(3/3)三人目(!?):???さん

 一体これは、何が起こっとるんじゃろうか。

 今、ベランダから窓越しに室内の様子を窺い、絶句しておる。


 ワシは……本物の、……。

 否。


 昨今のニーズに合わせてTS女体化した――だっちゅーの★

(覚えていますか。平成前期の流行を)


 人々の夢を叶える概念存在であるワシ……いや、あーしにかかれば、TSなどお茶の子さいさいの朝飯前。ゆえにこそ可能、完璧すぎる理論武装であろう。


 だが、そんなあーしだが、全知全能というわけではない……じゃん?

 ゆえに、分からぬじゃん。

 なぜ今、このクソ辺鄙なマンションの一室(他人の家)で。



 女装した良くわからん男が二人、緊張感バリバリで睨み合っておるのか――!?



 ハアハア、わ、分からん……全く全然これっぽっちも、わからぬのじゃ……だっちゅーの。

 今から始まろうとしているのは、戦いか? 二人は殺し合う宿命なのか?


 ゼエゼエ……な、なぜ、こんなことに……ワシ、いや、あーしはただサンタクロースの責務として、まっとうに仕事に励んでおっただけじゃのに……。


 こんなマンションの4階くんだりまで来て……なぜこっちまで緊張して、様子を窺わねばならぬのじゃ~~~!?(ひ~ん!)


 と、その時、メガネをかけた家主であろう者が、こちらのベランダへ向けて声を放ってきた!


『ハッ……誰かベランダにいるのか!?』


「はっ! ……にゃ、にゃあ~~~ん♡」


『何だ……ただのTSしてギャル化したサンタのような声をした猫の鳴き声か……』


「ふう……」


 危なかったが、どうやら完璧に騙しきれたようじゃ……いや、だわさ? 違う? ギャルこんなんじゃない? マジ系?


 くっ、しかしこれで、ワ……あーしはパーペキに理解してしまった。

 下手に動けば、気付かれる――それ即ち、。第三者は真っ先に排斥されてしまう対象、思いがけず窮地に立たされているというわけじゃ。


 重ね重ね、どうして……どうして、こんなことになってしまったのじゃ……。

 あーしは、あーしは、ただ……。



 友人同士、悪ふざけしながらも互いを思いやって楽しませようとする、良い子らの気配を感じて……サプライズでプレゼントを届けにきただけじゃのに……。



 今も睨み合い、互いの隙を窺っているのかしておる室内の両者と。

 寒~~~い真冬のベランダで、ぷるぷる震えて体を縮こまらせる、あーし。


 うう、寒い、寒いのじゃ……だれか、あったか~い飲み物をおくれ……。

 熱燗あつかんでキュ~~~ッと一杯、なんぞ……たまらぬのじゃあ……。


 期せずして〝のじゃ系ギャルサンタ〟と化してしまった千載一遇を自覚しながら、ワシことあーしは、引き続き様子を窺いつつ、ぷるぷる震えるのじゃった……。



 ――――――――――――――――――――――――


 これは、一年に一度のクリスマスに起こった、奇跡の遭遇。

 三者三様に勘違いし、 特に戦ったりはしない――三つ巴の大戦(手厚い矛盾)。



 ……ここから先の物語は、残念ながら歴史には記されていない。


・勘違いに気付いて、持ってきていたチキンを、用意していたケーキを食べて、楽しいクリスマスを過ごした?

・ベランダの謎の存在に気づき、部屋に招き入れて、新しい交友関係ができた?

・もう性別とかどうでもいいから、思い切って愛をぶちまけあって付き合っちゃえばいいじゃんね? おっギャルサンタも混ざるか混ざるか~?


 ……それは、想像にお任せする。


 されど、たとえどれほど時代が移り変わろうと。

 このクリスマスを締めくくる言葉は、一つしかないだろう。


 どうか、皆様、良い夜を。

 それでは――



 ★ ~ Merry🎄Christmas ~ ★

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