第5話 接種

「それでは準備ができましたので、ワクチンを接種しますね。測定の結果、ウイルス力価が非常に高くて、1 mLの接種で十分です。材料が良かったですね。注射で気分が悪くてなったことはありますか?」


新婦は頷いた。

「あの注射は…」


「あら、そうですか。しかし安心してください。こちら、筋肉内接種ですから、誰がやっても上手くいきます。採血なんかは腕が出ますからね。下手な人にあたると痛いですよね。私も昔、針を動かされて声を出したことがあって。それでは打ちますよ」


チクリとした痛みが、左腕に少し走った。


「はい、おしまいです。どうでしたか?将来的には貼る注射なんてのも実用化されると思いますよ。これ、本当に開発が進められていましてね。いやぁ、医療も進みますね。」


医師は片付けながら、新婦の方を見ることなく、1人で話続けていた。


「それでは、接種後2時間は安静にしていてください。もっとも、今は動けないですよね。それではまた」


彼は満足げに微笑むと、部屋を出ていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る