第5話
ダンジョン最深部。核(コア)から溢れる燐光が、静止した配下たちを青白く照らしている。 俺のすぐ隣には、形を定めぬまま静かに揺れるリムがいた。召喚枠を使った存在ではない。目覚めた時から俺の中にあり、俺と共にこの地獄へ放り出された、唯一無二の半身だ。
その前方には、三体の配下。 盾として不動の姿勢を保つゴブリン。 闇に溶け込み、死の気配を消したスケルトン。 長い耳をピクつかせ、外界の微細な振動を拾い続けるラビット。
「……四体目だ。来てくれ」
俺が掲げた手の中で、召喚の魔法陣が白熱する。 光の中から現れたのは、銀灰色の毛並みを持つ小さな獣――ベビーウルフだった。 まだ幼く、頼りなげな足取り。だがその瞳には、飢えた獣特有の冷徹な知性が宿っている。
俺は膝をつき、子狼の喉元に優しく触れた。 テイマーとしての直感が、この四体目こそが、バラバラだった仲間を繋ぐ「接合剤」になると告げていた。
「お前に与える役割は**『足』……そして、仲間を『繋ぐ』**ことだ」
俺の声に呼応するように、魔力の糸が狼から他の三体へと伸びていく。 ラビットが察知した情報を、この狼が最速でゴブリンへと伝え、スケルトンがトドメを刺すための隙を作る。単なる「個」の集まりが、この瞬間、一つの「群れ(システム)」へと変貌を遂げた。
召喚枠はあと一つ残っているが、今の俺には「何」が必要なのかまだ見えていない。その最後の一枠を「卵」として保留したまま、準備期間は無情にも終わりを告げた。
【ログ:準備期間を終了。これより『第一回定期集会』へ強制転送します】
無機質なシステムメッセージと共に、視界が歪む。 目を開けた先は、巨大な円形広場だった。 周囲を見渡せば、俺と同じ「同期」のダンジョンマスターたちが100人。しかし、そこにあるのは連帯感ではない。各々の頭上には、残酷なまでに明確な格付け――**「ランク」と「職能(ジョブ)」**が浮かび上がっていた。
【ランク:F(100位/100人)】 【職能:テイマー】
「おい、見ろよ。最下位だぜ。しかも職能が『テイマー』ときた」 「モンスターを操るなんてマスターの基本だろ? わざわざ職能にするなんて、よっぽど本体が非力なんだな」
周囲から投げかけられるのは、同情ですらない。 それは、明日の食糧を品定めするような、純粋なまでの侮蔑だった。 広場の中央、一段高い壇上に、どす黒い霧のような影が現れた。この実験場の主、魔神だ。
「10,000名の駒たちよ。最初の選別(テスト)の時間だ。一年後、ここに立てるのは半数のみと知れ」
魔神の宣告と共に、広場の床が赤く発光する。 それは決闘の合図。この集会においてのみ許される、マスター同士の「略奪」のルールだ。
「……おい、ゴミ溜めの住人。お前、俺のポイントになれよ」
人混みを割り、煌びやかな杖を携えた男が俺の前に立ち塞がった。 男の名はバルカスそして同期である。頭上には**【ランク:D】**の文字。 俺の足元で、リムが警戒するようにその体表を震わせた。
最下位からの逆転劇。その幕は、最悪の形で上がろうとしていた。
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あとがき
こんにはルイです!
この話は面白いと思ってもらえるなら幸いです。
この小説は自己満足のために使っていますのでいつ投稿されるかどうか分かりません。その為、まだ続きを見たい方は応援してくださるとありがたい限りです。
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