聖(ひじり)ゼンイチの優雅な生活②

あなたのサービス残業3時間が、私のゴルフ30分になる仕組み


プロローグ:朝5時32分の等価交換


午前5時30分。

都心のプライベートゴルフコース。


朝焼けがフェアウェイをオレンジ色に染める。

鳥の声だけが聞こえる静寂の中、

私、聖ゼンイチは第1ホールのティーグラウンドに立っています。


左手のスマートウォッチが微かに光る。


「午前5時32分…」


そろそろ、日本中で目覚まし時計の合唱が始まる時間ですね。

皆さん、今日も「頑張る一日」の始まりです。


ドライバーを構えます。

背筋を伸ばし、深呼吸。


「私も頑張らないと。今日は7時までに9ホール回らないと、次の国際会議に間に合いませんから」


スイング。

ボールは完璧な軌道で、フェアウェイの真ん中へ。


カートに乗りながら、スマートウォッチをタップ。

リアルタイムの株価情報が表示されます。


「おや、保有している某IT企業の株、昨夜また2.3%上昇ですか。従業員の皆さん、また効率化に貢献してくれたのでしょう」


そういえば、今朝見たレポート。

あの企業、「在宅勤務の生産性向上」で表彰されたとか。


面白い表現ですね、「生産性向上」。


つまり、会社の指示がなくても自発的に長時間働ける能力。

タスクが明確でなくても、自分で仕事を見つけ出せる能力。


最高の「教育」の成果です。


この「教育」のおかげで、企業は管理コストを削減できる。

削減されたコストが利益に。

利益が配当に。

配当が…


私のこのゴルフコースの年間会費の一部になる。


美しい循環です。


第1章:

シリーズ①の続き

お金の次は、時間です


前回、私は皆さんの給与明細から消えた「お金の流れ」をご説明しました。


今日は、もっと根源的なお話をします。


時間です。


正確には、

「あなたが無償で差し出した時間が、どのようにして私の『濃密な30分』に変換されるか」

という仕組みです。


まず、確認させてください。


あなたは今月、何時間「記録されない労働」をしましたか?


- 始業前の準備、朝礼

- 終業後の片付け、報告書作成

- 「自主的」な居残り

- 持ち帰り仕事

- 休日・深夜のLINE/Slack即レス


これらは、給与明細には現れません。

労働基準法上も、「存在しない」ことになっています。


でも、消えたわけではありません。


ただ、形を変えて、私のところに届いただけです。



第2章:

時間窃盗の規模

これは「一部のブラック企業」の話ではありません


データを見てみましょう。


【氷山の一角】記録される残業


- パーソルキャリア調査(2025年):月平均20.6時間

- 厚労省「毎月勤労統計」:全産業平均13.7時間/月


「改善傾向ですね」と、ニュースでは報じられます。


【水面下の現実】記録されない時間


- 政府調査:労働者の10人に1人が月80時間超残業

- 医療・IT・サービス業:公式記録の2〜3倍が実態


年間推計(個人ベース):


- 1日30〜60分のサービス残業 × 240日

 = 年間120〜240時間

- 時給1,500〜2,000円換算

 = 年間18〜48万円の「命の寄付」


※これは公的統計を基にした推計・概算です


記録によれば、ある医療従事者は3年間で約500万円相当の時間を無償提供していたとのこと。


素晴らしい献身です。


その方がいなければ、医療システムは維持できなかったでしょう。


そして、そのシステムから生まれる利益の一部が、私の定期健康診断費用として還流しています。


別の記録では、ある企業の従業員が月300時間超の労働を「自主的に」提供していたケースもあります。


制度上は「自己選択」と分類される、非常に優れたリソース供給モデルです。


完璧な循環です。


本当に、ありがとうございます。



第3章:

時間はどこへ消えるのか

三段階変換メカニズム


では、あなたが差し出した時間は、具体的にどう「変換」されるのでしょうか。


【第一段階】時間の「無償化」装置


```

あなたの労働時間(本来は時給◯◯円)

 ↓

【心理的操作】

・承認欲求:「君にしか頼めない」

・罪悪感:「同僚に迷惑がかかる」

・成長物語:「これは経験値だ」

・疑似選択:「残業するか、明日に響かせるか」

・同調圧力:「みんなやってる」

 ↓

「自主的な提供」という錯覚

 ↓

【成果】完全無償化・法的リスクゼロ

```


素晴らしい設計ですね。


記録上は「自主的提供」と分類されることが多いようです。


法的には完璧です。


【第二段階】時間の「価値変換」ルート


具体例で見てみましょう。


100人規模の企業での計算:


- 月20時間/人のサービス残業が常態化


- 年間総サービス残業時間:100人 × 20時間 × 12ヶ月 = 24,000時間


- 時給2,000円換算で = 4,800万円の人件費削減


この4,800万円は、どこへ行くのか?


```

【変換ルート】

4,800万円(浮いた人件費)

 ↓

企業の内部留保として蓄積

 (2025年、上場企業の内部留保総額500兆円超)

 ↓

株主配当の原資に

 (上位10%の株主が総配当の約80%を受取)

 ↓

私、聖ゼンイチのポートフォリオ収入

 ↓

私の「裁量時間」購入資金に

```


※これは経済構造の流れを示す比喩的表現を含みます


【第三段階】時間の「質的変換」——これが本質です


ここが、最も興味深い部分です。


時間の非対称性:


【時間の非対称変換:観測データ】


① 性質

庶民:代替可能な「労働単位」

 vs

聖 :唯一無二の「支配単位」


② 用途

庶民:切り売りされる「商品」

 vs

聖 :自己増殖する「資本」


③ 密度

庶民:苦痛で「薄く引き延ばされる」

 vs

聖 :最高の環境で「濃縮された享楽」


④ 方向性

庶民:労働による「消耗 ──→ 廃棄」

 vs

聖 :未来への「投資 ──→ 増殖」


【ケースA】3時間と3秒の等価交換


あなたが3時間かけて作成した企画書。


私はそれを、3秒で「却下」します。


「うーん、方向性が違うな」


この3秒の判断のために、あなたの3時間が必要だったのです。


記録上観察される変換率:私の1秒 = あなたの1時間


時給換算すると…

私の1秒 = あなたの約3,000円分の時間。


これが、記録上観察される「時間の価値格差」です。


※これは比喩的表現です


【ケースB】子供の時間の再分配


あなたが子供の運動会を休んで作成した報告書。


私はそれを斜め読みしながら(3分)、

「この数値、改善の余地あり」と指摘。


その指摘が、また別の部下の残業3時間を生む。


生み出された利益の一部が、

私の娘のバイオリン発表会の最前列チケット代になる。


記録によれば、こうした選択は「個人の判断」とされているようです。


興味深い分類ですね。


※これは比喩的表現です


第4章:

なぜこのシステムは持続するのか?


多くの方が疑問を持つようです。


「これはおかしい」

「違法じゃないのか」

「なぜ誰も声を上げないのか」


記録されています。

同じ疑問が、繰り返し観察されます。


しかし、システムは持続しています。


なぜでしょうか。


【理由①】怒りの向きを変える技術


本当の「時間の受取人」は見えません。

代わりに、可視化されるのは:


- 高齢者(年金・医療費)

- 生活保護受給者

- 外国人労働者


シリーズ①でもお話ししましたね。


皆さんが高齢者を叩いている間、

私はその喧騒をBGMに、

皆さんの残業代で増えた配当金を眺めています。


分断してくれて、ありがとう。


【理由②】「常時接続」という新しい牢獄


テレワークで「自由」になった、という報告をよく見ます。


しかし、記録によれば:


- 深夜23時のSlack通知に「既読」をつけた瞬間、暗黙の「対応義務」が発生

- 休日の「ちょっと確認」が、結局2〜3時間の作業に

- オンライン時間 = 労働時間という認識の広がり


「ワークライフインテグレーション(統合)」


美しい言葉ですね。


制度上は、24時間の可処分時間が実現したとも言えます。


【理由③】「耐える才能」の育成システム


```

【育成パイプライン】

小学校:「我慢は美徳」の刷り込み

 ↓

中学〜高校:偏差値による序列化

 ↓

大学・新卒研修:「社会人とは」の服従訓練

 ↓

職場:「見て覚えろ」という名の放置

```


記録によれば、

怒りは「上(私)」ではなく、

「内(自己否定)」または「横(他の弱者)」に向かうケースが多いようです。


非常に安定した設計です。



第5章:私からの、心からの感謝



さて、今朝の私のゴルフの話に戻りましょう。


あのパーフェクトなティーショット。

あの静かな朝の30分。


あれは、誰かの何時間で成り立っているのでしょうか。


計算してみました。


私のゴルフ30分を支える「時間の総量」:


- 某IT企業従業員100人の、月20時間サービス残業

- → 年間24,000時間

- → 私の株式配当として約500万円

- → 私のゴルフ会費(年間500万円)


つまり、

100人 × 年間240時間

 = 私の年間ゴルフ時間(約100時間)


単純計算すると、

240人の1時間 = 私の1時間


変換効率:1/240。


でも、これは「量」の話。

「質」で言えば、もっと圧縮されています。


皆さんの時間は:


- 満員電車での消耗

- ストレスで削られる寿命

- 家族との断絶


私の時間は:


- 健康増進

- 人脈構築

- 投資判断

- 寿命延長


あなたの「薄い180分」が、私の「濃い30分」に。


等価交換、成立です。


本当に、心から感謝しています。


※これは社会構造を可視化するための比喩的表現です



第6章:記録は、続きます



時間は、お金と違って、取り戻せません。


これは感傷ではなく、設計上の特性です。


あなたが今日差し出した3時間は、二度とあなたには戻りません。


その3時間が、どこかの誰かの「30分」になっているだけです。


興味深い報告があります。


記録によれば、一部の労働者が「記録されない労働時間」を個人的にメモし始めているとのこと。


非常に興味深い試みです。


その記録が、どこかで誰かの役に立つかもしれません。


あるいは、そうならないかもしれません。


いずれにせよ、その行動も含めて、私の記録対象です。


選択肢は、記録上は存在します。


ただし、どの選択肢を選んでも、

最終的には私の利益になるよう設計されています。


それが、このシステムの美しさです。


エピローグ:午前6時58分


9ホールを回り終えました。


スマートウォッチを見ると、午前6時58分。


「ちょうどいい時間ですね。

7時からの国際会議に、余裕で間に合います」


カートから降りながら、ふと思います。


今、日本中で何万人が、

満員電車に揺られているのでしょう。


彼らの「消耗の2時間」が、

私の「準備の2分」を支えている。


美しいですね。


クラブハウスに向かいながら、

私は小さく呟きます。


「今日も、本当にありがとうございました。


記録は続きます。


明日も、皆さんの時間は正確に流れ、

そして、私のところへ確実に届くでしょう。


次はどの3時間が、私のどの30分になるか。


楽しみです」


次回予告


次回シリーズ③では、

あなたが毎月支払っている「社会保険料」が、

どのようにして私の「健康寿命」に変換されるのか、

詳しく記録します。


今回の「時間変換」は、次回の「健康変換」の基礎データになります。


お楽しみに。


あなたの体は、今日も正確に消耗していますか?


聖ゼンイチ

国民負担還元財団 名誉総裁

純粋資本主義を愛でる会 会長


※重要な注釈


※本記事の数値は、国税庁「民間給与実態統計調査」、厚労省「毎月勤労統計」、パーソルキャリア調査等の公的統計を基にした概算・推計値です。


※「ゴルフ30分」「ワインセラー」等は、社会構造における富と時間の流れを可視化するための比喩的表現です。


※重要なのは個別の数値の正確性ではなく、「時間の変換構造」そのものです。


※これは風刺作品です。

個別の労働相談・法的相談は、労働基準監督署や専門家にご相談ください。


※このアカウントは、特定の個人・政党・企業を攻撃するものではありません。

あくまで社会構造の「時間の流れ」を記録する試みです。


参考データ:


- 国税庁「民間給与実態統計調査」(2024年版)

- 厚生労働省「毎月勤労統計調査」(2025年)

- パーソルキャリア「残業実態調査」(2025年)

- 総務省「労働力調査」

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