橙に火照る
幸せの色ってなんだろう。
真っ先に思い浮かんだのは紫色。
画家になった君が持って来てくれたスプレーアート。
鮮烈な紫色が、私の心を奪うようだったよ。
いやいや、緑色かな?
君と、四葉のクローバーを見つけた時の思い出。
あの時は本当に楽しかったなぁ。
それか、黄色も良いかもしれない。
黄色い君の肌、君が生まれた時に出した黄色い声。
あれも忘れることのできない思い出だ。
いや、もしかしたら、赤色かもしれないな。
あの人に告白した時の空の色。
あの時から、私の幸せは何倍にも大きくなったのだから。
青色の可能性も捨てきれないな。
昔の友達と野を駆けまわり、サッカーをしていたのは何にも代えがたい。
私の青色の春は、青色だったから。
でも…私が一番幸せな色だと思うのは。
橙色だろう。
どんな時も、私の実家にある立派な暖炉の火は、私を幸せにしてくれた。
この暖炉は、いつも私を迎え入れてくれた。
暖炉が笑っているように見えた日さえあった気がする。
暖炉の火を見ると、何故か落ち着いた。
悲しい気分も、嬉しい気分も、燃やしてしまうように。
ただ、心地よかった。
だから私は小さい時から、夜泣きを起こした時はこの暖炉の前に連れていかれていた。
暖炉の火を見ると、私はすぐに冷静さを取り戻すから。
ある意味、誰よりも付き合いの長い親友であった。
だからかな。
わたしは昔から、大切なものの一部を親友にあげる事にしていた。
古くなったサッカーボールに、ラブレターを書いたインク、君のへその緒、珍しい花、余った塗料。
そんなものを、いつもあげていた。
親友が、喜んでくれると思ったから。
だからこそ、橙色に包まれているこの瞬間が、何より名残惜しくて心地よい。
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