第16話 この世には、生かしちゃおけねえ悪がいる
芝浦がおれに問う。
「おい一応聞いておくが、
「さすがにないっス……」
「じゃ、しょうがねえな」
芝浦は刀を肩にかついで前方の
まさに爆弾的な広範囲攻撃グッズがほしいシーンだが、無いものは無い。
このままやるしかないようだ。
いざ、突撃。
そうおれたちが身がまえた時、
「ふぁ~あ、なんかうるせえなあ。なんかあったのかゾンビどもぉ?」
あきらかに寝起きのその男は、生きている人間にもかかわらず大量のゾンビの中で平然としていた。
この男がネクロス。ゾンビをあやつる特殊能力をもつ男。
ネクロスは地上に立っているおれたちの姿に気づいた。
「ネクロスてめえ、ずいぶんとご
怒り
「あっれえ? アンタは、アンタはえっと……ゴメェン名前わすれちったぁ。なんて言ったっけぇギャハハハハハ!」
「チッ!」
二階からニヤニヤ笑いながら見下ろすネクロス。
地上から
オーケー。
このやり取りだけでおれはネクロスが嫌いになった。
友好的な解決なんて確実にのぞめないってことだけはわかったぜ。
だがそれはそれとして。おれは脳内コンピューター・ノヴァに語りかける。
「ノヴァ、あいつはゲームのプレイヤーなのか?」
『……』
めずらしく数秒の待ち時間があった。
『申し訳ありません、現時点では不明です。通信を
「えー、この状況でぇ?」
一触即発の空気がただよっているというのに、そんな空気読めないダメ人間として行動しなけりゃいかんとは。やれやれ。
おれは覚悟を決めて大声で呼びかけた。
「あっあのー! ネクロスさーん! ちょっといいですかあー!?」
「あ?」
その場にいる全員の視線がおれに
なんでゾンビまでおれを見る!? お前らはよそ見してればいいんだよ!
くそっ、なんだかやけに恥ずかしいぜ!
「あのっ、おれは! 頭の中にノヴァっていうコンピューターを飼っているプレイヤーなんです! あなたもひょっとしてプレイヤーさんとかだったりしませんかー!!」
しーん……。
全員の注目を浴びるなか、地獄のような
そして、ビミョーな顔でネクロスが答える。
「……なに言ってんだテメー? やべークスリでもキメてんのか?」
『再度通信を
オイオイ殺して
それはちょっとやりたくないなー、死んだあとじゃあんまり意味ないし。
ノヴァとの会話に気を取られているおれを見ていたネクロスは、何かに気づいた様子だった。
「待てよ。もしかしてテメーは……」
ネクロスはなにか重要そうなことを言おうとしていたが、芝浦がそれをさえぎった。
「くだらねえことガタガタぬかしてんじゃねえ! 俺は貴様をぶった切る! それだけのためにこんな所まで来たんだからよ!」
彼のまわりの空気が
「くっ……」
ネクロスは芝浦の怒気にあてられてのけぞった。
どうやったって芝浦の攻撃は届きそうもない距離なのに、それでも彼の
「うるせえんだよ朝っぱらから! おい、そのオヤジを殺せゾンビども!」
恐怖におびえていても、やつはこの空間の支配者だ。その戦力は
圧倒的な戦力がまるで
「紫織ちゃん全力でいくぞ! 死んだら元も子もねえ!」
「はいっ!」
軽機関銃とハンドガンが火を噴く。
真正面から
だが敵は恐怖を知らないゾンビ軍団。
味方が次々と倒れるのも気にせず、やつらは左右から押し寄せてくる。
おれたちはジワジワと
「横はまかせる、ついて来い!」
芝浦が前へ飛び出した。
「うおおおおー!!」
このおっさんマジで
正面以外はおれと紫織が射撃で近づかせない。
まだ芝浦の体力も、おれたちの弾丸も残っている。
これなら本当に突破できそうだぞ―――。
しかし。
無双状態だった芝浦の歩みが、なぜかいきなり止まった。
目に前に立ちはだかるのは女のゾンビと少年のゾンビ。
「あ、あ―――」
「どうしたんです!?」
芝浦の刃がふるえていた。
もっと強そうなゾンビを楽々とたおしていたくせに、目の前の女子供を斬れない様子だった。
頭上からネクロスの笑い声がふってくる。
「ヒッヒッヒッヒ! そりゃ斬れねえよなあ
このクサレ
さっきは「名前忘れた」とか言っていたくせに、実はしっかり覚えてんじゃねえか!
目の前にいる二体のゾンビは芝浦の妻と子供。
ネクロスの野郎はこんな時の切り札として、二人を建物の奥で温存していやがったんだ。
芝浦が異常なほど激しくネクロスを憎む理由がこの二人なのだと、おれは気づかされた。
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