第31話 畑に帰還・リードの束の間の平穏編

国規模の大作戦が無事終了し、リードは久々に自分の畑へと帰還した。

「……やっと戻れたか」

杖を肩にかけ、深呼吸するリード。土の匂い、鳥のさえずり、風に揺れる麦の葉――久しぶりの静かな時間が彼を包む。


ミリィも肩越しに小さく羽を広げ、のんびりと空を眺める。

「リードさん、やっとスローライフを満喫できますね」

「……少しだけな」


畑は手入れの跡が少し乱れていたが、リードは軽く魔力を流し、作物に栄養と水分を行き渡らせる。土を耕す手は力強くも穏やかで、長らく戦いや騒動に巻き込まれていた彼の心も、ゆっくりと落ち着いていく。


「……やっぱり、畑は落ち着くな」

ミリィは小さく笑い、リードも目を細める。


しかし、畑の片隅で、微かに魔力のざわめきが感じられた。森や王都での魔力余波がまだ完全に収まったわけではないらしい。リードは杖を軽く握り、微笑を浮かべる。


「……平穏は束の間か。でも、今この時間は大切にしよう」

ミリィは肩越しに同意し、二人はのんびりとした時間を楽しむ。鳥の声、風の音、作物の匂い――日常の小さな幸せが、リードにとって最高の宝物だ。


その日の夕暮れ、畑の上に柔らかい光が広がる。リードはそっと目を閉じ、心の中で願う。

「……できれば、この穏やかな時間が少しでも長く続きますように」


束の間の平穏。しかし、リードの心には確かな安堵と、明日への静かな決意が宿るのだった。



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