第十一話:旅支度

***その一***


「ただいまー。」


「おかえり。最近楽しそうね。何してるの?」


そう母に尋ねられ、正直なことを話すか少し悩む。母に精霊のことはまだ話していないのだ。

それに、他にも母に話したいことがあった。

「実はね。精霊に会ってるの。」


「え!そうなの??びっくりだわ。まさかマリーが。」


「うん。私もびっくり。ある日突然出会って、それから少しずつ仲良くなってる。明日も会うの。」


「どうりで、最近教会から帰ってくるのが早かったのね。」


「うん。」


私はまた悩む。早く話すべきなのはわかってるけど、自分の覚悟が固まってないのに、話してもいいのか分からなかった。

「どうしたの?何か言いたいことがあるんじゃない?」


「うーん。わかる?」


「わかるわよ、それくらい。最近なんだか悩んでるみたいだったし。」


どうやら私が悩んでいるのは、お見通しのようだ。やっぱり母親に隠し事はできないのかもしれない。というより、私がわかりやすいのかも。

「あのさ、私来月16歳になるでしょ?そろそろ、旅に、出たいなと思って。」


「いいじゃない。前からずっと言ってたものね。」


やはり私の母は優しい。いつも私の味方で、どんなことも肯定してくれる。やっぱり母を置いていくことに、申し訳なさを感じていた。でも母はいつものように、さっぱりとした反応を返してくれた。

私の心には、言葉に出来ない温かい何かがこみ上げる。思わず泣きそうになったが、それは堪えて話を続ける。

「ありがとう。正直詳しい日程も決まってないんだけどね。」


「それなら、早い方がいいわよね。あなたはやりたいこと多いんだから、順番にさっさとやっていかなくちゃ。」


「うん。あとね、精霊士にもなりたいの。」


勢いで言った。


「それもいいわね。じゃあどっちを先にやるの?それとも同時?」


「反応薄いなぁ、もっと何か言ってくれてもいいのに。」


「そうねそうね、精霊士、凄いじゃない。素敵な夢だと思う。マリーならなんでもなれるわ。」


「ありがとう。」


「で、どうするの?どっちを先にやるの?やっぱり旅が先?」


「うん。旅をしながら精霊について学ぼうと思う。この街には精霊のことが書かれた本も少ないし。」


「そうなのね。じゃあやっぱり早い方がいいわよ。誕生日を迎えた後、春の始まりに出発できるようにしましょう。」


「私より気合入ってるね。」


「当然よ。マリーが自分の生きたい人生を見つけたんだもの。全力で応援するわよ。」


「はぁ。本当にありがとう。」


何やかんやで、あっという間に話が進んでしまった。しかも出発の日程まで。何だか母の方がやる気を出していて、ちょっぴり寂しい気持ちにもなる。

でも、おかげでうじうじした気持ちもなくなり、腹を括ることも出来た。


***その二***


「ふう。」


あれこれと、旅支度について話しながらご飯を食べていたら、思ったよりも遅い時間になってしまった。

「明日はゆっくり起きるか。」


明日の早起きは諦めて、私はベッドへ入った。


次の日起きると、母はすでに仕事に出かけていた。

テーブルの上にはパンが置かれていた。とりあえずお湯を沸かして椅子に座る。

今日はパンに何を合わせようか悩んでいるうちに、お湯が沸いたので、紅茶を入れながら、トマトを用意し、パンにはバターを塗った。

「とりあえず、これでいいでしょ。」


私は椅子に座り、遅めの朝食を食べ始める。

今日はシェシェが来るから、旅に出ることを伝えなければならない。

せっかく知り合えたのに、離れてしまうのは寂しい。でも、長年の夢が叶う今を、みすみす逃すわけにはいかない。

それに、旅の話を伝えないといけないのは、シェシェだけではない。神父様や、ネアにも伝えなければならないのだ。

いずれこの町を出て、世界を周り色んなものを見たいとは思っていたが、いざ本当に始めるとなると、ちょっぴり不安な気持ちもよぎる。


そして何より、一緒に生きてきたこの町のみんなと離れてしまうのはとても寂しい。この事を伝える時に泣かずにいられる自信もないけど、泣かない。これからの事だけを考えて、明るく元気にこの町を去るんだ!

「よし!」


みんなに伝える心の準備をして、私はまず教会へ向かった。


***その三***


「こんにちは。」


「こんにちは。今日は時間ぴったりですね。」


神父様に言われて時計を見ると、本当に1時ピッタリだった。

「はは。この間は早く来すぎたので、今回は気を付けました。」


「それはありがとうございます。」


「それでは、今日の勉強を始めましょうか。」



「お疲れ様です。お茶をどうぞ。」


「ありがとうございます。いただきます。」


カップに口をつけ、一息つく。

一呼吸おいてから、私は口を開いた。

「神父様、今日はお話があるんです。」


「何ですか?......いつにもまして真剣な表情ですね。」


そう言って、神父様はカップを机に置くと、穏やかな表情でこちらをしっかりと見てくれた。

「私、旅に出ることにしました。」


「そうですか、ついに。おめでとうございます。」


「はい。ありがとうございます。神父様には小さいときからとってもお世話になって。本当に感謝してます。」


「お礼を言うのはこちらもですよ。長い間、欠かさず、勉強と手伝いをしてくれてありがとうございました。」


「お礼だなんて。手伝いも、魔法を教えてもらってるお礼でやってただけですから。」


「それはわかってます。ですが何より、マリーと楽しい時間を共有できたことに感謝しているのですよ。」


「神父様。」


泣かないって決めたのに、泣きそうになる。

私は涙をぐっとこらえた。

「それに、旅に出るにはちょうど良いタイミングだと思います。」


「え、なんでですか?」


「そろそろマリーに伝えようと思っていたのですが、私がマリーの技術を上げてあげられるのも、限界が近づいてきました。なので、学校へ行くことを提案してみようと思っていたのです。」


「学校。」


「はい。ですがあくまで、マリーがより技術を磨きたければの話です。それに精霊については、私は何もしてあげられませんから。」


「でも、私旅に出たいんです。」


「わかってますよ。つまり、一度外の世界で、他の魔法使いにあってみてほしいのです。」


「他の魔法使い。」


「マリーは、人並みに魔法が出来ます。そしてこれからも伸びる可能性を私は感じています。だからこそ、より高いレベルを教えられる人に出会ってほしいのです。そして、その過程は重要ではありません。マリーが目指したいものを目指すために、大きな世界に出ることを、私は心から嬉しく思います。」


「神父様。私、精霊士になりたいんです。だから、旅に出て、師匠を見つけてきます!絶対!」


「はい。応援していますね。」


私は、カップのお茶を、一気に流し込む。

「じゃあ神父様、他の人にも伝えてくるので、これで失礼します。」


私は、深く頭を下げるとすぐ振り向き、教会を後にする。

あのままじゃ、たぶん、神父様の前で号泣してた。

歩きながら心を整え、私は酒場へと向かった。


***その四***


「はあ。......ふう。」


酒場の裏口に立って呼吸、気持ちを落ち着かせる。

次も泣かないように。気を付けて。

コンコン。ドアをノックする。

「こんにちは。マリーです。ネアはいますか?」


声は震えなかった。落ち着いてる、大丈夫。

中から声がする。

「はいはーい。マリー、ちょっと待ってて。」


ネアの声と同時に、何やら大きなものを動かす音がした。


ガチャ。

ドアが勢いよく開いた。

「ごめんごめん、お待たせ。どうしたの?」


「こっちこそ突然ごめん、約束もしてないから、普段遊ぶ時の時間に来てみたの。話したいことがあるんだけど。まじめな話だから、今日が無理なら日を改めるよ。」


「大丈夫。いつも通り、これで手伝いはおしまい。」


「じゃあ、今から時間ある?」


「もちろん!ほら上がって。先に私の部屋に行ってて、お茶持ってく。」


ネアに促され、私はネアの部屋に向かった。

見慣れたかわいい部屋。この部屋に来られるのもあと数回かな。そう考えながら部屋の中を見渡した。

「お待たせ。たまたまさ、お茶が二種類あったから両方作ってきちゃった。どっちがいい?あと、チョコクッキーもあるよ、これおいしいよね。」


「どんなお茶?香り嗅いでいい?」


「どうぞどうぞ。両方飲んでもいいしね。」


「確かに。でも一応、好きな香りのほうから飲みたいし。」


どちらのお茶にするかという、他愛もない会話に花を咲かせる。このままここにずっといたいと思わせる。でも言わないと。

お茶を選ぶと、私は深呼吸して話し始めた。

「あのね、ネア。今日の本題。私、旅に出ることにしたの。」


「え。......本当に?」


「本当。いきなりでごめん。」


「ううん。大丈夫。びっくりしたけど。というか、理解が追い付いてない。いつ行くの?」


「来年の春ごろ。」


「そっか、すぐじゃないんだね。」



沈黙が続く。

部屋の中から音が消えた。お茶の湯気がゆっくり揺らいでいるのを、こんなに真剣に見つめたのは、初めてかもしれない。心がざわざわする。この静かな時間は、私が壊すべきなのか、ネアが何か言うのを待つべきなのか。

くるくる、くるくる、頭の中でいろんな考えが、駆け巡る。

「寂しくなるね。行かないでって言いたい。」


先に口を開いたのはネアだった。

「私も寂しい。でも行く。ネアに止められても、私は行く。ごめんね。」


喉がぎゅっと閉まるのを感じながら、私は自分の意思を伝えた。口の中が乾いて、手には汗を握ってる。ネアにとっては悲しいことかもしれない。でも黙っては行けない。体が固まって、姿勢を崩せない。誰かに責められることじゃないのはわかってる。でも、姿勢を崩したら、責められそうな、不誠実なような、不安が積もっていくのを感じる。

「頑張って。しっかり頑張ってから、帰ってきてね!」


ネアは大きな声で、私に頑張ってと言った。いつものように明るい声で。

さっきまでの時間が、ウソみたいに。

「うん。しっかり頑張ってくる。たまに休憩するけど。」


「いつでも帰ってきてね。」


「ありがとう。」


「じゃあ、クッキーたべよう。あと他にもお菓子がないか、探してくる。今日はお祝いだね!マリーの門出だよ。」


「いいよ、クッキーだけで。そんなにもらったら悪いよ。」


「いいのいいの。待ってて探してくる。」


そう言って、ネアは勢いよく部屋を出ていった。


たぶん、この話はもう二度としない。寂しくなるから、お互いに。

そう思い、ネアが戻ってくると、私たちはいつものように、なんでもない話を延々と続けた。


***その五***


「日も沈み始めてるから、そろそろ帰るね。」


「暗くなってからじゃ危ないもんね。」


「今日は、本当にありがとう。」


「また来てね。旅に出るまでの間、いっぱい遊ぼうね!」


「もちろん。じゃあね。」


「気をつけて。」


私はいつもより多く手を振って、いつもより多く振り返る。何度振り返っても、ネアはずっと手を振ってくれていた。



家に着くと、突然話しかけられた。

「おかえり。」


「え、た、ただいま。って、シェシェ?」


「うん。明日も来るって言ったじゃん。」


「わかってる。でも、家に入る前に声をかけられてびっくりしたぁ。」


「それはごめん。」


「ううん、大丈夫。私こそ、いつもより遅くなってごめん。踊ろっか。」


「うん!」


相変わらず、踊ることに関しては声色が良くなる。

私達は裏庭に移動した。そういえば、最近なんとなくシェシェの存在を、なんとなく肌で感じる気がする。確かに見えていないのに、そこにいることがはっきりと感じられた。

シェシェの存在を感じられるようになったのに、もうすぐお別れだと思うと寂しくなる。

「じゃあ、始めよ!」


「それじゃあいくよ。せーの。」


いつものように掛け声をかけ、私達は踊り始める。

前よりも風を感じるし、前よりもシェシェを感じる。呼吸や、リズムが合ってきている。

踊っているおかげで、涙は出ない。寂しさも、悲しさも和らぐ。


日が沈みそうになり、私達は踊りを終わらせた。

「それじゃあ、帰るね。また明日ね。」


そう言ってシェシェが帰ろうとするのを、私は急いで止めた。

「ごめんシェシェ。シェシェにとっても大事な話があるの。だから聞いてほしいの。」


「うん。別にいいよ。なに?」


「実は私ね。旅に出ることにしたの。今すぐじゃなくて、来年の春頃なんだけどね。......だから、来年にはお別れになる。」


「そっか。」


「せっかく仲良くなれたと思ったのに、こんなにすぐにお別れになるなんて。ごめんね。」


「一人で行くの。」


「うん。精霊のこととか、世界のこともっと知りたいんだ。」


「一人がいいの?」


「そういうわけではないけど。だからって、一緒に行く人がいないからね。」


「そう。私も一緒に行く。」


「......え?なんて?」


「一緒に行きたい。」


「え、でも、え??なんで?ここにいなくていいの?それに、家族とかさ、いるでしょ?」


「まあ、生みの親はいるけど、別に私も成体だし。何しても大丈夫だよ。」


「そういうことじゃなくて、その、親御さんは心配するでしょ。こんないきなり決めたら。」


「それはない。そもそも何年も会ってないし。」


「それって、どういう。」


「さっきも言ったけど、私は成体で、幼体じゃないから、別に何をしてても問題はないの。多分マリーは、私の親が心配することを心配してるんだと思うけど。精霊って、成熟すると基本個体で存在するの。」


「じゃあ、なんというか、家族で住んだりはないの?」


「別に、してる精霊もいるし、個々で生きている精霊もいる。親は子を愛してるし、嫌ってるわけじゃないけど、個が個であることを他の種族よりは区別してるって感じなの。」


「なるほどね。なんとなく理解できた。で、本当にくるの?いくら家族と住んでないとはいえ、この場所から離れるのは寂しくないの?」


「全然。そもそも生まれ故郷はここじゃないから。」


「え、ここじゃないの?」


「そう。なんとなくいたら、偶然マリーに出会えた。だからそういう意味では、ここは意味のある場所かもしれない。」


「そっか。じゃあ、何度も聞くけど。本当に一緒に来るんだね。私、そんなにしっかりしてないし、寝てるとき寝言いうし、迷惑かけることもたくさんあるよ?本当にいいんだね?」


「いいよ。そんなたかだか10数年しか生きてない人間に憤るほど、狭量じゃないから。」


「う、うん。ありがとう、でいいのか?」


「じゃあ、とりあえず明日も来るから。じゃあね。」


「え、あ、気をつけてね。」


そういうとシェシェは、あっさりと帰ってしまった。なんだかよくわからないまま、シェシェも一緒に旅に出ることになってしまったけど、今は気持ちが追いつかない。

私は、ふわふわとしたまま、とりあえず家の中に入った。


***その六***


長い、長い一日だった。時間はいつもと変わらないのに、ものすごく長い時間を過ごした気分だった。でも、お腹はすいてない。食欲が全くないのだ。ぼーっとしながら椅子に座っていると、母から声を掛けられた。


「大丈夫?心ここにあらずって感じよ。何か嫌なことでもあった?今日、みんなに旅のこと話してきたんでしょ。」


「うん。みんなにはちゃんと伝えた。けど、一個困ったことがあって。」


「困ったことって?何か問題が起きたの?」


母は、料理の手を止めてすぐに向かいに座った。

「そんな大したことじゃないよ。......実はシェシェがね、一緒に来るって言ってるの。ああ、シェシェっていうのは、前に話した風の精霊のこと。来るのはいいんだけど、私精霊のことほとんどわからないし、むしろ精霊のこと知るために旅に出るんだけど。」


「まあ、本人が行くっていうならいいんじゃない。もちろん、あなたが嫌じゃないってことが前提だからね。もし、一人で行きたいなら、しっかり断ることも大事よ。」


「大丈夫。一緒に来てくれるのはむしろ嬉しい。だけど、家族じゃない人と長い時間を過ごしたことないから、それが心配なの。」


「それは、しっかり話し合えばいいのよ。お互いちゃんと言いたいこと言って、ちゃんと向き合えば大丈夫よ。もし、話し合ってうまくいかなかったら、その時どうするか考えればいいのよ。」


「ありがとう。確かに、そうだよね、今ここで悩んでも仕方ないよね。」


「そうそう。とにかく、今日はあちこち行って疲れたでしょ。ご飯すぐ作っちゃうから、食べてさっさと寝ちゃいなさい。」


「うん。」


母に励まされ、私は明日もう一度、シェシェに自分の気持ちを伝えて、しっかり話し合うことを決めた。


***その七***


「よし!」


勢いよく起き上がる。

今日は朝から踊りの練習をしよう。

部屋を出て、勢いよく階段を降りて一階に降りた。

「おはよう。」


「おはようマリー、パン焼いてるわよ、ジャムは何にする。」


「ありがとう。先に顔洗ってくる。」


そう言って、洗面台の前に立つ。

鏡に映る自分の顔を見つめて、話しかける。

「本当に一緒に行くのかの確認。家族以外と一緒に生活できるか不安な気持ち。」


鏡の中の自分に、今日シェシェと話し合うべき内容の確認をする。

「大丈夫?大丈夫。」


自分で自分を励まして、キッチンへ戻った。

テーブルの上には、パンとブルーベリージャム、スープがおいてあった。

「ブルーベリージャム、一番好きでしょ。これ食べて、今日も頑張るのよ。」


「うん。シェシェにしっかり、自分の気持ちを伝えてくる。」


「そうそう。何事も聞いてみないとわからないからね。さっ、冷めないうちに食べなさい。」


母にも励ましてもらいながら、私はパンにジャムをぬった。




母が仕事に向かい、私も早速裏庭に出る。

「では、張り切って!」


大きな掛け声で気合を入れて、ポーズを取り、ゆっくりと上半身を曲げていく。

呼吸を整えて、目を閉じる。自分の身体と、呼吸に集中しながらステップを踏み始めた。


どれくらい時間が経ったのかと思い、空を見上げると、太陽がちょうど真上に来ようとしていた。どうやらだいぶ集中していたみたい。とりあえずお水を飲みに家に入る。

シェシェは来なかった。今までは午後に練習していたからそのせいかもしれない。

不安が募る。

やっぱり一緒に旅に行きたくなくなったのかも。

突然ここからいなくなるって言ったから、興味をなくしたのかも。

また、ぐるぐるといろんなことを考えてしまう。しかも悪い方に。

むしろ悪いことを探しているくらいの勢いで、思考を巡らせてしまう。


「ねえ。いる?」


外から声をかけられた。シェシェだ。

コップを置いて外に飛び出す。

「シェシェ!来てくれた。ありがとう。」


「また来るって言ったじゃん。」


「そうだね、そうだった。シェシェ、私ね話したいことがあるの。シェシェと旅に行けるのはうれしい。でも、家族以外と長い時間を過ごすことに不安があるの。気持ちに余裕がないとき、体調が悪くなったとき、シェシェと喧嘩しちゃったとき。どんな時でも、気を遣えなくなる時は来ると思う。そんな時、シェシェとはしっかり話し合える関係でいたいの。」


気が付くと、私は自分の思いを一気に吐き出してしまっていた。

でも、シェシェは黙って聞いてくれていた。

「大丈夫。わかってる。すぐに、お互い打ち解けるのは難しい。でも、今こうして思いを伝えられるだけの関係は、確かに築けてる。最初のころなんか、私全然しゃべってなかったじゃん。私も、言いたいことは言うし、マリーの気持ちも聞いていきたい。これから二人で、二人の関係性を作っていけばいいんだよ。私は、マリーのこと好き。」


「シェシェ。うう。泣くようなこと言わないでよ。でもとっても嬉しいよ、ちゃんと考えてくれて。こんなにしっかり答えてくれると思わなかった。本当にありがとう、いつかちゃんと姿を見て伝えたいよ。」


「いつか見える、絶対。」


「うん。あと、家族のこと、何度も聞いて悪いけど本当に大丈夫なんだよね?」


「うん。それは本当に大丈夫。......もし会いたいなら、見えるようになったときあってみてもいいよ。」


「え。え!本当に?いいの?」


「うん。見えるようになったらね。」


「頑張る。」


「じゃあ、今日はどうする?やめとく?」


「ううん。踊る。せっかくシェシェが来てくれたんだし。気分もとってもいいの。」


「じゃあ、今日もよろしく。」


「うん!じゃあ、せーの!」



私たちは、自分の気持ちを伝えて、お互い何を思っているのか知ることが出来た。もちろん、まだまだ知らないこともあるし、思いもしないことが起こる可能性もある。だからこそ私は、この先も、しっかりシェシェと向き合おうと、心に決めた。

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