第十二話:旅立ち

起きたばかりなのに、もう目が冴えている。 鼓動が早いのを感じながらベッドから足を下す。まだまだ床は冷たく、確かに今日がきたことを感じる。

今日から始まる私の新しい生活に、胸を躍らせる。部屋を出るときも、ドアノブをいつもより強く握り、勢いよく開ける。

体が軽く感じ、階段も軽やかに駆け下りた。

「おはよう!」


自分でも驚くほど大きな声が出た。

今日は、視界がキラキラしている。なんだか新しい世界に来たみたいだ。

「おはよう。その様子だと、とっても元気ね。よかったわ。」


母の声もいつもより優しく聞こえ、鳥の鳴き声さえもきれいに聞こえる。

気持ち悪いくらい、私はうきうきしているのだ。

「よーし。ご飯食べて、荷物の確認して出発だ!」


またまた大きな声で意気込み、私はご飯と旅の最終確認を済ませた。



「シェシェ!来てる?」

「来てる。準備できた?」


「よし。じゃあ行こうか。」


私とシェシェは、街の出入り口に向かう。朝はあんなに軽かった足が、なんだか重たく感じる。

やっぱり、緊張と寂しさに後ろ髪を引かれる。

でも隣にはシェシェがいてくれる。大丈夫。

「マリー!」


「ネア、と神父様。お母さんも。」


仕事に行ったはずの母と、ネア、それに神父様がいる。

「なんで、見送りはいらないって言ったのに。」


「そう言われたからって、娘の門出を見送らない母親なんていないでしょ。」


「そうそう。親友を見送らないなんて、そんなのあり得ない。」


「せっかく、教え子が外の世界に出るんです。しっかり見届けなくてはね。」


眉間にシワを寄せる、そうしないと今にも涙が流れそうだ。

さっきまで重かった体が軽くなった気がする。もう大丈夫、三人の温かい目線に緊張が緩む。

「ありがとう。みんな。本当に。じゃあ行ってきます!」


「行ってらっしゃい。」


3人に背を向けて、一歩踏み出す。

一歩一歩に力が入る。

「私がいる。」


シェシェが隣で優しく囁いた。

その言葉が、体に染み込む。

空気を深く吸い込み、前を向き、また一歩踏み出した。




【第一章 完】

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