君のスクランブルエッグが食べたい。

SB亭moya

僕は素直じゃないから


「早く君のスクランブルエッグが食べたいよ」


 本当はこう言いたかった。


「肉料理が好きなんだけれどね」

 

 僕は素直になれないから、いつも思ってることと違う言葉が出る。


 それでも君は卵を割ってボウルに逆さまに落とし、かき混ぜる。


 どうせできるものは、いつものスクランブルエッグだ。


 結婚して十年。まるで味が変わらないのだが、それが君の得意料理なんだろう。


 甘い甘い味の卵料理だ。まるで、子供が好きなお菓子みたい。


 でもそれは僕の本心じゃあないんだよ。


 全く飽きずに何回同じものを食わせれば気がすむんだろうなんて。


 思わず僕は心で悪態をついた。


 なぜって、夫婦っていうのは不思議でずっと一緒にいることでお互いのことが全部分かったような気がする。


 でもそんなものは嘘に決まってる。


 夫婦とはいえ、お互いの味の好みなんて一生理解できないのだ。


 僕はじっとテーブルで、料理ができるのを無表情で待っている。


「とっても、とっても、お腹がすいたよ」


 もう何でもよかった。食べられるものならば。


 君は冷蔵庫から卵を一つ取り出して、割る。


「へへへ。ごめんごめん。もうちょっと待ってね」


 それでも君は、何でもないように笑って見せた。


 その時、せっかくの卵がひっくり返って、床で割れてしまった。


「あ」


 全くついてない。僕はこんなにお腹がすいているのに。



 * * * * *



 さあ! 卵をひっくり返して……


「全くついてない。僕はこんなにお腹がすいているのに」から、 

『一段落づつ下から上へ順に』読んでみてください!!


マンネリ化した夫婦が、可愛い夫婦に早変わりです。








 

 

 

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