散りゆく花は儚く美しい

みゅうた

ルイリィが死の間際に見た夢

ファルデアン王国にネクロマンサーが不法侵入した


敵の狙いは女王陛下


騎士達が応戦するが次々と突破されてとうとう城内への侵入を許してしまう


その前に騎士が立ち塞がったが敵の魔術により操られて同志撃ちを始めた


「くそ〜こいつの強さは知ってたつもりだったけどいつもより強くなってないか?」


『ふふふ…気づくのが遅かったようだな…私に操られた者は普段は制御してる能力を全開で戦えるのだ!」


「そんな事したらそいつの身体はズタボロになるんじゃないのか?」


『どうせ捨て駒だ…私は痛くも痒くもないからなククククク!」


「なんて奴だ!誰かを犠牲にして勝利しても虚しいだけだというのに!」


『虚しい?私にそんな感情は無いのだよ!』


「闇の魔法使いであるネクロマンサーだ…とっくに人の心なんて無いんだろ…気を抜くなよ!」


『思っていたよりはやるな…だがいつまで待つかな?』


「随分とお喋りになってきたじゃねぇか…余裕あるのか切羽詰まってるのかどっちだよ」


『先を急ぐのでね…そいつと遊んでいろ!』


そう言い残してネクロマンサーのは城の更に奥に進んで行った


「これ以上先には行かせないで御座るよ!」


ネクロマンサーの前に立ちはだかったのは忍び部隊だった


『忍びだと?今まで心の闇を引き出す魔法を使っていたがコイツらには効かないのか?ならば…』


ネクロマンサーは忍びに魔法をかけた


すると魔法をかけられた忍びの様子が急変した


「うわ〜ば…化け物だぁ!こっちに来るな〜」


どうやら幻術を見せられているようだ


忍びは落ち着いて術をかけられた仲間に当身をして気絶させた


「お前達では相手にならん…下がっていろ!」


そう言って現れたのはバルクレオだった


『お前は他の奴らと違って骨がありそうだな…名を聞こうか?』


「貴様などに名乗る名は無いが冥土の土産に教えてやる…俺の名はバルクレオ・ハーベスト…騎士団の母ことルイリィ・エルゼ・ハーベストの婿で忍び部隊の頭だ!参る!」


名乗りを上げたバルクレオはネクロマンサーに向かって手裏剣を投げつけたり忍術を使って攻撃した

「火炎の術」


『うわっ!あちち!』


「暑いであろう…覚ましてやる…水遁の術」


『ぎゃーっ冷てぇ!』


「そりゃ!」


グサッ


『ギャアーッ!腕がもげる〜痛い痛い痛い!』


ネクロマンサーはあっという間にズタボロの姿になった


「そろそろトドメと行こうか!覚悟しやがれ!」


次の瞬間…ネクロマンサーは笑い出して目の前に来たバルクレオの胸を貫いた


「なっ…そんな馬鹿な…」


ネクロマンサーの腕はバルクレオの身体を貫き手には心臓が握られていた


『油断大敵だよ〜これで貴様も虫の息だな!お前さえ倒せば…』


「俺が居なくてもいくらでも代わりが出来る人材は居るんだ」


『何だと?嘘を言うな!』


「本当さ…」


そう言うと次の瞬間バルクレオはニヤリと笑うとこう叫んだ


「今だルイリィ!やれーっ!!」


『何だと?ぐわっ眩しい!これが狙いだったのか?畜生…ならばお前らだけでも道連れにしてやる!』


辺りは眩い光に包まれて何も見えなくなった


その直後…ルイリィの目の前が真っ暗になるのだった


光が収まった後…その場には血塗れで倒れてるバルクレオとその上に覆い被さるように倒れているルイリィの姿があった


そして二人の側にはネクロマンサーの服だけが残されていた


ルイリィとバルクレオはすぐさま医務室に担ぎ込まれたが既に亡くなっているのが確認された


駆けつけたレルバスとナイーヴはすぐには信じられずただ立ち尽くしていた


しばらくして二人は両親の亡骸を抱えて教会へと運び込んだ



ルイリィが気がつくと見たこともない場所に居た


歩いてみると何だかふわふわして変な感覚だった


しばらく歩いていると何故か見覚えのある景色が現れた


「ここって昔夢で見た景色だわ…」


遠くに大きな虹の橋のようなものを確認するとそちらの方から誰かが近づいて来た


「ルイリィもこっちに来ちゃったみたいだな…」


「バルク?!ここは何処なの?」


「夢とあの世の狭間らしい…さっきリンダルト様が来て教えてくれたよ」


「父上が?じゃあ私達は死んだのか?」


「今は仮死状態ってやつらしい…あの虹の橋を渡ってしまうと死んだ事になるらしい」


「…恐らく私達はもう助からないのだろう…ネクロマンサーが最後に術を放って来た瞬間に意識が無くなったからな…私を道連れにする自爆魔法のようなものだったのだろう」


「俺は心臓を抜かれたからなぁ…人工心臓かなんか無い限りは生き返る事は無いだろうなぁ」


ルイリィとバルクレオは抱き合うとこう口にするのだった


「子供達も立派に成長した…プリシラ様も三人の子供の親となられた…後継者も育っている…私はもうこの世に思い残す事はないわ」


「…俺もだ…騎士団も忍び部隊も立派な後継者が沢山育っている…潮時だろうなぁ」


二人は頷くと手を繋いで虹の橋に向かって歩き出した


それまでの経験が頭の中に一気に思い出されていく


「これが噂に聞いた走馬灯ってやつなのかな?」


「そのようだな…さぁ…リンダルト様達が待ってる…」


「ええ…行きましょう」



二人の死後…墓にはいつも花が手向けられて居た


二人が寄り添う姿の銅像にもお祈りに来る人達がしばらくは絶えなかった


台座には「騎士団の母ルイリィとその夫のバルクレオの功績を讃えて」と刻まれていた


最後まで国の為に戦い抜いた二人は死ぬ時まで一緒だと言う誓いを貫いたのだった


そんな両親を誇りに思うレルバスとナイーヴもこの国の為に死ぬまで戦い抜く事を両親の眠る墓前で誓うのだった



                    Fin

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散りゆく花は儚く美しい みゅうた @tomrina

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