大ゴブリンさん。
大ゴブリンさんも俺達と同じテーブルに座る。俺達は改めて注文をした。俺と朝霧はスコーンとアイスティー。大ゴブリンさんは特盛カレーとアイスコーヒーを注文した。
そして注文した商品がそれぞれの前に並べられる。俺と朝霧の前にはアイスティーとスコーン1皿。大ゴブリンさんの前には小さなテーブルのような大きさの皿に盛られたカレーライスとアイスコーヒーの入ったジョッキがドンッドンッと置かれる。デカい。ソレでも大ゴブリンさんの前ではちょうど良く見える。
俺達は商品を食べながら話し合う。
「ソレにしても今回随分長かったネ?どんな事してたの?(夕闇)」
「おぅ!今回俺はあまり地質調査がされてない土地へ行ったんだ!(大ゴブリン)」
「地質調査がされてない土地?ですか?地面を少し掘ったら化石とか遺物が頻繁に出てくるとかですか?ソレともまとまった全身の化石とか遺跡が見つかったとかですか?(朝霧)」
「ガハハハッ!!そんなのが出たら面白いんだがな!!見つかったら今頃オマエ等に小さな化石やら遺物を土産にしてるんだけどな!ちょっと違うんだ!(大ゴブリン)」
「違うって?(夕闇)」
「あぁ、確かにその土地はあまり地質調査がされてない。が、明治以前から発展してきた町でもあるんだ。今でも普通に活気のある町だしな。だがどうも地下に広大な地下空間があるみたいでな。俺はその地下空間へ潜ったんだ!だが、地下空間だけじゃなく土地そのものが特殊な感じだったんだ。その土地の調査記録としてスマホで写真をいくつか撮影したから見てくれよ。(大ゴブリン)」
そう言って大ゴブリンさんはiPADを取り出し、写真フォルダを見せてくれた。
〈赤茶色く蛇腹模様の天井の洞窟。〉
〈木々に混じって棘だらけの柱がある。〉
〈地上の写真。地下から2本のワイヤーが遥か空へと伸びている。〉
「なんだか、ゲームのダンジョンみたいですね?(朝霧)」
「あん?なんだったか………、ソレはアレか?ポケットクエストに出てくる洞窟みたいなモンか?(大ゴブリン)」
「大ゴブリンさん、ポケットモンスターとドラゴンクエストが混ざってるヨ。(夕闇)」
「似たようなモンだろ?嫁や娘共は何が楽しいのかスマホに似たゲーム機とかでよくそういうの遊んでるけどよ、俺にはよくわからん!モンスターを真面目に殺してるかと思えばモンスターに真面目に玉投げつけて捕まえてるしよぅ!?モンスターを真面目に効率良く殺す策たててるかと思えばモンスターを可愛いとか言いやがる。遊びなんざベーゴマとけん玉とメンコ、後は野球出来るモン持ってたら良いだろ!?昔娘が幼稚園の頃に「ポケモンのフィギュアが欲しい」って頼まれたからウルトラ怪獣のソフビ買ってやったら何か泣くしよぅ~。(大ゴブリン)」
大ゴブリンさんが少しイライラしながら言う。
大ゴブリンさん、ソコまで遊びとかで古い認識止まりなのまずいヨ?
「ちなみにどんなウルトラ怪獣のソフビを買ってあげたんですか?(朝霧)」
「おぅ!古代怪獣ゴモラだ!(大ゴブリン)」
「え〜!!そんな可愛いの貰って、泣くなんて………!!私なら喜んでますよ!!(朝霧)」
「お!?わかるか!?嬢ちゃん♪(大ゴブリン)」
「はい♪可愛いですよね♪私も持ってますよ♪(朝霧)」
「ほ〜♪嬢ちゃん、怪獣好きなのか〜。ほ〜♪(大ゴブリン)」
「朝霧は恐竜が大好きだからな~。だから恐竜みたいなウルトラ怪獣やゴジラ怪獣なんかのソフビとかもいっぱい集めてんだヨ。凄いゼ?朝霧の部屋。沢山の恐竜の人形に混じって普通にウルトラ怪獣やゴジラ怪獣の人形も並んでるから。(夕闇)」
「あへ〜〜〜♡(朝霧)」
「………嬢ちゃん………。(大ゴブリン)」
「だいぶ話それたケド、なんか本当に現実離れした土地だねぇ。鬱蒼とした森がある地下空間のある土地だなんて。この町の若い人達もソロキャンプしたりするのかな?(夕闇)」
「あぁ、ソレなんだが、無いな。スゲェ臭いんだよ。地質調査で無けりゃ二度と行きたくないな!実は匂いが移っちまってよ、完全に匂いが消えるまで3週間かかっちまった。もう二度と行きたくないぜ!!(大ゴブリン)」
「どんな匂いなのさ!?(夕闇)」
「この一言だな。あの匂いはゴキブリ特有のえげつない匂いだ!!わかるだろ?(大ゴブリン)」
「ゴキブリ臭全開の地下空間、地獄ですね………(朝霧)」
「あのさ、もしかして天井…脈動みたいな感じで動いてた?(夕闇)」
「おぅ!実はソレがスゲェ気になってよ!オメェから何か意見聞きたくて今日探してたんだ。そしたらココで見つけてよぉ!(大ゴブリン)」
「地質調査があまり出来ない理由、何かわかったかも………。(夕闇)」
「マジか!?(大ゴブリン)」
「どういう事?(朝霧)」
「聞いた事があるんだヨ。遥か石炭紀初期に産まれ、何度も大量絶滅を掻い潜り巨大化して、エネルギー消費を抑えるべく文字通り永遠の眠りに着いた古代節足動物の話を。その巨大な古代節足動物の背中に土とかが堆積して背中に大地が出来、その大地に知らずに人々が生活を始め文明を築き今や巨大な町になり、下には樹海が出来、生態系が出来上がったって言われている。(夕闇)」
「おいおいおい!?まさか!?(大ゴブリン)」
「当然、今の技術で地質調査をしようモノなら痛みで眠りから目が覚め活動するだろうネ。その上に暮らしている存在の事等御構い無しで。つまり災害が起きるんだヨ。(夕闇)」
「今度、あの町の連中に警告しておくよ。(大ゴブリン)」
場の空気が静まる。
「ねぇ、夕闇クン。その巨大化した古代節足動物ってどんな生物なの?(朝霧)」
「正直、今あんまり言いたく無いんだケドな〜。知りたい?(夕闇)」
「知りたい!!(朝霧)」
「教えろ(大ゴブリン)」
「じゃ、言うネ?ゴキブリだよ。大怪獣並みに巨大化したゴキブリ。(夕闇)」
「だからあんな匂いしてたのかよ………!!(大ゴブリン)」
「大怪獣並みの巨大なゴキブリ……………(朝霧)」
バタンッ
朝霧がその場で気絶する。
「嬢ちゃん!!?(大ゴブリン)」
「あ〜あ、何で詳しく想像するかな〜!?(夕闇)」
俺達は気絶した朝霧の解法をする事になった。
夕方、カラオケ喫茶店を出て、互いに帰路につく。大ゴブリンさんは俺達に
「今日はありがとな!!ありがとよ!!(大ゴブリン)」
と言って雷のような大きな笑い声と共に帰っていく。
周りを見ると周囲がオレンジ色に染まっている。オレンジ色に染まった道路には人間離れした巨大な影が差していた。
エピローグ
自宅にて、俺は朝霧に背中を見てもらっていた。
「夕闇クン…凄いよ!!背中全部赤くなってる。(朝霧)」
「うぅ〜。やっぱりな〜。今もヤケドか何かの感じだったからな~。暑くて暑くてたまらないよ!(夕闇)」
しばらく俺は背中の痛みにのたうち回っていた。
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