緑に沈む

沈むのは楽だ。

何も考えなくてもいい。

でも、水に沈むのは苦しい。


だから私は、緑に沈む。

草原に寝転がり、気持ちを沈めていく。

そうして唯一残り、露わになった心のみで夜風に当たるのが気持ちいい。


さぁ、今日は何があったかな。

友達にいじられて、数発殴られたっけ?

それと弁当をひっくり返されたな。

教科書を隠されて、恥をかかされたのもあった。



水に沈むなら、こんなことを考えている途中に溺れて死んでしまうだろう。

でも緑は優しい。こんな息苦しい私に対して、呼吸をしやすくしてくれる。

そうして夜になっていく。

私がまた呼吸できるようになるまで寝転がっていても、緑は文句を言わない。

深呼吸をする。落ち着いた。


そうして数時間沈みきったのちに、家に帰る。

親はもう私を無視している。

いうことなんてずっと聞いてないから仕方ないよね。

そうして布団に沈むけど、やっぱり息苦しい。

羽が私の口を塞ぐ。




またある日、私はいつも通り緑に沈んだ。

今日起きたことを思い返す。

ストーブに使う石炭を投げられたっけ。

それと汚れた雪を食べさせられた?

どんどん心が沈んでいく。


最近、心を引き上げるのがつらい。

どんどん深く潜ってしまっているだろうか?


ついに緑は凍ってしまった。


緑だって、優しくはなかった。

無関心なだけだったんだ。

そう気づいても、動く手足がないんだから仕方ない。

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