第8話 二人の夜明けと伏線
キャンプから少し離れた静かな岬。守は、隣に座る長谷部瑠璃のステータスを確認した。
「時任くん……本当に、良かったの? 誰のリーダーにもならないなんて」
「うん。俺は、俺を信じてくれた人だけが幸せならそれでいい。……それに」
守は瑠璃の長い黒髪にそっと触れた。
「髪、もう大丈夫だよ」
守が指先に微かな光を灯すと、昨夜の爆風で焦げてしまった彼女の髪が、魔法のように艶を取り戻し、以前よりも美しく輝き始めた。
「……! 綺麗……ありがとう、時任くん」
「それから、もう一つ贈り物」
守は彼女のウィンドウに、秘匿していた「特殊ギフト」を直接書き込んだ。
付与項目:【時任守による絶対守護】
効果:時任守が獲得した原本スキルの全恩恵を300%分共有。常時発動。
「えっ……!? 身体が……力が、溢れてくるみたい……」
瑠璃が驚きに目を見開く。彼女のステータスは、今やこの島の誰よりも、そして昨夜の五味よりも遥かに高みに達していた。
「俺だけが3倍強くなっても、君が危ないからね。……これで、君も誰にも負けない」
「守くん……」
瑠璃が頬を赤らめ、守の肩にそっと頭を乗せた。 朝日が水平線から昇り、二人の影を長く砂浜に描き出す。
だが、その平穏を破るように、二人の脳内に無機質なシステム音声が鳴り響いた。
『通知:エリア1【始まりの海辺】の支配個体消滅を確認。エリア2【絶望の樹海】を解放します。生存者に次なる試練を付与。推奨平均レベル:30』
森の奥から、これまでとは比較にならないほど巨大で、不気味な魔力の波動がいくつも立ち上がる。 他の墜落地点からも、強力な「ギフト」を持つ生存者たちが動き出す予感。
「……終わったわけじゃないみたいだ」
「うん。でも、守くんと一緒なら、私……」
守は瑠璃の手を強く握りしめた。 自分だけが知る「3倍」の最強法則。そして、最愛のパートナー。 文明も法律も燃え尽きたこの島で、守の本当の「逆襲」と「冒険」は、まだ始まったばかりだった。
完
修学旅行で墜落した先は、能力至上主義の無人島でした ユニ @uninya
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