第2話

 先生の葬儀を終えた三人は一旦大学に戻った。

「カオスって何だろう」と葵は首をかしげた。先生は何が言いたかったのだろうか。亡くなる直前とはいえ、何か魂胆があったはずだ。

「尚人は、そこに引っ掛かっているのか。先行き不安な状況を指していると思う」

 ジャックは何かを知っているような口ぶりで答えた。

「カオスを排除して世界を導くなんて、私たちにできるのかしら」

 アリスは不安そうな面持ちで自身を抱きしめる。

「先生が我々に託したのだから、やるしかない」と葵は力を込めた。

 話し合った結果、今の混沌とした時代の先に破滅があるのであれば、別の方向を示す混沌が必要だろうという結論に至った。

 教授の遺言どおり、三人はカオスを別の形にするため世界に散った。

 葵は日本に戻ろうと休学届を出して、帰国の準備を始めた。

 世界は、ポールマン教授の後継者として三人に注目した。

 アリスは、世界の経済が破綻すると予言した。程なく世界の株価がかつてないほど大暴落した。その一ヶ月後にアリスは破産した資産家に恨まれて射殺された。

 ジャックは、戦争が起こると予言しその通りになった。局地戦から世界大戦と広がりつつある中、ジャックは戦地で空爆に巻き込まれて命を落とした。

 しばらくして、経済は立て直し、戦争も終結した。

 死してなお残る教授の力に人類は震撼した。

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