イルダニアの果てから
@zakimaru_no3
第1話 青年の夜明け
1日で最も暗くなる時間、夜明け前。
まだ草木も寝ているころ、青年はブンッと響く振り切る音で草木を夢から起こしていった
青年はこの村の中では一際大きな館に着くと、すぐに庭に置かれている小さな訓練用の人形の前に立ち、地面に置かれた木剣を手に取った。
青年は息を整え、冷たい空気を胸いっぱいに吸い込み、木剣を強く握り直す。
一歩踏み出し、振る。
重心が流れる。
すぐに足を引き、もう一度。
「もう少し下に構えろ」
背後から、落ち着いた声が飛んできた。
びくりと肩を跳ねさせ、振り返る。
「ザック、いつも言っているだろ。大振り癖を治せと、力は時に自分を過信させてしまう。それを補うものこそ知恵だ。知恵なら…」
青年の名はザック。
身寄りのない赤子の時から、この老人に引き取られ、この村で育てられたと伝えられている。
ザックは老人の話を聞かまいと耳を指で塞ぐ。
「あー、またじじいの何度も聞いた話だよ」
この白髪混じりの男はノエラス
いつもと同じ、簡素な外套。髭が特徴で、この館「王立アーセラ研究院」を担っている研究者だ。
「いいか、剣は振るものじゃない。運ぶものだ、忘れるな」
「……ふぅ」
ノエラスはそう言って、ザックの手首を軽く押さえ、角度を変える。
指先の動きは静かで、無駄がない。
「ノエラスさーん!」
子供の甲高い声に2人が振り返る
村の人達が朝日に照らされながら館へと歩いてきていた
「おぉ、皆よくきたなぁ」
子供達がノエラスを囲むように集まる
「見てみてー!昨日覚えたんだー!」
そう言うと1人の少女が手をノエラスの前に伸ばして唱えた
「フレイム!」
するとほんの小さな炎らしきものが皆の前でポッと現れた
子供達はみな、おおーっと歓声を上げている
「すごいじゃないか!もうこの年で魔法を覚えたのかい、…ただ、魔石を使わなければ一人前だな」
ノエラスに言われると少女は恥ずかしそうに袖から石をコロンと出してきた
子供、大人達が魔法に盛り上がってるのを横目に、ザックはまた木剣を地面から拾い上げていた
「なんで混ざらないの?」
木剣を拾って顔を上げた目の前に女性が座っていた
「うわっ!」
驚きのあまり飛び上がるザック
「スズナかよ、驚かすなよ。」
「朝からあたしに会えて嬉しいんでしょ?」
「だーれが、朝からこんなうるさい女に会いたいかよ」
「何をー!」
彼女の名はスズナ。
ザックの幼馴染で、ザックと共にノエラスの元で魔法について勉強している。
そんな2人のやり取りを見て、ため息をつくもう1人の青年がいた。
「ジルバ来てたのか!」
ザックが青年の存在に気付き駆け寄る。
「あぁ、今日は父さんの調子も良いみたいなんだ。ノエラス様のおかげだ」
彼の名はジルバ。
スズナと同様、ザックの幼馴染で共にノエラスの元でアーセラについて学んでいる
「それでは、みなさん今日の分の魔石を支給しますので、こちらへ」
ノエラスがそう言うと、村人達は、みな研究所の裏へと歩いていった。
王立アーセラ研究院では、日々アーセラによる研究が行われている。
研究の中で魔石、つまり魔法があらかじめ込められた石を研究として、よく使われるのだ。研究で使用する中で、端材となる魔石のカケラなどを無償で村人達に分け、村人達は生活に役立てていた。
村人たちが研究所を後にした頃、ザック、スズナ、ジルバの3人が研究所内の一室に集まっていた
部屋の中には、机が3つ、教壇が1つと黒板がある。
3人が机に座りながら談笑していると、ノエラスが遅れて部屋に入ってきた。
「それでは、本日の講義を始める」
イルダニアの果てから @zakimaru_no3
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