第4話 ツンとする匂い

 その景色が、いつの間にか、また白に変わった。


 光が冷たくなり、窓ガラスに顔をつけると、冷たすぎて長く触っていられない。


 外には、ツンと冷たい白いものが、フワフワと落ちてきて、地面を厚く覆い尽くす。


 この白いものには、ほとんど匂いがない。冷たいだけの、静かな世界だ。


 キミちゃんは、この白いものが降ると、大喜びで、ボクを連れて外に出たがった。


 キミちゃんは、小さな手で白い塊を丸めて、「コロ、雪だるま!」って、ボクに見せてくれた。


 ボクの手足は冷たかったけど、キミちゃんの笑い声は、太陽みたいに暖かくて、ボクの冷たくなった足を温めてくれた。


 ボクは、キミちゃんの作った雪だるまの鼻を、優しくツンツンって突いた。


 ママが「寒いからもう家に入りなさい」って言った。


 でもキミちゃんとボクは、ずっと庭で走り回っていた。だって寒くないんだもん。


 雪の上にできたボクの足跡を笑いながら追いかけるキミちゃん。


 ボクの足跡の隣に、自分の足跡をつけるキミちゃん。


 暗くなるまで外にいて、一緒にママに怒られた。


 今日はお正月。親戚の人がたくさん来たときも、家の中は静かだった。


 みんな、ボクを撫でてくれたけど、目は遠い場所を見ているようだった。


 ボクは、みんなの寂しい匂いを消したくて、尻尾を振って回った。


 キミちゃんが帰ってきたら、この白いもので遊ぼう。


<つづく>

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