第17話 最期の願い
おっさんは仲間を大勢殺されたからって口では言っていたが、それは半分真実で半分は
愛する家族を殺されたから。
それが本当の理由。
二体のゾンビが芝浦に襲いかかる。
自分に飛びついてくる妻と子を切り捨てるわけにもいかず。
抵抗らしい抵抗もできないまましがみつかれて、肩と太ももに
「ぐああああっ!」
大量の失血が悲鳴とともにあふれだす。
まずいぞ! 重要な血管が傷ついちまったようだ!
おれは乱暴に二体のゾンビを引きはがし、そして銃口をむける。
おっさんの家族。
なんとも思わないわけじゃない。
だけどおれまで甘い考えでいたら全滅しちまう!
タタタタタタタッ!
大量の弾丸をその身に受けて、奥さんと子供は動かなくなった。
やっちまった。だがこれが正しい行動のはずなんだ。
「芝浦さん!」
紫織が悲鳴まじりにおっさんの名を呼ぶ。
「悪い……ドジっちまった……」
血まみれの芝浦は倒れたまま、一人で立ち上がれないようだった。
今すぐゾンビになるってことはないが、負傷によるダメージは深刻。
急いで手当をしないと死んでしまう。
「クソっ、立って! よいしょ!」
おれたちは戦いながら展望台の内部に入る。
備品倉庫室らしき場所を確保して、ほんの一時しのぎの休憩場所とした。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞。
バンバンバン! バンバンバン!
ア”-! ア”-!
おれたちが立てこもる備品倉庫室のドアをゾンビどもがバンバン
とりあえずの時間かせぎにはなっているが、さてこれからどうしたらいいのだろうか。
「どうしましょう、これから……」
紫織が力なくうなだれ、
これはつまり『一度逃げてあとで再挑戦する』という
ここらの地域でゾンビになるということは、ネクロスの
家族の
だから今どうにかしてやらなければいけない。
芝浦のこのダメージで、無理をしてでも。
もう一つの選択肢としては、すべてをあきらめて
ネクロスは強かった、だから芝浦を置いて逃げちゃおう。などというあまりにもガッカリな選択だ。
どちらにせよ戦闘は避けられない。
戦いながら前に進むか、戦いながら後ろに下がるか。
前に進む場合、おれたちはゾンビにかこまれて最悪全滅してしまう可能性がある。
「……なにをグダグダ言ってやがんだ」
寝ていた芝浦が身を起こし、立ち上がろうとする。
「クッ!」
「無理しないでください!」
苦痛に顔をゆがめる芝浦を、紫織が押しとどめた。
せっかく巻いた包帯が真っ赤に染まっている。
まずいぞ。
医者もいない状況でこの出血量。はやくしないと手遅れになるかもしれない。
だが大怪我をしている本人はまだ敵討ちのことばかり考えていた。
「
今にも
それでも語った芝浦の策というのは、ほぼ自殺行為だった。
「無茶言わないでください」
「
大量出血で服は血まみれ。肉体はもう限界だ。
それでもおっさんは生きた
「俺はもう助からねえ、わかるだろ、俺はもうゾンビになっちまうんだ。そうなる前にケリをつけてえ。今しかねえんだ、今だけなんだ……!」
死にゆく者の最期の願い。
おれはうなずくしかなかった。
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