第4話 囲われてたかもしれない……?

 学園の食堂での婚約破棄騒動の件で、王宮に呼び出された。


 父である国王、母の王妃、兄の王太子、俺の監視役のオーブレン、婚約者である公爵令嬢のミレーナ、第二王子の俺ことアルベルト、そして何故か隣国の王太子が居た。


 隣国の王太子、婚約破棄騒動を聞きつけ早々にミレーナへ婚約を打診したらしい。


「ミレーナに婚約破棄宣言をしたのは本当か」

 国王である父が厳しい声で問いただす。

「本当です。ミレーナは第二王子の妻などという座では勿体ないほどの能力の持ち主。隣国に渡り、この国と隣国の友好の架け橋となる方が有益でしょう」


 疑わしげな視線が俺に集まる。

 言いたいことはわかる。理由をつけて監視役を押し付け、自由になりたいだけなんじゃないかって疑っているんだろ。俺のこれまでの素行がアレだったから。


「……アルベルト殿下、本音で話された方が皆納得されるかと」


 オーブレンがアドバイスしてきたから、俺は遠慮なく王子の体裁を取り払った。


「貴族子女怖ぇんだよ! 何、第二王子と仲良くなれば兄上に取り次いで貰えて側妃になれるかもって寄って集って、嫌味の応酬、蹴落とし合いって、俺関係ねぇじゃん! あの女、マリアンヌ! あいつ、俺をそそのかして王位簒奪させようとさせてるスパイだよ! 恐ろし過ぎるじゃん。女いらん! 結婚したくねぇ!」


「ぷほっ!」

 皆がポカンとする中、俺の心からの叫びに、隣国の王太子が吹き出した。


「とっとと臣籍降下して、卵料理の研究したいんだ!」

「卵料理?」

「食べ過ぎれば害になるが、毎日一、二個適度なら健康にいいんです。国民が健康なら、生産性が上がって、国力が上がる。兄上! 卵流通させたいから、道の整備はよろしくお願いします。農場へは俺の資産を投資して――」

「待て待て。話が突飛過ぎないか。まず、男爵令嬢がスパイ?」

「はい、父上。男爵家を調べさせればわかるかと」

「今すぐ男爵家を調べさせる」

「突き止めた褒美に、国内の卵流通、生産の検討をお願いします」

「それでいいのか……?」

「はい!」


 何故かオーブレンをちらちらと診ている父に元気よく返事をする。


 オーブレンが一歩前に出た。

「陛下、アルベルト殿下もこうおっしゃっておられますので、よろしいですね?」

「うむ……。もし、アルベルトがミレーナ嬢との婚約破棄をすると言い出したらと前々からの約束だ」


 うん?

 なにか、雲行きが怪しい会話に疑問が頭をもたげた。


「前々から……?」

「アルベルト殿下、参りましょう」

 にっこりと嬉しそうに微笑むオーブレンが怖い。


「行くって、何処に……?」

「臣籍降下されるなら、城をデナければなりません。卵料理を研究するにも、拠点が必要です」

「そうだな……?」

「学園卒業後、我が領地の屋敷を提供いたしますので、早速、下見に参りましょう?」


 オーブレンの家の領地!屋敷って、まさか……小説の俺が幽閉される屋敷じゃねぇか!!


 俺が公爵令嬢の婚約者から逃げ出した場合、そうなるよう前々から決まってた……?


 ニコニコ顔のオーブレンから一歩下がる。

「待て、オーブレン、お前……」

「大丈夫です。ちゃんと卵料理研究ができるように致します。残さず食べるつもりですので」

「なにが大丈夫なんだ!?」

「優しくするので、心配ありませんよ?」

「心配しかない!!」


 もしかして、物語の強制力っけヤツか?

 しかし、マリアンヌを密告したため俺を助け出す者はない。


 前倒しした物語は、公爵令嬢は隣国で幸せなハッピーエンドを向かえ、王命により、ポンコツ第二王子の俺はオーブレンの策略で殺されることもなく、屋敷に幽閉されたのだった。





――了

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【BL】悪役令嬢ものの断罪予定の第二王子に転生して卵の為に物語前倒しにしたけど、これは強制力というやつ…? 椎葉たき @shiibataki

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