第3話 カサカサな匂い

 ある時、光が金色に変わり、窓から見える葉っぱが、茶色や赤になっていった。地面には、ヒラヒラと落ちてきた葉っぱが、絨毯みたいに敷き詰められる。


 カサカサという乾いた、少し甘い匂いが、風に乗って部屋の中まで入ってくる。


 キミちゃんは、この季節が大好きだった。


「コロ、これ見て!世界が燃えているみたいだよ!」って、キミちゃんは、一番きれいな色の葉っぱを拾って、ボクに見せてくれた。


 ボクは、キミちゃんの手のひらの匂いを、くんくんと嗅いだ。


 そして、キミちゃんと二人で公園へ行く。


 ボクが走ると、足の下で葉っぱがザクザク笑うみたいの音を立てた。


 キミちゃんは、ボクが葉っぱを蹴散らすのを見て、大声で笑ってくれた。


 たまに葉っぱを集めて、バァーって空に投げた。


 たくさんの葉っぱが降り注ぐ。キミちゃんはその中を笑いながら転げ回る。


 ボクもその周りを、わんわんって言いながら走りまわる。


 カサカサの匂いも、ザクザクの音も、笑い声も、いっぱい、いっぱい。


 あの笑い声は、このカサカサの匂いに、いつも混ざっている。


 キミちゃんが帰ってきたら、この色が変わった地面を、また一緒に走り回ろう。


<つづく>

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