第3話 卵料理計画
厨房を首尾よく借りられ、料理をする。こちらに生まれて十六年ぶりの料理だが、意外と覚えていた。
「見たことない料理ですね。パンに卵のソースを挟んでいるのですか」
「お前の分も作ったから、一つやる」
薄切りライ麦パンに、トロトロ卵サラダを挟んだ卵サンド。
カプッとかぶりついたのだが、なんかイメージと違った。
なんていうか、卵サラダが緩すぎたか。
「ニュルッとしてて、美味しくないですね」
正直に感想を言うイケメン、こと、オーブレン。
そうだ。
この国、わりと料理が硬めだった。
このライ麦パンもそうだが、柔らかいものに慣れていない。
硬いパンを主食としている外国人が日本の柔らパンに対し、不味い、食事じゃない、栄養がなさそう、と言うようなもの。
黒はんぺんに慣れている静岡人が白いはんぺんを食べたとき、食感がなくて不味い、チーズが日本に入ってきたときに初めてチーズを食べた祖母が、最初石鹸食べているみたいで不味かった、と言った具合に、柔らかいものを食べ慣れていない。
このまま国の硬めの料理にすっかり慣れてしまっている俺でも、なんか違う、美味しくないと感じてしまった。
しかし。この国の料理でも、料理に掛けるソースはある。
薄焼きパンをカリッと焼いて、卵サラダを乗せてカナッペ風にした。
「こちらの方が食べやすいです。寧ろ、ゆで卵の濃厚なソースが美味しい」
イケメンに褒められ、調子に乗った俺は、ベーコンとじゃがいものキッシュも焼いた。
卵を硬めにすれば、美味しく食べられる。
そのとき、天啓が降りた。
少しずつ柔らか食感に慣れさせれば、ぷるぷるプリンもいつか美味しく食べられるようになるのでは。
せっかくなら、この国に広めていつでも美味しい卵料理が食べられるようにしたい。
その為に、流通と生産体制を整えなければ。
「ポンコツ当て馬噛ませ犬王子なんてしている場合じゃねぇ」
とっとと物語から降り――臣籍降下して、食事改革すると心に決めたのだった。
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