第4話 ダンスレッスン



 留学先の、皇国の国営学校は快適だった。

 私は初めて女性の友達ができて、憧れの女学生ライフを満喫した。


 二人の王子は身分を隠し、髪色を茶色に変え、遠い国の双子の伯爵令息と名乗った。

 しかも年齢を偽り、私と同じ学年に入ったので、まずバレないだろうとの事だった。


(まぁ写真も新聞もない世界だし)


 それでも、容姿端麗は変わらないので、女子生徒には人気である。




 いつも3人一緒ではないが、ランチはよく集まって、学園の裏庭にある東屋で取った。


「どこからか、見られている気はするけど、ねっとりするような視線がなくてほっとするよ……」


 ルーファスが、幸せそうなオーラをぽやぽや漂わせていて、こちらもほっとする。

 午後からは選択科目で、私とヒューバードは授業がなかったので、校舎に戻るルーファスを見送った。


「留学して良かったね。ルーファスが落ち着いたわ」

「うん。昨日なんて、コーデリア様とダンスレッスンしていたよ」


 私は思わず両手を口に当てる。


「えーコーデリア様って、皇王陛下のお孫様よね!」


 ちなみにレイモンド皇国の皇王陛下には、后が3人、子が5人いて、すでに孫も4人いるという。

 勿論、皇国の上層部には、ルーファスとヒューバードの本当の身分は知られている。


「皇位継承者はこれからも増えるし、今でさえ腐るほどいるから、一人くらいウチに来てもいいってさ」

「ヒューバード~、言い方~」

「皇孫殿下が、自分で言ったんだよ?」


 それでも不敬だわ、異国の皇家だぞ。

 王子様は構わないのかもしれないけど、私はただの小心者の公爵令嬢だ。

 人気のない場所で良かった。 


「にしても……でも、本当に? 陛下には知らせた?」

「護衛や侍従から何通も行ってるよ。急使が来てないから、こっちに任せられてると思う」


 皇国は落ち着いているし、国民の生活も豊かだ。

 街に出ると、貴族の子女でも普通に歩ける治安の良さに驚く。

 良縁だと思う一方、いつの間に……という寂しい気持ちもある。


「そうかぁー……うん、良かった」


 ヒューバードは、椅子をガタガタ引いてこちらに寄せた。


「相談しなくてごめんね。ルーファスから、自分の気持ちがまだ分からなからって、口留めされてたんだ」


 ヒューバードは本当に、私の気持ちに敏い。


「あいつ『王太子』としてでなく、『自分』が好かれる事に免疫ないだろ? 大分混乱してたから」


 皇国は、婚姻による外交を重要視していない……というかぶっちゃけ、必要としていない。

 ウチの国に嫁げと、皇孫に命じる必要もない。

 お姫様も、『皇国よりも居心地が良い場所はこの大陸にない』、と言われる国から他国に嫁ぐのは、お相手に対する好意がないとできない筈だ。


「そうだね……コーデリア様は本気なんだもの、ルーファスだって一人で考えなきゃね」

「僕にだって相談しなかったんだよ」

「わーそれ凄い!!」


 私は本気で驚いた。

 自分の知る限り、ルーファスがヒューバードに相談しなかった重要事は初めてだ。


「良かったね」


 ルーファスは国王になるのだ。

 成人しているのに、いつまでも弟頼みなのは、まずいだろう。

 私がヒューバードに笑いかけると、ヒューバードはごく自然に私の肩に頭を付けた。


「まぁ、僕にはエリザベスがいるから」

「そうね」


 お互い、兄弟のような幼馴染はもう一人残っている。

 私はフフフと笑った。


「ルーファスの婚約が決まったら、今度はヒューバードね」


 ルーファス程ではないが、大変だろうなーと思ったが、


「僕は決まってるから」


 と返されて、私は『え?』っとなる。


「ヒュ、ヒューバードも、私の知らない相手がいたの!?」


 ショックを受けた表情になったであろう私に、ヒューバードは怪訝そうに口を開いた。


「何言ってるの? 僕はエリザベスと結婚するんだよ」

「え」


 ……え、ええええーーー!

 何を言ってるんだ、この子わぁぁ……






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る