第6話 天使と夏(後編)
イラ、イラ
「たまの休み」
「天気もいいし、しかも天気だ」
「ヒマこいてウラヌさんの所へ行ったらさ」
「海にでも行こうかってね」
「そうそう、ハハハハ」
イラ、イラ、イラ
「ディの料理は美味しいね」
「そうですか」ディは微笑む「でも良かったですわ、お弁当作り過ぎてしまったみたいでどうしようかと思っていましたから」
「いやー、ダイチが羨ましいね。このッ」 ハア・・・
「本当、おいしいよ」
「そうですか。もっと食べてくださいね」
ディが微笑む。
イラ、イラ、イラ、イラ
「しかし、今日という日に海に来るとはね。ダイチもやるねー」
「何がです?」
「何がって、お前知らないの?」
「だー、ダイチらしいよなぁ」
「だからなにがですよ」
「うん、ネットワークでな今日、流星祭をやるって言ってたんだよ」
「流星祭?」
「知らねーのか」
知りませんよ。
「ダイチらしいなぁ」
どーせ、そうでしょうよ!
イラ、イラ、イラ、イラ、イラ
「流星祭、別名スターダストバーティと呼ばれるティーマの夏を彩る一大イベントさ」
ウラヌさんーーーこの人はこのイベントの為に望遠鏡を持ってきたそうだーーーの話だと、流星祭というのはティーマの短い夏の間に不定期にーーー晴天の夜に行なわれる祭典だそうで、決行の日はネットワークで当日に広報される。資源開発され放棄された小惑星を衛星軌道上に引っ張ってきて砕いた物―――キチンと突入時に燃え尽きるように計算され、隕石となる核に様々な仕掛けをして降らせるという。その数、数百個。
オレは見たことがなかったが、メテオシャワーやナイアガラの滝の様なものとか花火みたいに飛び散り花開く物もあるとディは教えてくれた。
「ふーん」
「ロマンチックな祭典なんだぞ」
「ウラヌさん、ダイチにそんな事言っても無駄ですよ」
「ダイチくらいそーいうのに縁遠いヤツもいないか」
そこまで言うか。まったく。
「そんな事はありません」ディは大声で笑う二人に言う。「ダイチさん御自分の感性をキチンともっていらっしゃいます」
「だ、そうだ」
「本当か、ダイチ」
うーん。「わかんない・・・」
「大変だねェ、ディも」
「エッ、何がでしょう?」
「こんなヤツといて楽しい?」
「はい、毎日が幸福です」
ハァ・・・・・・
「御馳走さまでした」
「あら、もうよろしいのですか?まだございますのに」
・・・相変わらずなディ。
彼女は微笑む。何故なんだろう?本当に楽しいのだろうか??
まあ、オレの脳味噌じゃ考えても分かんネーか。
うーん。
イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ
悩んでも仕方ないが、もう昼過ぎだよ。
先輩たちと会ってからズーーーーーーッとこの調子だった。
二人ともディの作ってきたお弁当をパクついて、オレをからかってオモチャにしてと、こればっかりで時間が過ぎていく。
オレはディとデートするために来たのになあ。
流星祭も海も関係ない。とにかくオレはディと二人っきりになりたいんだ!!
イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ、イラ___________________________________________________!
ハァ、もう、バカバカしくなってきたなぁ。
ため息一つ、すっくと立ち上がると、オレは歩きだす。
なにやってんだかなぁ。
ディと二人っきりでいたいッたって、そりゃあ家で二人だろうが、デートしたいッたってなぁ、そん時と同じで結局なにもできないんじゃ、いつもと変わんないよな。
本来なら先輩達を押し退けてでもディをどっかに引っ張って行ってもいい訳なんだが・・・土壇場になって何もできなくなってしまうんだよなぁ。
でもまぁ、元々世渡りが巧いわけでなし、行き当たりばったりの男なわけで、傍から見ればお気楽極楽な楽天家にしか見えないだろうしね。
そんなオレがディと付き合っているんだからーーーしかもそれが崩れもせずに続いているんだから不思議だ。
どんな偶然や神様のお導きがあったにせよ、こんな事が現実に起きていいもんかと思う。
幸せ過ぎて怖い。
ディと比べりゃオレなんて月とスッポン。もしくはブタに真珠、猫に小判、等々。
ふん、自分でも分かり過ぎるくらい分かってるんだよ。
パーカーのポケットからタバコを取り出し、火を付けると思いっきり吸い込む。
気が付くといつの間にか人けのない岩場に来ていた。
「アーッ、やんなるな!」
煙と一緒にため息まで吐き出してしまう。
「私がお嫌いですか?」
エッ?!
振り返るとディがいる。悲しげな顔をして胸の前で手を合わせオレを見つめていた。
やばい!
警告のサイレンが鳴り響く、オレは何をやってるんだ。
「やっぱり私と一緒では・・・」
消え入りそうな声だった。
なぜ、こうなるわけよ。
オレはそんなつもりで立ち上がったわけでも、ここに来たわけでもないんだよ。
「あ、あのさぁ」
何か言わなきゃ、言わなきゃいけないと気だけアセる。
「いっ、いい天気だよ・・・ねェ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「は、はぁ」
ダーーーーーーーーーーッ!!
あぁ、オレは何を言っているんだよ。
こんなつまんねェ事言ってる場合じゃないだろうに!!
「あのさ、ディ」
「はい、なんでしょう」
純真な瞳で見つめられ決意が一瞬グラつく。
しかし、どこかで“いけー!”とか“やれー!”なんて勝手な声がするのも真実だった。
ディの両肩を掴み引き寄せる。
見つめ合う目と目。期待と不安の一瞬がやってくる。
ゴ、ゴッ、クン・・・
「デ、ディ」
頼むから吃るなよぉ。
そして何かがオレのパーカーを引くーーー引くんだが・・・本当に引っ張られてんだよな。
オイオイ、何なんだよ。こんな時にオレのパーカーを引くおジャマ虫は。
「あら」
ディの声に足元を見れば・・・そこにいたのはサキちゃんではないか。
「どうしたの?」
とオレが訊くなりサキちゃんは大粒の涙をこぼし大声で泣き出した。
「パパとママがいなくなっちゃったのー」
あのー、泣きたいのはこっちもなんですけど・・・。
「泣かない、泣かない」
頭を撫でたり、抱きかかえてあげたり、とにかくサキちゃんを落ち着かせようとオレは一生懸命だった。(だってそうしないと離してくれないんだもん)
「ダイチさーん」
近くを捜しに行っていたディが戻ってくる。
「いた?」
「だめです。この辺りにはいないようです」
ハァ・・・
「どーしようか?」
「きっと、キムさんも捜していらっしゃるでしょうねェ・・・」
「・・・パパァ・・・」
「捜すしか、ないよなぁ」
幸うすい・・・
「ねぇ、サキちゃんはどこでパパ達と遊んでたのかな?」
「あっちー」
あっちねェ、サキちゃんの指す方には人がいっぱい。それに結構離れてるぞ、どうやってここまで来たんだ?
「どーしてここにいるのかなぁ?」
「わかんなーい」
♪―、手掛かりにもなりゃしない!
「ディ・・・」
「はい」
「とにかく一度先輩達の所に戻ろう、二人で捜すには広すぎるよ」
「そうですね」
「ねぇ、ねぇ、おニイちゃんとおネエちゃん、けっこんしてるの?」
「へ?」
ディと二人して目を合わせ下を見てまた目を合わせる。
サキちゃんはオレとディの手を握り、あどけない顔を見せオレ達に微笑むのだった。
「ど、どうして?」
「パパとママとおんなじー」
オレとディの手を握り締め無邪気にはしゃぐサキちゃんだった。
「だそうです」
ディは嬉しそうに微笑む。
・・・分からん。
「ダイチー、ディ姉!」
ギク!
目の前にはテーセとエレナ、会いたくもない時にどーしてこうもバッタリ出会ってしまうんだろう。
「あっレー、だれ、その子?」
「ああ、これはー」
「あー、もしかしてダイチの隠し子―?」
ズルッ。「ダーーーーーーーーーーーー!!」
「そんな甲斐性、ダイチにあるわけないかー」
アハハハ、分かってんなら言うなよなー、ったく。
「それにしちゃあ、よくダイチに懐いてるよなぁ」
「うん、本当だー」
エレナの言葉にテーセも頷く。
「ダイチさんは優しい方ですから」
デ、ディ、そんな恥ずかしげに言わないで欲しい・・・
「おめー、まさか!」
「まさか♪」
「・・・あのねェ、もしもし」
「私もサキちゃんのような子供が欲しいです」
あぁ・・・話が混乱していく・・・
「ふーん、所長さんの子供さんだったんだ」
よーやく、まともに話ができるようになった。
「なーんだ、ダイチの子供じゃないんだ」
「あのねェ」
サキちゃんはキョトンとしてオレ達のやり取りを見ていた。
「テーセはキムさんを知っていたわよね」
「うん、ディ姉、覚えてるよ」
「それなら」
「わーった、捜すの手伝うよ。エレナもいいでしょ?」
うーん、あうんの呼吸というやつだった。
「OK、どーせヒマだからね」
頭を掻きエレナはぞんざいに言うと立ち上がる。
「有難う」
ディはもう安心しきっているようだった。
でも、人手が多いのはいいんだけど、ちょっと不安・・・
「どーこ行ってたんだダイチ」
「あれ?その子は」
「まさかダイチの隠し子とかね」
ハァー、先輩達もか・・・
とーぶんこのネタでからかわれそうだな・・・
戻ったとたん先輩とウラヌさんの洗礼だった。
「まあいいか。あんまりディを泣かすなよ」
バチーン!!
その瞬間エレナの平手打ちが飛んできた。
唖然とするオレら。
「エレナ!」
ディが割って入ってくれなければ、殺されていたかもしれない。
それほどエレナの目は殺気立っていた。
「どうしてエレナはそんなに早とちりなの!」
ディがエレナを睨み付ける。
「ごめん・・・」
あれだけ堂々としていたエレナが小さくなっているから不思議だ。
「もういいよディ」
「いいえ!ダイチさんは黙っていてください。エレナにはキチンと言わなければいけないんです」
「はい・・・」
叩かれたのはオレなんだけど・・・何も言えん。
完全に毒気を抜かれてしまった。
しかし、ディは普段が普段なだけに怒ると怖かった・・・
「よーし、一時間経ったら、またここに集合ということにしよう」
よーやくディの剣幕も一息ついて、ウラヌさんが取り仕切る。
「みんなOKかな」
「は~い♪」
テーセの声だけが異様にあたりに響き注目を集める。
「・・・それじゃディ、サキちゃんを頼んだよ」
「はい」
二人に見送られオレ達はビーチに散っていく。
なんとかなるよな。
「ダイチか」
ドキーン!
エレナだ、お逢いしたくない人と鉢合わせだった。
「いたか?」
オレは首を横に振る。
「そうか、こっちもだ」
「そ、それじゃオレあっちを捜すから」
なんか及び腰になるんだよな。
「ダイチ」
「な、何でしょう?」
「さっきは悪かったな」
ぶっきらぼうな謝り方だったが、それがいかにもエレナらしかった。
「ああ、もういいよ」
ディに怒られた後に謝られたし、ディにもさんざんごめんなさいと言われたから、何を言う気も起きなかった。
テーセが言っていた、エレナは以前ロクでもない上司を正義感から殴ってTDF送りになったのだという。
まぁ、悪いヤツじゃないんだよな。(恐いけど)
「いた?」
一時間して戻ってみると、もう皆さん揃ってた。
「だめー」
両手でバッテン印をつくるテーセ。
ガックリ、づがれだー。
足が棒になりそうだった。砂地って走り回ると脚にくるんだよな。
ここ数年まともに運動してないからもうヘトヘト。
「広いからなー」
遥か彼方まで砂浜が続いているもんな。
ハア・・・考えるのも面倒になってきたよ。
しゃーねェなあ、「もう一度かぁ」
立ち上がると今度は別な方へと歩き出す。
ダァ。
「あっダイチ」
「そんじゃ、行ってきま~す・・・一時間後ねェ」
「あっ、戻ってきたよ」
テーセが手を振っている。
足を棒にして戻ってみると、みーんなーーーキムさん一家まで皆さんお揃いだった。
「よかった、みつかったんですね」
「お前が行ってすぐにな」
ハア、「何処にいたんですか?」
「連絡がついたんだよ」
「ヘ?」
先輩の話だと、テーセがもしかしたら所長がネットワークを持っているかもしれないと気付いたんだそうで、まあ所長がもっていなかったにせよ情報を流して問い合わせも出来るからと使ってみたら、流石はテーセ、すぐ連絡がついてしまったというのである。
「あん時分かってたらすぐに教えてくれりゃよかったのにー」
そうすりゃ、ここまで疲れずにすんだのに。
「言おうとしたらダイチ、サッサと行っちゃうんだもん」
テーセの底抜けに明るい返事に、ドッと疲れが押し寄せてくる。
オレって何?
時計を見ればもう四時を過ぎようとしていた・・・夕暮れが近いな。
何しに来たのかなァ・・・
「お疲れさまです」
へたり込み大の字になったオレにディはひんやりとしたジュースを持ってきてくれる。
「大丈夫ですが?」
「なんとか、生きてます・・・」
ディの手が優しくオレの吹き出したアセを拭ってくれる。
それだけでも疲れが吹き飛んでいくような気がするから不思議だ。
「あの、ダイチさん」
「何?」
「キムさんがサキちゃんのことで迷惑を掛けたので私たちを夕食―――ガーデンパーティに招待してくださるそうなのですが、ダイチさんはよろしいですか?」
「ああ」
もういいや、好きにして。
ボーーーーーーーッ
日も暮れて海辺のロッジでのガーデンパーティもたけなわとなる。
酒を飲んだ所長やマーク先輩、ウラヌさんが陽気に喋り、テーセはその周りをサキちゃんやサトシくんと元気にはしゃぎ廻る。
ディはエレナや所長の奥さんと何か話し込んでいた。
オレもほろ酔い気分だった。
考えてみりゃあ。今日はらしくないよなぁ。
無理に二人っきりだとかデートだなんて気にするからギクシャクする訳で、もっと気楽になるようになると思えば、それなりに楽しめるんじゃないかなぁ。今みたいにさ。
「スターダストパーティが始まるよ~♪」
ネットワークを開いていたテーセが高らかに宣言する。
皆、テラスから庭へと出て海の方を思い思いに見つめ待つ。
オレはというと疲れ過ぎていて動く気にもなれなかったのでそのままテラスに腰掛けていた。
「ダイチさんはご覧にならないのですか?」
ディがちかづいてきてオレを覗き込む。
「あ~まぁ、どうしようかな」
「あの、ダイチさん」
「何?」
すぐそこにディの顔、距離を取りたくなる衝動を抑えるのに一苦労。
「私ここよりもよくスターダストが観れる所を知っているんです」
しばしの間があってディは手を差し出した。
「二人で行ってみませんか」
「ああ」
誘われるままにーーー誰も気付かないのをいいことにオレはその手を取り、ソッとその場を抜け出すのだった。
星明りと小さなペンライトの光の中でオレとディは小道を進む。
触れ合った手と手、いつもなら照れたり恥ずかしいと思ったりするのだが今は酒のせいか疲れからか、そのまんま。
この温もりがなぜかホッとするし心地よい。
しばらく行く開けた場所にでる。岬の突端のような所だろうか、そんな場所だった。
「始まりましたよ、ダイチさん」
ディが夜空を指すと、その先で一筋の流れ星がきらめいた。
そして絢爛たるメテオのショーが次々と展開していく。
「うーん、凄いなあ、綺麗だねディ」
アレ?ディのほうを見ると彼女は目を閉じて祈っているような感じだった。
「何してんの?」
「あッ、ええ」恥ずかしげにはにかむディ「願い事を、してました・・・流れ星が消えるまでに願い事を唱えられれば願いがかなうそうですから」
「へー」ロマンチックだな。「それじゃぁ、今日は沢山願い事ができるね」
「フフ、そうですね」
あっ、うけたうけた。
「ダイチさんもやってみてはいかがですか」
「うーん、そうだね」
でも、いざ考えてみると何をお願いしようかな。
前だったらギャンブルの事とか、作家になる、なんてのがすぐにきたけれど・・・今は?
やぱディ、かなぁ。チラリ、ディを見る。
「ディは何をお願いしたの?」
「私は・・・」
ディはジッとオレを見つめる。
「ダイチさん、一つお訊きしてもよろしいでしょうか」
「・・・何?」
「ダイチさんは私のことをどう思われていますか?」
「そりゃー、綺麗で思いやりがあって・・・」
「いえダイチさん、違うんです」
ディはオレの言葉を遮る。
「ダイチさんにとって私は必要なのか、という事なのです」
ヘ?!
突然の問い掛けに頭が吹っ飛びそう。
サキちゃんの一件でうやむやになっていたのをすっかり忘れてた。
「私がいることでダイチさんの御迷惑になっていないでしょうか」
うつむき、消え入りそうな声で言うディ、こんな所をエレナに見られたらまたぶん殴られるだろうな・・・
めーわくかけてんのはオレの方だと思うぞ。絶対。
「聞いてくださいダイチさん、私はあなたと約束しました。そこからダイチさんとの生活も始まりました。その中でダイチさんは私に色々なことを見せてくれて私を励まし支えてくれました」ディは真剣だった。「楽しかった。でもそれで御迷惑を掛けているかもしれない、ダイチさんは優しい方ですから私に遠慮なさっているのではないかって。マークさんやウラヌさんが言ってました“付き合いが悪くなった”と。ダイチさんにもおやりになりたい事が沢山あるのでしょう?それに見ず知らずの方々が私の所によくいらっしゃいます、その時ダイチさんには御迷惑でしょうし、約束という名の元にダイチさんを縛りつけてはいないかと、それに・・・」
「ディ」
「はい?」
「そんな事ないよ」
「でも、私は不安なのです」
「それはオレの方なんだけどな。それにオレはこんな素晴らしい約束だったら絶対嫌じゃないよ」
不安は誰でも一緒なんだよな。テーセが言うとおり、ちゃんとした言葉にしなきゃ伝わらないし行動で示さなきゃ分かりはしないんだよな。
「オレの願いはね、ディ」
ちょっと照れて、辺りを確認してしまう。
「これからもディと一緒にいたいな」
「本当ですか?」
「絶対に」
「御迷惑ではありませんか」
「そんな事ないし遠慮もしてないよ」
「よかった」彼女の瞳がこころなしか潤んでいるような気がする。「私はこれからもダイチさんといてもよろしいのですね」
そう言うなりディはオレに抱きついてきた。
あ、あのー、この場合どーしたらいいんでしょう?
「こんな役立たずな人間だけどさ、よろしくね」
「そんな事ありません自分に自信を持ってください。ダイチさんは優しい方です。今日だってサキちゃんの面倒を一生懸命みていらっしゃいました」グッとオレの両腕を力強く掴み真っ直ぐにディはオレを見つめる。「優しさや一生懸命な所、ダイチさんといてダイチさんの素敵な所を新しく見つけるたびに私はますますダイチさんを好きになります」
もうすぐそこまでディの顔が接近していた。
第二種接近遭遇は、そ、そこまで来ていた。
ウッ
・・・それはもう少しだったんだけど・・・
ロシュの限界にきてお互い不自然な体勢に気付いて慌てて離れる。
ちょっと惜しかった気がする。
「り、流星が綺麗、ですね」
「あっ、ああ」
と、言いつつも実は全然見てなかった。
そしてしばらく上の空でスターダストを観ていたような気がする。
そんな時だった。花びらの様にスターダストがきらめく中ディが口を開く。
「ダイチさんは運命を信じますか?」
「?」
「私は私たちの出会いが運命ではないのかと思いたいのです」
「そんなことが、ねェ」
「確かに出会いは偶然だったのかもしれません。何千億分の一の確率と言えるのかもしれない、でもそこから起きた事はもはや偶然とは思えませんでした」
ディの手がそっと触れてくる。
「あれはきっと二人の軌跡が一つになった運命の一瞬であり、運命の始まりだったのですね」
「そうかもしれない」
頷きながら、心臓が大きく動き出しはちきれそうになる。震えを懸命に抑えている。
いつもなら宙を舞うはずの視線も、離れる事がない。運命の糸が存在するかのようだった。
「ディ」
どれほど見つめ合っていただろう。ふと、ディが目を閉じる。
魔力に吸い込まれるようだった。
オレはディを唇と重ね合わせる。
優しい風が吹き抜けていく。
そして光。
「あーッ!」
下の方からテーセ達の声がした・・・
再び、何十もの流星がまばゆく輝き辺りを照らす。
見られたかな?
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